ドキュメンタリー映画で知られる

酒井充子(さかい・あつこ)監督の最新作

「ふたつの祖国、ひとつの愛〜イ・ジュンソプの妻」が、

今日から東京の「ポレポレ東中野」で公開されます。

全国各地でも、順次公開の予定。

 

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酒井さんは新聞記者を経て映画の世界に入った経歴の持ち主。

初監督作品は2009年の「台湾人生」でした。

 

日本の植民地統治に始まり、

40年近くに及んだ国民党政府の戒厳令、

そしてその後の民主化と、

激動の歴史を生きてきた台湾の人たちをとらえた

素晴らしい作品。

 

ついでに音楽も良かった。

廣木光一さんという方による、ギターのオリジナル曲。

 

当時、私はインターFMというラジオ局で

映画・テレビ・ミュージカルの音楽を専門的に取り上げる番組

「SOUNDTRAX interzone」(サウンドトラックス・インターゾーン)

を担当していましたが、

酒井監督にお願いして音源を提供していただき、

番組でエアプレイしました。

 

ドキュメンタリー映画の音楽、

それもサントラの出ていない作品の曲が

FMで流れるのは、けっこう珍しいのではないかと思います。

 

さて。

「ふたつの祖国、ひとつの愛」は酒井監督の4作目にあたるものの、

これまた期待を裏切らない秀作。

 

サブタイトルに出てくるイ・ジュンソプ(李仲燮)

1916年に朝鮮半島で生まれた画家。

生前は不遇で、

1956年に39歳の若さで亡くなってしまいますが、

1970年代から評価が高まり、

今では「韓国の国民的画家」と呼ばれています。

 

ちなみにアジアの芸術家の中で、

ニューヨークの近代美術館に初めて作品が所蔵された人。

 

このイ・ジュンソプさんの奥さん、

じつは日本人だったのです。

山本方子(まさこ)さんという方。

 

ジュンソプさんが日本で絵を勉強していたことがきっかけで知り合い、

恋仲になるのですが、

ちょうど太平洋戦争中。

 

展覧会のためにソウルに向かったジュンソプさんは、

戦況悪化のせいで日本に戻れなくなります。

すると方子さん、朝鮮半島に渡って結婚。

1945年、日本が負ける寸前のことです。

 

方子さんは結婚により、イ・ナムドク(李南徳)という朝鮮名も持つようになりました。

子どもも生まれ、しばらくは向こうで幸せだったのですが、

1950年、今度は朝鮮戦争が発生。

 

避難民生活を強いられた方子さん、

子どもたちが体調を崩したこともあって、日本の実家に身を寄せます。

けれどもジュンソプさんは同行できない。

日本と韓国の間に、まだ正式な国交がなかったためです。

 

その後は、1953年に一週間だけジュンソプさんが日本に滞在したのを除けば

1956年の死別まで、ずっと離ればなれでした。

夫婦をつないだのは、200通以上と言われる手紙だけ。

 

けれども方子さんは再婚もせず、子どもたちを育て上げます。

90歳を過ぎて、今なお元気ですが、

左手にはジュンソプさんとの結婚指輪がはめられているのです。

 

国境も歴史も越えて、生き続けた愛のかたちを

酒井さんのカメラは静かに、しかし着実に追ってゆきます。

過剰な説明やメッセージが省かれているぶん、

情感が盛り上がり、観る者の胸に迫る。

 

対立や反発に目が行きやすい日韓関係ですが、

こんな触れ合いもあったのだと再認識させられます。

 

音楽は「台湾人生」につづいて廣木光一さん。

エンド・クレジットに流れる曲など、

「SOUNDTRAX interzone」が続いていたら、絶対エアプレイしましたね。

 

お勧めです。

ぜひどうぞ!

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ではでは♬(^_^)♬