TPP大筋合意の立役者、
またはマイケル・フロマンの前でムーンウォークを踊った男として知られる
甘利明・経済再生担当大臣に
金銭疑惑が浮上しました。
千葉県の建設業者が
甘利大臣や秘書たちに口利きを依頼、
見返りに現金を供与したのだそうです。
この事態に
政府・与党の間では危機感が広がり、
逆に野党は盛り上がっているとか。
以下の記事をどうぞ。
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)関連法案の審議は
今国会最大の山場。
甘利氏はその担当相を務める
安倍政権の看板大臣だけに、
進退問題に発展するような事態となれば、政権への打撃は大きい。
官邸関係者は
「記事(注:金銭疑惑を報じた週刊誌記事を指す)通りだとしたら深刻だ」と語った。
そのうえで「委員会審議への影響は出てくるだろう」と述べ、
国会審議への影響は避けられないとの認識を示した。
(中略)
自民党中堅は
「甘利氏は政権の屋台骨だからきつい。
これまでのスキャンダルとは訳が違う」と強調。
同党参院幹部は
「あの人がTPP責任者で大丈夫かという声が上がるだろう」
と参院選への影響を危惧した。
(中略)
一方、国会の序盤戦で
安倍政権を攻めあぐねてきた野党側は色めき立っている。
民主党の枝野幸男幹事長は20日の記者会見で
「相当厳しく問いたださないといけない」と強調。
共産党の穀田恵二国対委員長も会見で
「真相について解明が求められている。内閣の長の責任もはっきりさせる必要がある」
と語り、首相の任命責任も追及する構えを見せた。
ある民主党幹部は「これで潮目が変わってきた」と語った。
金銭疑惑はむろん、褒められた話ではありません。
ついでに私はTPPの批准には反対ですから
批准に反対する風が吹くのは良いことだと思っています。
だとしても
最大野党の幹部が
「これで潮目が変わってきた」と喜んだというのは
事実とすれば、いささか情けないものがある。
本来、野党が追及すべき問題はTPPそのものです。
それが国民生活や
日本の国益にたいして
いかなる(悪)影響をもたらすか。
この問題の巨大さに比べれば
建設業者からの口利き疑惑など
スキャンダルではあるにしても
まったくもって小さなことと言わねばなりません。
しかもご紹介した記事にもあるとおり、
野党は今まで、国会論戦では政権を攻めあぐねてきた。
つまりTPPそのものをめぐる議論では
与党を突き崩せずにいたのです。
新自由主義的なグローバリズムは国民を本当に豊かにするのか?
さらなる格差の拡大を招いたうえ、
多国籍企業による主権の侵食を引き起こすだけではないのか?
食料・医療・インフラ整備など
多くの分野において国益を毀損する恐れはないのか?
そもそも、
現在公表されている暫定訳は信頼に価するのか?
ツッコミどころはいくらでもあると思うのですが。
真に巨大な問題をめぐっては
政府・与党を効果的に追及できず、
金銭疑惑という二次的かつ矮小な問題に頼って
ようやく攻勢に立てる!! と色めき立つ。
「ジリ貧の現実主義 VS 形骸化した観念論」でも書きましたが
これは万年野党の発想そのものと言わねばなりません。
自分たちで積極的に得点することを忘れて
相手の失点をあげつらうことしかしない。
これでは変わってきたという潮目も
すぐまた元に戻ることでしょう。
少なくとも、甘利大臣はフロマンの前でムーンウォークを踊ったのです。
そういう人物を追及するのであれば
野党も野党で、
TPPの独自訳を用意するなど
ちゃんと踊れるようにならなければ。
「構造的市場参入障壁(撤廃)折衝」を
「日米構造協議」と麗しくデタラメに訳したのがわが政府です。
TPPの暫定訳にだって
どんなゴマカシ訳がひそんでいるか分かったものではありません。
そういう本質的な点をちゃんと突いたうえで
金銭疑惑も叩くというならともかく、
本質的な点を突く能力がないせいで
金銭疑惑追及だけに執着するようなら
与党にいかなる問題があろうと
野党が支持される日は来ないでありましょう。
ではでは♬(^_^)♬
3 comments
博史 says:
1月 22, 2016
結局野党も、表面上与党と対立しているようでありながらグローバリズムに賛同している
ことの証左でしょう。元々TPP問題が浮上してきた契機は、2010年秋の臨時国会で、
菅元首相が所信表明演説でTPPに触れたことが発端でしたから、民主党も自らが種を
撒いたことで与党を追及できない というのが本音ではありませんかねえ。
ところで、TPPに賛成している(少なくとも、表立っては反対していない)国民は、TPP
の進め方について異様さを感じないのでしょうかね。
2010年秋:菅元首相がTPPに触れる。それまではTPPのTの字すら出てこなかったのに、
多くのマスメディアは「開国か鎖国か」「TPP参加は待ったなし」の論調
2012年:自民党は衆議院選に向けた政策集で6条件が満たされない限りTPP交渉参加に反対と表明
2013年:安倍総理が内閣の権限として交渉参加だけはさせてくれ という。当初自民党は揺れていたが、
党で決議を改めて行うとともに、交渉を続けるための条件も国会で決議した
2014年:甘利大臣が「タリフラインから微動だにしないというのでは交渉にならない」と開き直り、
決議を無視して譲歩。条件が守られなければ交渉から離脱するという決議はどこ行った?
以上の経緯を振り返るだけでも、TPPは碌なものではない と見抜かなければならないのに、その
感性が多くの国民に備わっていないのでしょうね。
たとえTPP推進論者が言うように、TPPが本当に日本へ利益をもたらすために必要なのだとしても、
目的が手段を正当化することはありません。正しいと(自らが信じる)政策は、真っ当な手段で達成
しなければならないのです。
Guy Fawkes says:
1月 22, 2016
野党の先生方は「政局的に」与党を攻撃する口実が欲しいのであって、
「政策的に」TPPを再検証するつもりなぞ毛頭ないのですね。
菅・野田両首相から安倍首相までの流れを見れば、それは否が応でも理解できます。
この辺りは三橋貴明先生のご専門ですが、中国の経済不安が今年上半期中に爆発しても
「ショック・ドクトリン」の如く改革が推進される様でなりません。
(更には消費増税も…)
博史 says:
1月 23, 2016
「本来、野党が追及すべき問題はTPPそのものです。それが国民生活や
日本の国益にたいしていかなる(悪)影響をもたらすか。」
には完全に同意します。
建設業者が口利き依頼し、見返りに甘利大臣や秘書が現金を受け取った疑惑ではなく、
フロマンがTPPで口利き依頼し、甘利大臣がなんの見返りも得なかった疑惑です