9月23日の『激論! サンデーCROSS』でも述べましたが

安倍内閣の主要な問題(の一つ)は

ナショナリズムとグローバリズムの間で適切なバランスを取れていない

もっと言えば、

ナショナリストのような雰囲気を漂わせているくせ

いざとなると、きっちりグローバリズムに流される

ことにあります。

 

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なにせ「瑞穂の国の資本主義」とか言っておきながら

しっかり種子法を廃止したり、

外国人労働者をどんどん迎え入れようとしながら

自分たちが移民だと認めていないのだから、これは移民ではない

という姿勢を取ってしまう政権ですからね。

 

しかし、このように腰の据わっていない態度を取っていると

だいたいロクなことがない。

 

プーチンの「無条件平和条約締結」発言を許してしまった

東方経済フォーラムでの一件は、

その見本のような例でしょう。

 

日ロ間には領土問題があるわけだから

ナショナリズムを強調したスピーチをしなければならないのに

グローバリズム丸出しで一席ぶつから

サカナにされてしまうわけであります。

 

お姉さまも、総理の姿勢に不満のようです。

カバーアップ2

 

しかるに総理、

東方経済フォーラムでのスピーチ(9/12)から二週間もたたずに

またまたグローバリズム丸出しの演説をぶちあげました。

 

9月25日、国連総会で行った一般討論演説には

こんなくだりが出てくるのです。

 

今からの3年、私は、自由貿易体制の強化に向け、努力を惜しみません。

北東アジアから戦後構造を取り除くために、労を厭(いと)いません。

 

思いますに、日本国民は、自国の指導者に対し、

自由貿易の旗手として立つことを切望しておりました。

なぜなら日本自身、戦後、自由で開放された経済体制の申し子として、

貿易の利益に浴し、目覚ましく成長した国だったからです。

 

私は、時に国内の激しい議論を乗り越えて、自由貿易の旗を振りました。

TPP(環太平洋パートナーシップ)11が成り、

日本が国会でいち早くこれを承認できたことは、私にとって無上の喜びです。

また世界史に特筆される規模と範囲の、日EU・EPA(経済連携協定)も成立させました。

 

とはいえ、満足してなどいられません。私は自らにドライブをかけ、更に遠方を目指します。

WTO(世界貿易機関)へのコミットメントはもちろん、

東アジアに巨大な自由貿易圏を生む

RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉に、私は全力を注ぎます。

 

そして何よりも、米国との新貿易協議、いわゆるFFRを重んじます。

演説全文はこちら。

 

失礼ながら、

上記の箇所はツッコミどころ満載と言っても過言ではない。

「背後」を「せご」と読むなど、

これに比べれば、ご愛敬の部類に属します。

 

というのも・・・

 

1)北東アジアから戦後構造が取り除かれることは、朝鮮半島の統一が達成されることを意味する。

ところが統一朝鮮は、反日的になる恐れが強いのは当然として、

下手をすれば核を保有している可能性すらある。

 

すなわちこの地域から戦後構造を取り除くことは、わが国の権益にとって間違いなくマイナス。

なんと総理は、

自国の権益を損なうための労をいとわないと発言しているのです!!

 

なんかもう、ここで話を終わりにしてもいいくらいだな、うん。

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2)戦後日本の高度成長は、ブレトン・ウッズ体制のもとでなされたが

これは管理された自由貿易」と形容されるほど、政府による制約を許容するものだった。

したがって日本が同体制の申し子だとすれば、

わが国は今や「政府による貿易管理の旗手」とならねばならないのである!!

 

「ハズしているかどうかじゃない、どこまでハズしているかなんだ」(※)個人の感想です。

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3)日本がめざましく成長した時期(1960年〜1990年)の貿易依存率は

10%〜15%で推移している。

とくに高度成長が続いた1960年代など、

しばしば10%を割り込んでいるのだ!!

で、どこの国が「貿易の利益に浴し、目覚ましく成長した」って?

