いわゆるアベノミクスは
少なくとも今までのところ、
予想、ないし期待されたほどの成果を挙げていません。
自民党みずから
まだ道半ばと言っているくらいです。
しかるになぜ
アベノミクスは十分な成果を挙げていないのか?
プライマリーバランスにこだわった緊縮財政志向もさることながら
2014年に実施された消費税の8%引き上げが
大きく響いているのは
誰も否定しえないところでしょう。
片やデフレ状態が20年近く続いているわが国では
経済の再活性化こそ
人々の切実な関心事のはず。
となれば、
消費税の10%引き上げを無期限延期、または凍結したうえで
思い切った積極財政に転換せよ!
という民意が高まるのが道理でしょう。
ちなみに「無期限延期」は
いずれは引き上げるという前提は維持するが、引き上げの時期を決めずにおくことであり、
「凍結」は
そもそも引き上げをやめることですから
厳密には別物です。
しかるにお立ち会い。
こんな記事が出ました。
消費税率10%への引き上げ肯定派が過半数に FNN世論調査
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160718-00000776-fnn-pol
7月16日と17日、
全国の有権者1000人から回答を得た調査によれば、
53.6%の人が
2019年10月の消費税率10%引き上げに賛成とのこと。
反対は40.8%だそうです。
安倍総理の指導力を評価すると答えた人は61.1%で
「評価しない」の28.5%を大幅に上回りました。
ただし景気・経済対策については
「評価する」が32.0%にとどまり、
56.2%の人が評価しないと答えたとか。
現政権の経済政策を評価しない人の割合と
消費税の10%引き上げに賛成する人の割合があまり変わらない。
これは何を意味するのでしょう?
8%引き上げをめぐる経緯を振り返れば
よほど思い切った積極財政にでも打って出ないことには
10%引き上げによって
日本経済はいっそう深刻な打撃を受ける危険が高い。
ついでに積極財政をやったとしても
効果が半減してしまうのは目に見えています。
つまりは経済を活性化させるまでにはいたらず、
経済のさらなる悪化を防ぐだけに終わりかねない。
にもかかわらず、2019年の10%引き上げに賛成する。
現政権の経済政策を評価しないと答えながら
消費増税には賛成と答えた人だって少なからずいるはず。
でないと、数字のツジツマが合いません。
今回のFNN世論調査を見るかぎり
経済の再活性化を望みつつ
同時に経済を落ち込ませたがっている
というのが
わが国の民意であると判断せざるをえないのです。
いったい人々は
自分たちが何を望んでいるのか分かっているのでしょうか?
「増税を肯定する民意」につづいて
「財政出動を否定する民意」も高まり、
かつ「経済の再活性化を求める民意」が強まったら、
どんな政権もお手上げです。
エンジンはめいっぱいふかせ、
ギアはトップにあげろ、
ただしブレーキは踏んだままでなければダメだ。
そう要求しているようなものですからね。
今年の夏もニッポンは
パラドックス花盛りなのでありました。
ではでは♬(^_^)♬
7 comments
福岡ワマツ says:
7月 20, 2016
今年もですが、一昨年の夏も、さぞニッポンはパラドックス花盛りだったのでしょうね。
というのも、たまたまなのですが、佐藤さんが出席された二年前のテレビ番組の動画をyoutubeで見つけました。
「深層NEWS 戦後70年へ向けて再考 日本の戦争と戦争責任 20140818 佐藤健志×白井聡」
https://www.youtube.com/watch?v=DcU0_Qja2o8
放送されたのは二年前とはいえ、今日でも視聴する価値の高い、とても良い番組ですね。
特に、今後の日米関係に関するご指摘は示唆に富んでいて勉強になりました。
Daniel says:
7月 21, 2016
「深層NEWS 戦後70年へ向けて再考 日本の戦争と戦争責任 20140818 佐藤健志×白井聡」拝見しました。正直言って、保守派の一人として白井先生(鋭さは非常に感じるのですが)のご説に異論があるのは勿論ですが、佐藤先生の言説にも少し違和感を感じるのです。
例えば、お二方とも、冷戦をまるで天災(天祐?)の如く言ってらっしゃることです。それは、別に第二次世界大戦で日本が負けようが勝とうが、冷戦がやがて勃発するのは、情勢や理のしからしむるところと考えるからです。
