ドナルド・トランプにつづいて

ヒラリー・クリントン

民主党の大統領候補として正式に指名されました。

アメリカ史上初の女性大統領候補です。

 

トランプはこれと前後して、

ライバルに新しいあだ名をつけました。

 

彼は従来、クリントンのことを

「ペテン師ヒラリー」(CROOKED HILARY)

と呼んでいましたが

今後は

「腐れヒラリー・クリントン」(HILARY ROTTEN CLINTON)

と呼ぶそうです。

 

関連記事(英語)はこちら。

 

ヒラリー・クリントンの旧姓

ロッダム(RODHAM)と

「腐れ」を意味する「ロットン」の語呂合わせですが

こういう言葉遣いをしてしまうところが

トランプのトランプたるゆえんですね。

 

それはさておき。

 

7月26日の記事

「ドナルド・トランプの指名受諾演説」で紹介した

英紙「エコノミスト」の記事には

面白いくだりがありました。

いわく。

 

演説においてトランプは

(注:アメリカの治安が悪化している例として)

ワシントンDCやシカゴ

(後者はオバマ大統領の故郷と見なされる都市である。ただし出生地ではない)における

殺人事件発生率の増加や、

不法移民によって引き起こされた

いくつかの事件を取り上げた。

 

犯罪学者や警察トップによれば

近年の凶悪犯罪には複雑な背景があり

原因を単純に特定できるものではない。

だいたい1990年以後、

アメリカにおける凶悪犯罪の総件数は

ほとんど半分にまで減少しているのである。

 

しかし世論調査の結果を見るかぎり

「治安が悪くなっている」と答える人々の割合は

年々増加している。

トランプはこのことをよく承知していたのだ。

(二番目のカッコは原文)

 

記事本文はこちら。

 

凶悪犯罪の件数自体は

大幅に減少しているにもかかわらず

治安が悪化していると答える人々が

年々増加している。

 

これは何を意味するのでしょう?

 

アメリカの人々も

メディアの印象論に踊らされているのだ!

そんな解釈もあるでしょうし、

一理ないわけではない。

 

しかし、こう考えることも可能です。

 

1990年以後の約25年間は

グローバリズムの進行によって

アメリカ社会の格差が拡大、

中産層が没落しやすくなった時期。

 

いいかえれば

多くの人々の財産権や生活権が

脅かされるにいたったのです。

 

これは通常の意味における「犯罪被害」ではありません。

ただし人々が

「自分たちにたいして犯罪的な何かが行われている」

と感じたとしても

無理からぬものがある。

 

となると

よしんば凶悪犯罪の件数が減少していようと

治安が悪くなっていると考える人が増加しつづけるのも

必然の帰結ではないでしょうか。

 

グローバリズムにひそむ破壊性への危機感が

「凶悪犯罪への不安」という形で

間接的・象徴的に表明されているのではないかということです。

 

アメリカの治安は良くなっているが

経世済民は悪くなっている、

そんな言い方もできるでしょう。

 

しかもグローバリズムへの危機感と

凶悪犯罪への不安には

具体的な接点も存在する。

大量に移民を受け入れた場合、

その中でも経済的に困窮している層が

犯罪に走る恐れは間違いなくあるからです。

 

ご存知のとおり、

印象論はたいがい非論理的。

だからといって頭ごなしに否定しさえすれば

片がつくとは限りません。

 

印象論が強い影響力を持つことには

論理的な理由がひそんでいる可能性が高いのですよ。

 

当の理由を解明しないかぎり

いかに正論を唱えても

それが人々にたいして

十分な説得力を持つことはありません。

 

本当は経世済民の崩壊、

つまりは生活水準の低下に怯えている人々に

「治安の悪化は印象論!

凶悪犯罪は減っているんだから心配無用!」

と言って

納得してもらえると思いますか?

 

エコノミストの記事が喝破したように

トランプはこのことを利用しているのです。

 

ではでは♬(^_^)♬