詳細はこちらを。

 

「さすがにこれは、アウフヘーベンもインテグレイトもできんわ!」(※)個人の感想です。

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4)TPPに関し、自民党が政権奪還の前後で態度を変えたのを不問としても

RCEPの参加国には中国が含まれている。

よってRCEP交渉に全力を注ぐということは

中国包囲網をつくらないことに全力を注ぐと言うにひとしい。

 

(※)記事の内容と直接の関係はありません。

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5)この国連総会演説が、アメリカとの通商協議と並行してなされたことを考えれば

そして何よりも、米国との新貿易協議、いわゆるFFRを重んじます。

というのは、アメリカの要求を受け入れるという意味にしか取れない。

 

私は『激論! サンデーCROSS』で

グローバリズムに徹することが、そのまま自国の権益を満たすことにつながると構えるのは

「政治的に正しいおとぎ話」の類にすぎない

と断言しておきましたが(※)、

総理はくだんのおとぎ話を、みごとに展開されたのであります。

(※)萩生田幹事長代行も、片山政調会長代理も、これに反論しませんでした。

 

なるほど、達増拓也・岩手県知事が

『平和主義は貧困への道』に関連してツイートされたように

世の中のありさまを決めるのは

経済的構造というよりも

しばしば人々の思い込み。

元のツイートはこちら。

 

その意味では、総理がみずからの思い込みに基づいて

わが国のあり方を決めようとすること自体は

批判されるべきことではないのかも知れません。

 

しかし問題は、

国連演説にうかがわれるような自由貿易バンザイの思い込みが

わが国の権益を満たすうえでプラスに作用するかどうか。

遺憾ながら、マイナスに作用するとしか思えないのです。

 

だ・か・ら、

平和主義は貧困への道と言うのですよ!!

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はたせるかな、

演説の翌日にあたる9月26日(日本時間27日未明)、

日米両政府は

モノの貿易を自由化する物品貿易協定(TAG)の締結に向けた交渉を始めることで合意、

共同声明を発表しました。

関連記事はこちら。

 

TAGはモノの貿易のみを対象とするので、

投資・サービス分野なども含むFTAとは別物というのが

日本側の公式見解。

現に総理は

「FTAとは全く異なる」と説明しています。

 

日本は自由貿易の旗手たらんとするが、

自国の権益はちゃんと守る。

たぶんそうおっしゃりたいのでしょう。

 

ところがトランプ大統領はこう発言。

我々は今日、FTA交渉開始で合意した。

これは日本がこれまで様々な事情から拒否していたものだ。

必ずや満足のいく結論に達すると思う。

 

おっと、認知的不協和か?!

・・・という感じですが、

そう意地悪く受け取る必要はありません。

こう考えればいいのです。

 

1)今回スタートするのはTAG交渉である。

投資やサービス分野の自由化が含まれないので、これ自体はFTAとイコールではない。

 

2)ただし近日中に、投資やサービス分野を自由化する交渉も開始する。

さしずめTAIS(TRADE AGREEMENT ON INVESTMENT AND SERVICE)だが、

モノの貿易が含まれないので、これもFTAとイコールではない。

 

3)よって日本がアメリカとのFTAに応じたことにはならない。

応じるのはあくまで、TAGとTAISである。

TAGとTAISを合わせると、FTAに合意したのと何も変わらなくなるが

名称が異なる以上、それは脇に置いてよい。

 

要するに両首脳、

日本の権益が守られたかのように見せつつ

アメリカの権益を満たす方法を見出したのではないでしょうか?

 

「だって、100%共にあるんだものねえ」(※)お姉さんの感想です。

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『平和主義は貧困への道』を読まれた方ならお分かりのように、

わが国がグローバリズムとナショナリズムの間で適切なバランスを取れない、

もっと言えば

ナショナリズムを下手に標榜すると、かえってグローバリズムに流されてしまうのには

厄介な歴史的経緯があります。

 

だとしても、この状態をそろそろ脱却しないかぎり

近い将来、わが国の権益が決定的に損なわれ

貧困化と没落、

果ては亡国が待ち受けているのも確実ではないでしょうか。

 

やはり外交は、

ナショナリズムを基盤としないかぎり、どうにもならないものなのです。

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