昨日の記事では

SFシリーズ「スター・トレック」を例に挙げて

アメリカ人の発想では、宇宙(=星の世界)に進出することも西部開拓のバリエーションだった

ことに触れました。

 

しかしアメリカ人がめざす「星」は

夜空にのみ、あるわけではない。

ハリウッド というものが存在するわけですよ。

 

さて。

ハリウッドの歴史は、スターたちの栄光の歴史であると同時に

とんでもないスキャンダルの歴史でもあります。

 

「ハリウッド・バビロン」という有名な本があるくらいですが、

その著者ケネス・アンガー(彼は前衛映画作家にして、なんと魔術師でもあります)は、

こんな趣旨のコメントをしていました。

 

ハリウッドのスキャンダルというのは、独特なものなんだ。

映画産業はアメリカに限らず、

あちこちの国にある。

だけどハリウッドみたいに、悲劇をたえず生み出しながら

映画をつくっているところは他にないだろう。

 

なぜハリウッドでは、

他国の映画産業には見られないスキャンダルや悲劇がつきものなのか?

ひょっとしてこれも、

フロンティアにたいするアメリカのこだわりと関係があるのかも知れません。

 

というわけで、ふたたびご紹介したいのが

12月20日公開の映画「マップ・トゥ・ザ・スターズ」。

 

同作品については「その祈りは永遠の呪い」 (10月28日)でも書きましたが

このような視点から見ても

じつに興味深いものがあります。

 

たぶんそれは、監督のデイヴィッド・クローネンバーグ

カナダ人だということと関連しているのでしょう。

アメリカ同様、カナダでもフロンティアの開拓は行われましたが

やり方が違ったんですね。

 

アメリカでは、現地が安全かどうかなどお構いなしに

開拓者がどんどん乗り込んでいって、コミュニティを築いていった。

たいしてカナダでは、まず騎馬警察を送り込んで

安全であることを確認してから、開拓者が来たのだそうです。

 

カルト系映画作家ということで

よくクローネンバーグと比較されるデイヴィッド・リンチも、

「マルホランド・ドライブ」

「インランド・エンパイア」と、

ハリウッドを舞台にした映画を二本つくっていますが、

リンチが徹頭徹尾、アメリカ的な視点からハリウッドの狂気を見つめているのにたいし、

クローネンバーグはカナダ的な視点から見ている気がしますね。

 

ついでに「マップ・トゥ・ザ・スターズ」、音楽も素晴らしい。

クローネンバーグ監督とコンビを組んで35年の作曲家

ハワード・ショアが担当していますが、

現実と幻想の境界を揺さぶるようなサウンドが展開されます。

軽やかで悲劇的、ジャズ風でありながらクラシカル。

 

 

ではでは♬(^_^)♬