中野剛志さんの新著は

「世界を戦争に導くグローバリズム」

という題名です。

 

ただしこれは、

「グローバリズムの衰退が世界を戦争に導く」

と言い直すこともできる。

 

両者は矛盾しているようですが

じつは矛盾しておりません。

 

ここで言うグローバリズムとは、

1)アメリカという特定の国が

2)一介の主権国家であるにもかかわらず、世界国家であるかのごとく振る舞い

3)世界のあり方を一手に仕切ろうとする

ことを指します。

 

それがなぜ、世界を戦争に導くのかと言うと

じつはグローバリズム、現実には貫徹不能だからなんですね。

 

かりに貫徹可能だとすれば

全世界がアメリカの管理のもと、

アメリカ基準で仕切られることになる。

 

良いか悪いかは別として、戦争は起きないでしょう。

 

とはいえ多種多様な国家や民族によって構成される世界を

一手に仕切るのは、いくら何でも無理。

こうして息切れしたアメリカは、

グローバリズムから手を引き始める。

 

この撤退こそが、世界各地で覇権の真空状態を生み出し

戦争の危険を高めるわけです。

 

つまりは一昨日のブログでも書いたとおり

いったん広げた大風呂敷は

トラブルなしには畳めない

という話。

 

裏を返せばグローバリズムとは、貫徹できないくらいなら掲げないほうが良い理念なのです。

 

かつて日本が掲げた「八紘一宇」もそうでしたね。

あれはいわば、日本主導のグローバリズム。

だからこそ当時は、八紘一宇の達成こそが公正な世界平和をもたらすと言われたのです。

 

ただし、これも貫徹はできなかった。

そのときどんなトラブルが生じたかは、みなさんご存知の通り。

 

しかし。

公衆衛生の分野でも、よく似た現象が起きているのですよ。

 

20世紀後半、人類は疫病の病原体を地上から根絶するという試みに踏み出しました。

考えようによっては一種のホロコーストなのですが、

相手が微生物だと、どこからも文句は出ないんですね。

 

そして天然痘では成功。

名前とは裏腹に、天然の天然痘はもはや地上に存在しません。

 

かの冥王星が太陽系の惑星からリストラされたときは

「冥王星の葬式」を出した人々がいたようですが、

(「ダンスと個人的な話」カテゴリーの「占星術への素朴な疑問」参照)

「天然痘の葬式」を出した人々は、私の知るかぎり存在しないようです。

 

しかるにこれは、

1)人類という特定の生物が

2)一介の生物であるにもかかわらず、地球の支配者であるかのごとく振る舞い

3)生態系のあり方を一手に仕切ろうとする

点で、グローバリズムと同じ構造を持っている。

 

天然痘相手のグローバリズムは、みごと貫徹できたわけですね。

 

けれども病原体すべてにたいして、このようなグローバリズムを貫徹するのは無理。

病原体も病原体で「パノセノシス」(病態系)と呼ばれるバランスをつくりあげているからです。

 

従来、猛威を振るっていた病原体が制圧・根絶されることは、

病原体の世界に「覇権の真空」をつくることと同じなんですよ!

 

そのため、従来はおとなしかった(=毒性の弱かった)病原体が、毒性を強める方向に突然変異しやすくなる。

だいたい公衆衛生の水準が上がることは

人口増加をうながすことで

病原体にとっての「エサ」をどんどん増やすようなもの。

好きなだけ暴れていいよというシグナルを、病原体に送っているのと同じです。

 

つまり疫病の根絶という「生態系版グローバリズム」を推進すると

かえってエマージング・ウイルスが蔓延しやすくなりかねない!!

天然痘が根絶された1980年あたりから、

エイズやエボラ出血熱といった新たな疫病が現れたのは、

その意味で偶然ではないのです。

 

よってこちらのグローバリズムも、結局は貫徹不能。

そして大風呂敷を畳むときにトラブルが起こるのは、すでに見たとおり。

 

クリミアや尖閣で目下、起こっている紛争と

アフリカで目下、起こっているエボラ出血熱の流行は、

本質的には同じ原因から生じている。

20世紀後半に追及されたグローバリズムのツケなのです。

 

すなわち中野さんの議論は、

国際政治のみならず、公衆衛生の分野にも応用しうることに。

21世紀とは、

いかにトラブルを抑え込みつつ、グローバリズムを過去のものにしてゆくかが

大きなテーマになる時代と言えるでしょう。

 

というわけで、あらためて本を紹介しておきます!

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ではでは♬(^_^)♬