5月13日の記事
「『大阪都構想とフランス革命』配信しました。」について、
面白いコメントをいただきました。
いわく。
大阪での野党の動きは大阪革命(注:いわゆる「大阪都構想」を指す)に対する反革命だった!?
共産党の方は嫌がるかもしれないw
これについては
共産党に直接問い合わせるのが最も良いものの、
私の関知するかぎり
同党のみなさんが嫌がることはないでしょう。
なぜか。
21世紀において、共産主義(志向)は
「保守」に分類されるべきものになりつつあるからです。
中野剛志さんとの共著
『国家のツジツマ』でも論じましたが
「左翼」を急進的な改革志向と定義する場合、
何が左翼(の代表格)か? という点は
時代とともに大きく変わる。
たとえば19世紀における
急進的な改革志向の代表格は
社会主義にあらず、自由主義でした。
だから当時の保守主義者は、しばしば「平等」を重視しています。
つまり社会主義者とスタンスが近かった。
それが20世紀に入ると、
社会主義国家というものが出現したせいもあって、
急進的な改革志向=社会主義志向の図式が成立する。
こうして保守主義は、「自由」を重視するにいたりました。
しかるに現在、社会主義陣営は崩壊して久しい。
そして新自由主義的なグローバリズムのもと、
各国の制度や慣習をつくりかえようとする動きが盛ん。
つまり21世紀、
急進的な改革志向の代表格は
ふたたび自由主義に戻りつつあるのです!
ならば平等に重きを置くはずの共産党が
「反革命」、
つまり保守政党と見なされるのは
しごくまっとうな話。
ソ連崩壊直後のロシアでは
「右翼」といったら共産党を指したそうですが
まったく同じ理屈ですね。
関連して、面白いエピソードをひとつ。
20世紀前半のフランスに、
ポール・ニザンという作家がいました。
共産主義者で、革命をテーマにした小説で知られる人。
ジャン=ポール・サルトルとも親しく、
日本でも1970年前後には
全集が出るほど人気がありました。
しかるにニザンの孫が誰だかご存じですか?
「グローバリズムが世界を滅ぼす」のエマニュエル・トッドです!
「世界革命」という往年の夢を
新自由主義者に乗っ取られた現在、
反グローバリズムの立場から
自国の伝統や慣習を保守することこそ、
共産主義者の正しいあり方だと言えるのではないでしょうか。
とくに戦後日本の場合、
共産主義への憧れ自体が、
もともと形を変えた国粋主義(=ナショナリズム)だった可能性が高いのです。
4月28日のブログ「『海外で戦争する国』あれこれ」と
4月29日のブログ「日本が共産主義にならなかった理由」をどうぞ。
ではでは♬(^_^)♬
3 comments
akkatomo says:
5月 15, 2015
保守主義と共産主義との類似性は、20世紀を通じて両者が争い続けた末に起こった腐れ縁によると言えるのではないか___
SATOKENJI says:
5月 15, 2015
「何かとあまりに長く戦っていると、当の相手と結婚するハメになる」
映画「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(マイケル・チミノ監督、1985年)、オリジナルシナリオの幕切れの台詞。
ただし完成した映画では、もっと当たり障りのない台詞に変更されていました。
なおシナリオを書いたのは、「プラトーン」でブレイクする寸前のオリバー・ストーンです。
akkatomo says:
5月 15, 2015
往々にして。隣人や同胞よりも敵だと思っていた相手の方が
こちらのことをよく知っていた、こういう事はよくある事です
その結果として、呉越同舟やら、昨日の敵は今日の友、
そういった事もよくある事態でございます
千年の敵も無ければ永遠の友情も有り得ない
これを変節、転向と言うなかれ。人間たるもの離合集散もまた本質でございます
そんな事を思う今日この頃
敵との結婚とはある種のストックホルム症候群なのかもしれません
が、それはそれで良いことです。離婚が決定づけられた結婚でありますからね