ご存じの方も多いと思いますが

政治屋は次の選挙のことを考え、政治家は次の世代のことを考える

という名言があります。

 

ジェームズ・フリーマン・クラークという

アメリカの神学者・著述家の言葉。

 

もとの英語では

選挙が ELECTION,

世代が GENERATION

韻を踏むようになっています。

 

しかるにこの言葉、

次のように言い直すこともできるのではないでしょうか?

 

政治屋は政局(を自分に有利にすること。以下同じ)を考え、

政治家は経世済民(の達成。以下同じ)を考える。

 

経世済民の達成には、

たいがい十年単位の時間がかかりますからね。

 

断っておきますが、これは

政局と経世済民は別物である

ことを必ずしも意味しません。

 

経世済民を達成するにも

政治的なリーダーシップが不可欠。

他方、リーダーシップを発揮するには

しっかりした権力基盤が必要です。

 

そして政局を無視して

しっかりした権力基盤が構築できるはずはありません。

その意味で

政局は経世済民の必要条件と言えるでしょう。

 

政局を自分に有利にすることなくして

経世済民の達成はない、ということです。

 

しかしこれは

政局が経世済民の十分条件であることを意味しない。

 

政局を自分に有利にすることさえできれば

経世済民は達成できる、ということにはならないのです。

 

さて。

 

政府・与党は28日に招集予定となっている

臨時国会の冒頭で

衆院を解散する方向で調整に入りました。

野党の代表質問は省略、

つまりは受け付けないのだそうです。

関連記事はこちら。

 

それどころか総理の所信表明演説までカットする模様。

関連記事はこちら。

 

所信を表明せず、何について信を問うのか?

・・・なんて正論ヤボなことは申しません。

 

衆院解散を行う権利は内閣が持つものと見なされます。

同時に総理は国務大臣を罷免する権利を持っているので、

これは総理に解散権があることを意味する。

解散は総理の専権事項と言われるゆえんであります。

 

したがって、ここで衆院を解散すること自体は

総理の自由であり、

批判される筋合いのものではありません。

 

のみならず、

政局の観点に立つかぎり

今、解散するのは賢明な判断である可能性が高い。

 

6月から7月にかけて

内閣支持率は急落、

都議選でも自民党が史上最大の惨敗を喫したわけですが、

その後、北朝鮮情勢の緊迫もあって支持率は回復基調(※)。

 

(※)メディアの発表を信じれば、の話です。

メディアは信用できないと思っている方々は、

これも疑ってかかったほうがいいでしょう。

 

↓)「メディアは信用できない」の真の意味は、本書265ページをどうぞ。

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おまけに、ただでさえダメな民進党が

山尾志桜里議員の不倫疑惑(+離党騒動)もあって

いよいよ自爆崩壊気味。

 

ここで解散に打って出れば

小池新党の機先を制することもでき、

上手くいけば勝利、

悪くても議席の減少を最低限にできる、というわけです。

 

平野貞夫・元民主党参院議員も次のようにコメント。

「小池新党は早期の総選挙になると

民進党離党組が何人か参加するくらいで、

新人候補の擁立は間に合わないでしょう。

野党も小池新党も有権者に自民党に代わる選択肢を示すことができるような状況にはない。

その結果、棄権票が増えて投票率が下がり、

自公は得票数を大きく減らしながら議席数はほぼ現状維持で

憲法改正に必要な3分の2の勢力を確保してしまうという状況が十分予想されます」

関連記事はこちら。

 

いつ解散するの? 今でしょう!

・・・ってなもんじゃないですか。

 

ただし問題は、

これが経世済民の達成に寄与するかどうか。

 

経世済民が進められているかどうかは

以下の三点を満たす政策が追求されているかどうかで計れます。

 

1)経済の安定的拡大・発展

2)主体的・積極的な安全保障政策の追求

 (災害対策、および食糧・エネルギーの供給確保を含む)

3)健全なナショナリズムの定着

 

安倍内閣が上記の基準に照らして、見るべき成果をあげていないのは

保守派の中にこれを指摘されたとたん感情的になる人がいることによって

雄弁に証明されます。

 

(↓)そういう心理状態の構造についてはこちらを。

『対論 「炎上」日本のメカニズム』帯付き書影

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ならば、きたる総選挙で自民党が勝つことは

経世済民の達成をうながすと期待しうるか?

