2015年4月、

「セシウムと少女」という映画が公開されました。

 

この作品、

昨年3月14日のブログでも紹介しましたが

ふゅーじょんぷろだくとという会社を主宰する

才谷遼さんの初監督作品。

 

才谷さん、

「アート・アニメーションのちいさな学校」という

アニメ専門学校も設立しており、

「セシウムと少女」も

実写とアニメが融合された内容になっています。

 

さて。

 

題名にセシウムという言葉があることが示すとおり

これは2011年に起きた

福島第一原発の事故を大きなモチーフにしています。

 

そのかぎりにおいては、いわゆる「反原発もの」。

 

ただし、だからといって

左翼・リベラル系の作品と決めつけるのは早い。

 

パンフレットに掲載されている作品の企画書には

こう書かれているのです。

 

これは17歳の少女の成長譚と冒険譚であり、

同時に東京という大都市の都市論であり、

近代日本論でもある。

 

近代論/近代の到達点としての福島原発事故。

果たして近代は失敗したのか。

戦前と戦後は貫通しているのか。

 

残ってきた日本的な(いい)モノ(考え方もふくめて)、

そして継承すべきもの。

(カッコは原文)

 

近代にたいする懐疑。

戦前と戦後の連続性をめぐる問いかけ。

そして、

日本的ないいモノや考え方を

どう継承するのかという問題意識。

 

これらは保守(主義)の発想とも明らかに通底しています。

 

だいたい「セシウムと少女」、

いわゆる社会派ドラマではありません。

 

原発事故の影響で

セシウムまじりの雨が降った東京を舞台に

ちょっと変わり者だが元気のいい少女・ミミちゃんが、

雷神、風神などの日本古来の神々と出会い、

時空を超えて

自分自身のアイデンティティと

日本という国のあり方を見直そうとするというファンタジーです。

 

企画書をふたたび引用すれば

全ての問い、疑問、否定ではなく肯定で答えていく

(これを彼女と神様連中がみつけることができるか)

の旅の話でもある

という次第。

 

いかに「反原発」のメッセージがあろうと

ここまでくると

ほとんど保守系の映画か? という感じではありませんか。

 

だいたい『愛国のパラドックス』のサブタイトルではありませんが

「右か左か」の時代なんて

今や終わっているんですからね。

 

『愛国のパラドックス』カバー帯最終

電子版もご用意しています。

 

ミミちゃんを演じたのは、

これが映画初主演となる白波瀬海来(しらはせ・かいら)さん。

 

cast01

 

フレッシュでキュート、なかなかの好演です。

 

こんなミミちゃんが

日本古来の神々と

自国のアイデンティティを探求するのですから

つまりはこれも

戦後日本(人)を少女に象徴させた映画。

 

いずれ「表現者」でも

ちゃんと論じるつもりですが・・・

 

じつは「セシウムと少女」、

日本国内では「セシウムというタイトルと素材でかなり敬遠された」

(製作サイドみずからの発言!)とのことですが

海外の映画祭では好評のようで、

25の正式招待、

20のノミネート、

10の受賞を果たしています。

 

これを受けて、

阿佐ヶ谷のミニシアター「ユジク阿佐ヶ谷」での凱旋上映が決定!

6月18日から7月29日まで、

連日10:30からの一回上映となります。

 

ただし7月9日と10日だけは

10:30ではなく

20:50からの一回上映ですのでご注意ください。

 

ちなみに会場で販売されているパンフレット

(昨年の公開には間に合わず、

今回の凱旋上映に際してやっと完成したもの!)には

私も解説文を寄稿しています。

 

題して

「3・11」は「3・10」の翌日だ〜『セシウムと少女』を多面的に楽しむために。

 

3・10とはもちろん、

1945年の東京大空襲のこと。

 

才谷監督も、両者の連続性が作品のテーマだと認めていますので

興味の湧いた方はぜひどうぞ。

なお映画の公式サイトはこちらです。

 

ではでは♬(^_^)♬

 

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