日本と韓国の外相会談によって
いわゆる慰安婦問題を
最終的かつ不可逆的に解決することが合意されました。
岸田文雄外相の記者発表から抜粋しましょう。
慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、
多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、
かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。
日本政府は、これまでも本問題に真摯(しんし)に取り組んできたところ、
その経験に立って、今般、日本政府の予算により、
全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。
日本政府は上記を表明するとともに、上記の措置を着実に実施するとの前提で、
今回の発表により、
この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、
今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
ちなみに外相、
「今回の件で慰安婦問題は終止符を打った」
とも強調しているとか。
これにたいしては、
どうせ韓国はまた蒸し返してくるに決まっている!
という見解が(当然)ありうると思いますが
私が引っかかっている点はちょっと違います。
日本政府がこの内容で
慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決したことを
本当に確認したとするならば、
軍の関与があったという認識も
最終的かつ不可逆的なものとなるわけですな?
日本政府は、韓国政府と共に、
今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
と明言した以上、
この認識を国際的に否定することはできなくなります。
ついでに
日本政府は責任を痛感している。
とも明言した以上、
日本政府に責任があることも
最終的かつ不可逆的なものになるのでしょう。
例によって今後、
この認識を国際的に否定することはできなくなります。
そして韓国の民間団体が
国連など国際社会において、
慰安婦問題について日本(政府)を非難・批判する自由は残っている(としか解釈できません)。
これってもしや
慰安婦問題に関する日本の立場を最終的かつ不可逆的に不利にする合意
ということですか?
何と言うか、
じつに AWESOME と申せましょう。
・・・ちなみに岸田外相の発言で、私が気に入っているのはこの箇所。
いわく。
(新しく設立される財団は)日韓で協力をして事業を行うもので、
賠償ではありません。
全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うものです。
これにたいして、
具体的にはどういう事業を行うのか?
という質問が出る。
外相の返事こちら。
具体的には全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復に資する心の傷の癒やしのための措置。
(中略)
また、適切なその他の措置を考えているが、
事業は今後、両国政府間で合意された内容の範囲で実施する。
かのフランツ・カフカをもってしても
ここまで不条理な答えは思いつけなかったのではないでしょうか。
ではでは♬(^_^)♬
11 comments
nobusan says:
12月 29, 2015
安倍首相の記者会見でこの件を発表した際、2度ほど言葉をつまらせている場面がありました。
「この問題を次の世代に決して引きづらしてはならない」と発言する前と、「最終的、不可逆的・・・」と発言した時です。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20151228-00000057-nnn-pol
私が慮るに、安倍首相は「やった、俺がこんな歴史的な成果を上げたんだ」ということで感激したからでは無いでしょうか。まさに今レジェンドを作っているんだ、という高揚感が安倍首相を動かしたいる様に見えました。
確かにレジェンドは作りましたが、それが国賊としての物になってしまう事を危惧します。結果がでるのはこれから何年もしてからです、そしてどうゆう結果にするか、という決定権は韓国が持ってしまったことになるので、日本は非常に弱い立場に立ってしまった事だけは事実です。これで日韓が新しい時代を迎えられる、などとナイーブに信じることはとてもできないでしょう。保守のスター?と見られている安倍首相が、唐突に妥協したことにより問題が複雑になったとみるべきだと思います。
カインズ says:
12月 29, 2015
これに関しては、「いわゆる保守星人」から様々な負け惜しみが聞かれることでしょうね。
「君側の奸がいる!」
「政治とは難しいもの、安倍総理の本心は違うのだ。」
「これでもマシな方なのだ。安倍政権以外なら、もっと酷いことになっていた!」
軍艦島の件といい、経済問題だけではなく歴史問題に関しても安倍政権は大迷走していますね。目立った実績の無い政権が、参院選へ向けて「最終的かつ不可逆的な解決」という字面の格好良さに惹かれて先走ったようにしか思えません。
SATOKENJI says:
12月 29, 2015
「人は成果を挙げることもできる。
人は言い訳を並べることもできる。