それに、特に白井先生の方なのですが、「「総括」主義」が垣間見えて、驚きます。総括って、時にもちろん重要なことですが、下手な総括は、総括しないよりタチが悪いです。得てして特定の政治的思惑に利用されるだけで、少なくとも性急な「総括」は、百害あって一利なしです。だって、一人の人間の所業の総括だって、本当はとても難しい。であるならば、まして、国家の総括なんて、歴史を重ねる中で初めて定まるのでは。
私は、日本国民、国家が、敢えて下手な「総括」をせず、敗戦を終戦と言い換え、アメリカとの付合いも曖昧にしたまま従米路線を取ったのには、消極的な意味のみならず、積極的な意味もあったと思います。評価を全部先送りにした(或いは今も先送りにしている(もっとも、安倍総理はそうでもないかも))のは、意味があったと思います。
これは、かつてエコノミストの紺屋典子さんが講演で、竹中平蔵が不良債権の処理を強行しようとした時に、「何を言ってるの!それは今こそ先送りでしょ!」と言って憚らなかったというエピソードをお話しになった時に、「先送り」って、凄く意味のある事なんだ、と気付かされた時に覚えた思いと軌を一にしています。本当は「先送り」って、実に滋味溢るる「戦略」だと思います。
さて、昭和に精神形成をした日本国民なら、誰もが覚えている言葉があります。いわく、「アメリカに、追い付き、追い越せ」。今では、死語と成り果て、そんなことを今もし口にすれば、笑われるどころか、特高が来ないうちに口をつぐめと言われそうな勢いの科白になってしまいました。(平成育ちの方はこれ聞いたこともない人がいると思います)
これは私の解釈です。日本国民は、それを意図するかしないかを別にして、超えて、やがて「その日」が来ることを(無意識にでも)期して、アメリカを(特に総合的な国力の点で)超えた時点で広がる真に自由な日本を夢見て、戦後の日々を頑張ってきたのではないでしょうか。
そうでなければ、あのバブル絶頂期に、我々が感じた、日本は遂にアメリカを超えたのではないかという、途轍もない湧き返るような高揚感が、説明できないと思うのです。
だから私は、戦争責任の全面的「先送り」は、やはり正しかったと思うのです。まだ勝負はついていない。これが日本国民の真の(潜在的?)意識だったのでは。
問題は、バブル崩壊後(或いはそこへ至る導入経路から)の戦略選択の過ちからです。だから、「巻戻し」は、そこから始めるのが、最も肝要かと思うのです。
とはいえ、ひょっとするとここにも落し穴があるかもしれません。バブル崩壊後の戦略選択の過ちも、実は、戦争責任追及の全面先送りに原因があるとしたら?それに対する警戒心を残しつつ、今日はコメントを終えたいと思います。
玉田泰 says:
7月 21, 2016
消費増税肯定派の人がそんなに多いとは驚きです。
マスコミに、ひいては財務省の世論誘導に踊ろされている人が大勢いるということなのでしょうか?
普通に我がこととして考えたら増税反対を唱えるのが当然の筈。
国の将来を憂いてのことかも知れませんが、とてもじゃないけれどまともな庶民感覚とは思えません。
消費の落ち込みが実際なのだと何故気が付かないのか不思議です。
多くの人が洗脳されているとしたら怖ろしいことです。
せい says:
7月 21, 2016
三橋氏が、国の借金のデマについて事あるごとに取り上げるのは、致命的なウソだからこそですね。この手の主張を新聞で見るたび憂鬱になります。5パーに上げた頃は、自民党も経済のパイを増やして借金を返すって反論してたのに。
せい says:
7月 21, 2016
矛盾してますね。ああ、そのころからおかしかったのか
太郎 says:
7月 21, 2016
http://www.ntv.co.jp/yoron/201607/index.html
日本テレビの世論調査なのですが、安倍政権が今度行う10兆円超の経済対策についても、過半数が「評価しない」と答えています。世論の中では未だに積極財政について否定的なイメージが強いようですね。
それにしても、わざわざ質問に「財政健全化のめどがはっきりしないなか」と付け加えるのは誘導しているようにも感じます。
mash says:
7月 22, 2016
>今回のFNN世論調査を見るかぎり
経済の再活性化を望みつつ
同時に経済を落ち込ませたがっている
というのが
わが国の民意であると判断せざるをえないのです。
本当に倒錯したおかしな考えですね。国の借金で破綻する論信じてる人が居るんですかね
これだけ庶民の懐具合や経済も消費も悪いのに、悪くないと思ってる人達は現実離れしてますね
しかも一層悪くなる事を何か良い風に捉えてるのはパラドックス花盛りですねw
二頭追うものは一頭も得ずという事を増税肯定の民意の人に言っておきたいと思います
メディアも含めて。