本日もドナルド・トランプがらみの話題でまいります。
「アメリカ第一」を説くトランプですが、
5月4日のCNNインタビューでは
自分が大統領になったら
日本に在日米軍駐留費用の全額負担を求め、
それに応じなければ撤収を検討すると発言。
たしか日本は、
すでに駐留費用の75%前後を負担しているはずですが
100%でないと不満のようです。
むろん、この主張がアメリカ政府の政策となるには
1)トランプが大統領選に勝つ。
2)ホワイトハウス入りした後も、考えを変えない。
という条件が満たされる必要があるものの
米大統領の有力候補がここまで踏み込んだ発言をしたのは
たぶん初めてでしょう。
で、これにたいし反論したのが
石破茂・地方創生担当相。
いわく。
米国が日本を守っているのだから、
その経費を負担すべきだ、という文脈で言っているなら、
日米安全保障条約をもう一度よく読んでほしい。
石破大臣、
1)日本の駐留経費負担率は他の同盟国と比べても高い
2)在日米軍はアジア地域の平和と安定にも寄与している
3)それはアメリカの国益にも適っているはずだ
とも述べたとのこと。
なるほど、日米安保条約の第5条には
こう書かれています。
各締約国(つまり日本とアメリカ)は
日本国の施政の下にある領域における、
いずれか一方に対する武力攻撃が、
自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め(る)。
ならば在日米軍は
アメリカの平和および安全を守るために駐留してもいるわけで
日本の平和および安全を一方的に守っているのではないことになります。
第6条にもこうある。
日本国の安全に寄与し、
並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、
アメリカ合衆国は、
その陸軍、空軍及び海軍が日本国において
施設及び区域を使用することを許される。
「日本国の安全」が先に来てはいますが
「極東における国際の平和及び安全の維持」も掲げられているので
石破大臣の発言、そのかぎりでは正論です。
ただし第10条には、こうあるんですね。
この条約が十年間(=1970年まで)効力を存続した後は、
いずれの締約国も、
他方の締約国に対し
この条約を終了させる意思を通告することができ、
その場合には、この条約は、
そのような通告が行なわれた後
一年で終了する。
『僕たちは戦後史を知らない』で述べたように
これはもともと、
いずれ日本が対米従属を脱するための布石として
盛り込まれた可能性が高い。
ただしアメリカ側が終了を通告することだって
むろん可能なのです。
安保条約をよく読んだトランプが
在日米軍の撤収ではなく
安保条約の終了を唱えだしたら
石破大臣、どうするのでしょう。
長年続いた安全保障上の対米依存から
自主独立路線へと
一年間で転換できるか?!
「希望の同盟」を維持すべく
あわてて駐留費用の全額負担を決める、
なんて展開が想像されるのですが・・・
ではでは♬(^_^)♬
7 comments
玉田泰 says:
5月 11, 2016
トランプは
日本(人)の異常なまでの整備能力の高さ、
毎朝基地に、定刻に出勤してくる勤勉さ、
備品を盗んだりしない真面目さ(他国では家具まで盗まれるとか)
そしてなにより「地政学的な日本に基地を置くこと重要性」(日本が核武装なんて全く無意味)
を何一つ理解していないようですね。
一番慌てているのはアメリカの軍当局なのだとか。
所詮は経済しか語れない、恩着せがましい成り上がりの大統領失格者なのでしょうか?
でも大統領になるかもしれないですよね。アメリカの終わりの始まりか?
SATOKENJI says:
5月 11, 2016
ああいう主張は、現場の事情を知らない人物にのみ可能なものでしょう。
じつは分かっていて、ハッタリをかましているだけかもというのは過大評価?
玉田泰 says:
5月 11, 2016
捕捉します。
日本の核武装に意味がないと書いたのは、
僕は、北朝鮮の「俺たちは核を持ってるぞ、使うぞ、使うぞ」が正しい核の使い方(笑)だと思っています。
それからトランプの「日本はアメリカに依存しているんだ」と言う主張に対しては、お前ら(米国)は対日依存を止められるの? と考えます。
Guy Fawkes says:
5月 11, 2016
この辺は三橋さんや中野さん、経済評論家の渡邉哲也先生ががお詳しいかもしれませんが。
上の玉田さんの補足が良い例で、トランプ・サンダース両氏の現象から読み取れるのは第二次大戦後の筆頭戦勝国たる
アメリカもまたグローバリズムへの距離感と共に複数巴になっているのでしょう。
所詮は経済にだけしか政策の正当性を見出せないならば、そこだけでも重視すれば良い。
幸いにも日本はこれだけの経済的失政を経てもまだ内需大国です、その方が互恵関係になり希望の同盟(皮肉交じり)になります。
尤も国防的には在沖米軍が縮小後に自衛隊を配備し、金銭で解決しない信頼関係を築くだけの主体性が政府にあればの話ですが…
玉田泰 says:
5月 12, 2016
おはようございます。
思い詰めて書き込みます。
先生の言論の入門者見習いとして、確かめたい質問とお願いが三つあります。
不躾ながら、初心者の妄言としてお許しください。
一つ目は
先生は「保守」ですか?
二つ目は
一つ目の答えいかんに関わらず、僕のような無学の徒(高卒)で石頭の中年にも解る先生のお言葉で
「保守」を再定義して頂けませんか?
三つめは
「保守」と「右」の違いって何処ですか?
先生の著書はまだ二冊(次の「僕たちは戦後史を知らない」は津軽海峡を渡っている所でしょうか?)
しか読んでいないのですが「右翼」がわからなくて。
バカバカしい疑問ですが、いつか暇があったらお答えをお待ちしています。
SATOKENJI says:
5月 12, 2016
手短かにお答えしますと・・・
1)本来の意味における保守でありたいと思っています。
「保守」本来の意味については、下記の定義のほか、「愛国のパラドックス」序論をご覧ください。
2)「社会的な変化のスピードが激しくなった産業革命以後の世界(18世紀後半以後〜)で、社会のあり方をできるだけ望ましい状態に保つべく、変革と守旧の間で適切なバランスを取ろうとすること」とお考えください。
3)保守が「変革と守旧の間で適切なバランスを取る」のをめざすのにたいし、「右(翼)」には「守旧のほうが正しいのを前提にする」傾向が見られやすいということでしょう。
ただし産業革命後の世界では、放っておけば「変革のほうが正しいのを前提とする」という「左(翼)」志向が強くなるので、保守はそれにブレーキをかけようとすることが多く、ゆえに「右」とも重なり合う部分が出てきます。
これについては、以下の本も参照していただくといいでしょう。
「新訳 フランス革命の省察」
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)
(※)近代における保守主義の出発点とされる本です。なにせ「右」も「左」も、フランス革命に由来する概念ですので。
「本格保守宣言」
http://ur0.pw/tNDz
玉田泰 says:
5月 13, 2016
早速のご返答ありがとうございます。
僕は先生の著書を手に取るまで、保守と言うものに確固たる思想なのではなく、
自民党支持のオヤジ(僕もオヤジですが)くらいのぼんやりとしたイメージしかありませんでした。
上記の定義を読み、先生の著書も僕なりに読み返し、保守思想を勉強していく決心が固まりました。
これからだと、思っています。
右も左も分からない(ジョークの積もり)所からのスタートですが、先生の発信を受け止めていこうと思います。