5月24日にトランプが行った

米朝会談中止通告について、

保守界隈の一部では

アメリカは北朝鮮を追い込んでいるのだ、さすがトランプ!

といった反応が出たようです。

 

私の見るところ、論理構造はざっと以下の通り。

 

1)北にしてみれば、CVID(完全、検証可能、かつ不可逆的な非核化)などできるはずがない。

ましてリビア方式(核放棄が先で、制裁解除や援助は後)は論外。

2)トランプはそれを百も承知で会談に応じ、そのあとでCVIDやリビア方式を持ち出した。

つまりは北が会談に応じられないよう仕向けたのだ。

3)しかし会談を拒否すれば、アメリカは武力攻撃するだろう。

よって北は譲歩を迫られる。

4)ついでにトランプは、北に拘束されていたアメリカ人を救出した。

つまりは見返りなしで自国民を取り返したのである。

 

つまりはトランプが上手に金正恩をハメた、という話。

 

この主張が正しければ

核開発を凍結・中止するかのごときふりをして

20年以上も関係諸国(とくにアメリカ)をハメたあげく、

しっかり核開発を続けてきた北朝鮮は

世界でもまれに見る外交上手である

という結論になります。

 

保守派がそこまであの国を高く評価しているとは知らなかったぜ!

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ただし、それは脇に置きましょう。

 

ンな話を持ち出すまでもなく、

上記の論理構造には

認知的不協和と言うしかないほど

ワケワカな点が多々あるからです。

たとえば・・・

 

1)「首脳会談を持ちかけてきた北朝鮮が、

会談に応じられなくなるよう追い込む」という作戦だったとすれば

北のほうから会談中止を言わせるよう仕向けるのが正しいはず。

にもかかわらず、アメリカ側から中止通告をしたのはなぜか。

 

だいたい北朝鮮のからんだ国際協議で

北以外の国が打ち切りを言い出したのは

今度が初めてじゃないんですかね?

 

2)北を追い込むためには

「アメリカ=平和を望む正義の国、北朝鮮=戦争をしたがる危険な国」

という図式を定着させることが重要。

しかるに先週いらい、トランプ大統領やペンス副大統領が

非核化合意で核を取り上げたら、いずれ北朝鮮をつぶそうと思っている

と解釈されても仕方ないような発言をしているのはなぜか。

 

3)同じく北を追い込むためには

同国が国際的に孤立する状況をつくることが重要。

ところが会談中止通告いらい、

むしろアメリカのほうが孤立している感が強い。

 

ロシアのプーチン大統領は、トランプをかなり強く批判。

いわく、

遺憾な話だ。

米朝会談は、朝鮮半島情勢安定化への重要なステップであるとともに

半島全体の非核化につながると期待していた。

だいたい金正恩は、事前の約束を全て守っているじゃないか。

関連記事はこちら。

 

北朝鮮の非核化でなく

「半島全体の非核化」と言っているのが

なかなか微妙でよろしい。

 

一方、中国も「環球時報」(人民日報の姉妹紙)の社説でこう批判。

 

トランプがこのような宣告をしたのは、

北朝鮮が豊渓里の核実験場を爆破して数時間後のことだった。

 

このタイミングで会談中止を宣言するというのは、

あまりに信義にもとる行為ではないか。

イラン核合意離脱と同じく、国際社会は最早アメリカを信用しなくなるだろう。

関連記事はこちら。

 

ちなみに記事によれば

中国政府の元高官はこう語ったそうです。

 

北朝鮮が怖れていたのは、このことだよ。

これはまさに、核武装を全て放棄させた後に

体制を崩壊され血まみれになって惨殺された

リビアのカダフィ大佐と類似の流れじゃないか。

 

「バカ野郎、だから言っただろうが」(※)個人の感想です。

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で、韓国の文在寅大統領は26日、

金正恩と電撃会談。

その内容について、本日こう語っています。

 

金主席と私は、

6月12日の会談は予定通り行われるべきであること、

および朝鮮半島の非核化と

恒久平和体制構築に向けた努力を止めてはならないことで合意した。

関連記事はこちら。

 

文大統領、

北に非核化の意志があるのかどうか、

ましてCVIDを受け入れるつもりがあるのかという質問については

曖昧な返事でかわしているのですが

それはともかく。

関連記事はこちら(質疑応答の3問目と4問目)。

 

いわゆる「6ヶ国協議」に参加している国

(アメリカ、日本、北朝鮮、韓国、中国、ロシア)のうち

じつに4ヶ国(北朝鮮を含む)までが今回の件について

金正恩の肩を持っているのです。

 

他方、アメリカの行動を支持しているのは

同国が何をしようと支持を表明するに決まっている

タイコモチ根性丸出しの某従属国家(とくに名を秘す)だけじゃないですか。

 

「ふーん、これでトランプはさすがだって話になるんだ。すごいなあ」(※)個人の感想です。

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のみならず。

 

