どうも最近は、

ポップカルチャーに大きな足跡を残した方が次々と亡くなられています。

 

「機動戦士ガンダム」の音楽を担当された松山祐士さん。

現代ゾンビ映画の生みの親ジョージ・A・ロメロ監督。

アメリカの劇作家・俳優サム・シェパードさん。

フランスの大女優ジャンヌ・モローさん。

 

そしてさる7日には、

この方が亡くなりました。

中島春雄さん。

 

1954年の「ゴジラ」第一作で、

ゴジラのスーツアクター(着ぐるみの中に入る役者)となり、

その後、ゴジラを12回も演じた人です。

享年88歳。

ご冥福をお祈りいたします。

 

「ゴジラ」の主演は

宝田明さんとするのが普通ですが(ちなみに初主演作品)、

ご本人の回想によれば

スタッフにたいして

「主役をやらせてもらう宝田明でございます」

と挨拶したところ、

「バカヤロー、お前が主役じゃない。主役はゴジラだ」

と言われたそうなので、

中島さんこそ「ゴジラ」の真の主演俳優だったとすべきかも知れません(※)。

 

(※)個人的には、マッドサイエンティストの芹沢博士を演じた

平田昭彦さんも捨てがたいのですが、

これは脇に置くことにします。

 

それはともかく。

 

中島さんは海軍の予科練出身。

特攻隊に配属され、

出撃を待っているところで敗戦を迎えたそうです。

 

その後、占領軍の運転手を経て

1950年、21歳で東宝に入社。

いわゆる大部屋俳優でしたが

「ゴジラ」で映画史にその名を残すこととなりました。

 

けれどもゴジラのスーツアクターが

占領軍の運転手をしていた特攻隊帰り

というのは

じつに興味深いものがあります。

 

『夢見られた近代』(2008年)に収録された

「ゴジラの夢見た本土決戦」

「怪獣王かく去れり」

でも論じたように、

ゴジラには二つの矛盾した象徴性がある。

 

つまりそれは

1)太平洋戦争中の米軍

を象徴しつつ

2)敗戦後の日本の変節に怒る戦没者

の象徴とも解釈できるのです。

 

夢見られた近代

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となると、ゴジラを撃退しようとするとき

われわれは本当のところ、何を撃退しようとしているのか?

 

アメリカか、それとも戦前の日本か?

 

ついでに。

わが国に上陸したゴジラが都市を破壊する場面こそ

ゴジラ映画不可欠の見せ場。

 

自衛隊の活躍によって、上陸する前に撃退されました・・・

というんじゃ話になりませんからね。

 

裏を返せば、ゴジラ映画を観るとき

われわれは戦後の日本が破壊されることを期待していることになる。

 

その意味でゴジラ映画には

1)戦前

2)戦後

3)アメリカ

どれを否定していいか分からないという

戦後日本のジレンマがみごとに表れているのであります。

 

昨年の「シン・ゴジラ」も、

あいかわらずこの点を処理できないままだったことは

ご覧になった方ならお分かりでしょう。

 

これだけ混乱していれば、

炎上だって起こるというもの。

そう、戦後日本は炎上の起こりやすい条件がそろった国なのです。

 

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だとしても、この三すくみ状態は何に行き着くのか?

 

・・・これについても、ゴジラはみごとな回答を出しました。

すなわち

まずアメリカに買われ、

そのうえで中国に飲み込まれるのです。

 

6月20日の記事

「チャン・ツィイー、ゴジラを手なずける」でも書いたとおり

次のハリウッド版ゴジラは

中国資本によって青島で撮影されるんですからね。

 

だ・か・ら、

『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!

 

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中島さんの逝去は海外でも報じられ、

世界のゴジラファンが追悼しています。

 

ロイターの死亡記事です。

英紙「ガーディアン」の死亡記事。

追悼ツイートその1(画像入り。以下同じ)。

追悼ツイートその2。

追悼ツイートその3。

 

ガーディアン紙によれば、中島さんは2014年、

私がオリジナルのゴジラなんだ。

本物ということだよ。

私のゴジラが一番だったと思っている。 

とコメントされたとのこと。

 

ゴジラのアメリカ化や中国化が進む現在、

中島さんのご逝去は

ゴジラが日本の怪獣だった時代の終わりを告げるものなのかも知れません。

 

(↓)バークいわく、「(革命で軍が暴走すれば)フランスは巨大怪獣に襲われたも同然になる」。

フランス革命の省察

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