ルー・リード不朽の傑作

「ストリート・ハスル」の第二部は、

音楽に乗せた一人芝居ともいうべき趣向のセクション。

 

リード自身、

2004年のライブ盤

「アニマル・セレナーデ」で同曲を演奏したとき、

こんなことを語っています。

 

ロックの形式にあわせて

素晴らしい独白が展開される曲をやりたかったんだ。

作家で言えば、こんな連中が書きそうな台詞をね。

 

ウィリアム・バロウズ

(代表作「裸のランチ」「紅夜の諸都市」)

ヒューバート・セルビー

(代表作「ブルックリン最終出口」)

ジョン・クリーシー

(600冊以上の小説を発表したミステリー・SF作家)

テネシー・ウィリアムズ

(代表作「欲望という名の電車」)

ネルソン・オルグレン

(代表作「ワイルド・サイドを歩け」)

レイモンド・チャンドラー

(代表作「さらば愛しき女よ」)

 

こいつらを混ぜ合わせると、ストリート・ハスルになるのさ。

 

その独白の内容なのですが・・・

まさにリードにしか書けない

エグさと深遠さの同居する世界。

 

ある男のもとに、

友人だか誰かが、女連れでやってくる。

ところがその女、クスリをやっていたのか、

ふいに死んでしまうのです。

 

で、主人公の男は

相手にこう言うんですな。

 

警察に来られたら面倒だ、

女を連れてきたのはお前だぞ。

行き倒れなんざ、この街じゃいくらでもいる。

女の脚をつかんで連れだし

どこかの暗い路地裏に捨ててこい!

 

なんとも辛辣で、救いのない話です。

しかし、そこに圧倒的なクライマックスが待っている。

 

 なあ、世の中には

行き場のない連中がいる。

これこそ自分のものだと呼べる

声さえ持てないんだ。

だから居場所を与えてくれそうだと

思うものが見つかるや、

すぐに飛びつく。

 

分かるか?

そいつらは不幸にすがって生きるのさ!

 

アメリカのロック評論家、グレイル・マーカスは

この箇所について

「今の時代のための標語」

と形容しました。

 

自分が何だか分からずにいるくらいなら、

いっそ不幸をよりどころにした方がまし。

いかに多くの人が、

自覚もできないまま、

こんな生き方をしてしまっていることか。

 

この曲の第一部に登場した

ワルツのマチルダが、

しょっちゅう、バーで男あさりをしていたのも、

つまりはそういうことでしょう。

 

ここまで辛辣な言葉を歌えたルー・リードは

本当は強くて優しい人だと思いますね。

 

「ストリート・ハスル」、

第三部についてはまた明日。

 

ではでは♬(^_^)♬