4)かりに北朝鮮が今後、会談を拒否するようなことがあれば(※)

それは同国が「日米にリードされた国際社会の圧力」に屈しなかったことを意味する。

よって、圧力で譲歩に追い込むという発想は完全に間違っていた。

(※)そもそも今回、向こうは拒否していないのですよ、念のため。

 

5)アメリカは拘束されていた自国民3人を取り返したが

ここで米朝会談が流れれば、わが国の拉致問題が進展しないのは確実。

よってこれがトランプの戦術通りだとすれば

アメリカは拉致問題など、どうでもいいと思っていることになる。

むろん、トランプを称賛する日本の保守派も例外ではない。

 

「今日は私の絶望記念日」(※)個人の感想です。

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「だから日本人は奴隷なんスよ! 奴隷!!」(※)個人の感想です。

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6)北朝鮮を譲歩に追い込むのがトランプの目的だったとすれば

同国がCVIDを受け入れた形跡がないにもかかわらず

(首脳会談をめぐる文在寅の歯切れの悪い発言はその証拠)

トランプが中止通告からわずか1日で、

また会談をやる気になっているのはなぜか。

 

あまりのことに、この方も笑うしかないようです。

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そして。

 

7)かりにアメリカが武力行使するような事態になれば

(拉致被害者奪還がいよいよ難しくなるのを別にしても)

経費のかなりの部分が日本に回ってくる恐れが強い。

 

なにせトランプ、24日の記者会見でこう言っているのです。

 

I have spoken to South Korea and Japan

and they are not only ready should foolish or reckless acts be taken by North Korea,

but they are willing to shoulder much of the cost of any financial burden

any of the costs associated by the United States in operations,

if such an unfortunate situation is forced upon us,

 

韓国と日本にハナシつけてきたんだが、

北朝鮮がバカで無謀な真似をするようなことがあったとしても、

どちらの国も対応する準備はできているってよ。

それだけじゃなくて、経済的負担の大半も引き受けてくれるんだぜ。

経済的負担ってのは、北とドンパチなんて不幸な事態になったとき

アメリカが軍事力を行使するのにかかる費用のこと、な。

関連記事はこちら。

 

♬踊り踊るな〜あ〜ら〜、チョイと従属音頭、ヨイヨイ♬

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「これはさすがに流されすぎでは・・・」(※)個人の感想です。

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菅義偉官房長官は5月25日、

記者会見でこの件を質問され

具体的やり取りについては控えたい

と述べたそうな。

関連ツイートはこちら。

 

いいかえれば、

具体的なやりとりがあったことは認めたわけです。

 

で、タイコモチ根性丸出しの従属国家が

こんな話にノーと言えるはずもないので

どう返答したかは、官房長官の答弁によらず明らか。

 

こういうのを「語るに落ちる」、

ないし「語らなくとも落ちる」と申します。

 

失言するのに口を開く必要すらないとはねえ。

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以上を要約しますと、

わが国の保守界隈は

1)アメリカの信用を失墜させ、

2)六ヶ国協議参加国の多数派を北朝鮮側に肩入れさせ、

3)今までの圧力路線が間違っていたことを証明し、

4)拉致問題など、アメリカはおろか自分たちにとっても

  じつはどうでもいいことを暴露し、

5)わが国に巨額の負担が回ってくる恐れが強いうえに

6)わずか1日で事実上撤回された通告

を、非常に高く評価したのでありました。

 

ここまで来ると、

もうアレしかないでしょうなあ。

 

そう、アレですよ。

みなさん、お待ちかねの・・・

 

          ♬だから保守派も宇宙のジョーク、あっソレ♬

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おなじみ平松禎史さんは、

24日の会談中止通告への支持を表明した

菅官房長官の発言について、昨夜こうツイート。

 

トランプ大統領が、延期の可能性はあるが米朝首脳会談はやる、と言い、

緊急の南北首脳会談で対話再開の努力がなされた後この見出しを見ると、

哀れでしかない。

親分の後ろで「そーだ、そうだーー」っていうヤツ。

 元のツイートはこちら。

 

親分の後ろで「そーだ、そうだーー」と叫ぶ役は

通常、ガヤとかワンサと呼ばれます。

早い話が、エキストラ同然のその他大勢。

 

某ネット局の討論番組でも

ときどき、そういう言動をせずにいられなくなって

パネリストからガヤに身を落とす人が見受けられますが

まあ、それはよしとしましょう。

 

とはいえ、親分がコロッと態度を変えた後も

何事もなかったかのごとく「そーだ、そうだーー」と叫ぶとなると

もはやアジアの恥さらしの域に達していると言わねばなりません。

 

蚊帳の外に、自分が(準)主役だと勘違いしているガヤがいた。

つまりはそういうこと?

 

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ではでは♬(^_^)♬
(おまけ)
絶句するしかなくなった sayaさんでありました。
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