だが、言い訳を並べつつ成果を挙げることはできない」
アメリカの格言より。
ベッラ says:
1月 2, 2016
この名コメント、転載・拡散させてください。
SATOKENJI says:
1月 2, 2016
承諾します。
転載先のURLをお知らせいただければ幸いです。
ベッラ says:
1月 2, 2016
http://blog.goo.ne.jp/bellavoce3594/e/af0c55f924ea2c102ffa26bfa760baf1です。カインズさまのコメントも転載させて頂きます。
佐藤先生のサイトはリンクを貼らせて頂きました。「カフカ」のところは取り出して転載して加えています。ユーモアに溢れながら鋭いご指摘、痛快です。
ベッラ says:
1月 2, 2016
上記のリンク、続けて文を書いたのでそれとつながり申し訳ありません。
改めて貼ります。
http://blog.goo.ne.jp/bellavoce3594/e/af0c55f924ea2c102ffa26bfa760baf1
フルート says:
12月 29, 2015
『「具体的」で「賠償」ではない「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復に資する心の傷の癒しのための措置」』という岸田外相の文章を素直に読んだら..多分安倍首相も今後いつかは誕生する事になる次の日本の首相も、訪韓する度、在韓日本大使館からは移動した(移動もしないかも知れませんが..)慰安婦像などに対してさえ、当時日本軍がやってはいなかった事までも含んだ謝罪をする事の必要性(具体的にはそれはとても深いお辞儀か首相によっては土下座という形になるのではないかなと思うのですが..)が作られてしまったとしか思えません。。
河野洋平元官房長官は、多分<最初の人>になりたくて、河野談話を出したんじゃないかなと思います。<ある事ない事ひっくるめた全部を自分の裁量によって謝罪させる事のできる存在としてある今の自分が、その全部に最初に手を付ける事で、ある事ない事ひっくるめた全部が、全て自分の手から良いものに生まれ変わったものとして始まって行くイメージ>(?)みたいなものに衝き動かされてしまう身体だったり、そういう自分やそういう自分の見え方から見える他者の使い方に問題を感じ取るべきだったんじゃないかなという感じが私にはあります..じゃあ安倍首相はどうなんだろうと考えてみたら..安倍内閣は、『最終的かつ不可逆的な解決』を目指しているのですから、安倍首相は、<最後の人>になりたがっている(・・しかも河野談話時よりもひどく日本の歴史を確定してしまう事によって未来まで占有しようとしている・・)、..自分の後任に自分が作った職責以上の職責が生まれる事を認められない為に・・。
でもよく考えてみたら、<最初の人>になりたがる人も<最後の人>になりたがる人も、歴史の連続性を大事にする事・歴史の連続性に無謀な変更や確定を加えてしまう事を恐れる事、ができない点で一致していますし、そもそも本当に保守的な人なら、自分の後任や自分の子孫が、自分も含んだ現在と繋がっている過去へいつでも遡る事を拒んだりはしない筈じゃないかと思います。(TPP交渉も同じ様な失敗の展開というか格好だった様に私には思えます・・)そう考えてみたら、そもそも不可逆的で最終的な存在になりたがる傾向を持っている人を保守的な人だと見る事自体が変なんだと思いました。。
tamaleah says:
12月 30, 2015
今回の決着を主要政党は軒並み「評価する」としており、そんな中、日本のこころを大切にする党が「大いなる失望を表明する」とした。
国民の方はどうかと見ると「失望した」側が多いように見える。
「評価」と「失望」、この2つの見解も最終的かつ不可逆的だとすると、先の談話で謝罪と反省を区別した安倍総理が、今回は「おわびと反省」として2つを同列に置いたのは予言的であるかも知れない。
慰安婦問題=謝罪・反省(ついでに賠償)というワンパターンと違う最終決着、政府としては今回で決着した以上、後は両国民にこの最終決着はゆだねられる。
そう言えば、先のポール星人は「しかし、我々が敗北したのは、セブン、君に対してではない。地球人の忍耐だ、人間の持つ使命感だ。そのことをよく知っておくがいい」とも言っていましたねぇ。
むーどん says:
12月 31, 2015
一昨日、不意にラジオから聴こえてきた来ました、このニュース!
ここはフランスですが、出勤前のサラリーパーソンとか主婦とか学生とか、聴いてるわけです、殆ど韓国人でも日本人でもない人たちが。
彼らに興味ある話題とも思えませんが、日本ようやく韓国と和解にこぎつけた、というニュアンスでした。
そう、まさに、
>この認識を国際的に否定することはできなくなります
デス! アカンやろ。。。
無関心層の耳の端に、あるいは記憶の片隅に、なーんとなく日本の卑劣さが印象として残ってしまう仕掛けに、朝っぱらから脱力。
ベッラ says:
1月 2, 2016
明けましておめでとうございます。
昨年末はあまりのことに驚き、悲嘆にくれていました。
佐藤先生のこの文を拝読し私のブログにもリンクでご紹介させて頂きました。
ネットでは「安倍ちゃんなら何でも許す」「安倍ちゃんだったら何でも正義」のような「信者」が増えています。大変危険と心配しています。
本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。