 

これはむろん、公約、ないし争点として何を打ち出すかと

密接に関連していますが、

以下の記事をどうぞ。

 

安倍首相は今回の解散を「人づくり解散」と位置づけ、

教育や子育て支援に対する税金の使い道を拡大、

充実させることを公約の柱とする方針を固めた。

 

今回の解散には与党内からも「大義がない」との批判が出ている。

このため、安倍首相は高齢者中心の社会保障から

子どもや若者への支援も拡充させると打ち出すことで、

国民の理解と支持を得たい考え。

 

具体的には、再来年10月に消費税率を10%に引き上げて、

増えた税収を国の借金返済だけでなく幼児教育の無償化など

教育、子育て支援にも充てるとしている。

記事全文(動画つき)はこちら。

 

政局判断に基づく解散なのですから

大義がないのは当たり前と言えば当たり前なのですが

それは脇に置きましょう。

 

そんなことを言い出したら

「結果本位の仕事人内閣」なるものを

8月につくったばかりじゃないですか。

 

結果本位を標榜しながら、結果ゼロで選挙に入ることが

すべてを語っているのですが、

これも脇に置きましょう。

自民党の公約は、経世済民の実現に貢献するか?

 

消費税率引き上げが公約の柱となる以上、

上記三条件のうち(1)はアウトです。

プライマリーバランス黒字化への執着も、

2020年度に黒字化という目標を先送りするだけで

結局、捨てないようですからね。

 

他方、北朝鮮情勢の緊迫にもかかわらず、

敵基地攻撃能力の検討や

核武装の可能性などは掲げられない模様。

プライマリーバランス黒字化にこだわるかぎり、シェルター整備など論外でしょう。

したがって(2)もアウト。

 

憲法9条に自衛隊を明記する改憲案を公約に盛り込む姿勢が見られるのが

(3)につながると言えば言えますが、

これについては、自民党内に慎重論が根強いとか。

しかもこの改憲案、9条を実質的に肯定するものとも受け取れます。

関連記事はこちら。

 

要するに今回の解散、

与党が勝ったとしても

政局には貢献するが経世済民には貢献しないと言わざるをえない。

ただしこれは

与党が負けたら経世済民の達成がうながされることを意味しません。

 

野党も野党で

上記の三点を満たすような政策は掲げていないからです。

あいもかわらず

加計学園問題への対応にこだわるぐらいですからね。

ついでに民進党の前原代表も、消費増税には賛成です。

 

すなわちこれは

どう転んでもロクなことにならない解散なんですな(^◇^;)。

 

はたせるかな、三橋貴明さんはブログで

きたる総選挙を「『希望なき選択』の選挙」と形容。

記事はこちら。

 

平松禎史さんもブログで

「増税解散・絶望選挙」とバッサリ。

記事はこちら。

 

藤井聡さん

消費増税は止められないという前提で、

財政拡大でそれを(できるだけ)埋め合わせようという主張を

展開するにいたりました。

記事はこちら。

 

ただしプライマリーバランス黒字化へのこだわりがあるとき、

財政拡大がそもそも望み薄であることは、

藤井さんも認めています。

 

で、結論がどうなるかというと・・・

 

フランスの目を覆うばかりの惨状は(中略)

軽率で無知な政策を取ったら最後、

物事がここまでひどくなるという

悲しくも貴重な教訓なのだ。

──エドマンド・バーク

 

フランス革命の省察

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人づくりが頭につこうがつくまいが、

やはりわが国では左翼革命が進行中なのでしょう。

ではでは♬(^_^)♬