5月26日の記事

「ツイン・ピークスの復活(+藤井聡さんとの新刊、予約受付開始!)」

でも触れましたが、

1992年につくられた映画版「ツイン・ピークス」には

もともと「FIRE WALK WITH ME」というサブタイトルがついていました。

 

これはテレビ版に登場した有名な台詞の一節。

台詞というより

呪文といったほうが適切でしょう。

 

THROUGH THE DARKNESS OF THE FUTURE PAST

THE MAGICIAN LONGS TO SEE.

ONE CHANTS OUT BETWEEN TWO WORLDS:

FIRE WALK WITH ME!

関連動画はこちら。

 

未来と化した過去の闇を

魔術師は見通さんと欲す。

二つの世界の狭間で唱えるのだ、

炎よ、われと共に歩め!

 

「ツイン・ピークス」の世界では

時間の流れが乱れており

過去と未来が奇妙に入れ替わったりします。

 

たとえば映画版では

テレビ版第一話にいたる出来事が描かれるのですが

テレビ版最終話の出来事について語る人物

ヒロインであるローラ・パーマーの夢に出てくるのです。

 

また劇中に登場する「ブラック・ロッジ」は

一種の異次元空間ですから

三行目のフレーズ「二つの世界の狭間」とは

現実世界と異次元の狭間

または

この世とあの世の狭間

ということでしょう。

 

しかるにこの呪文の内容、

『対論 「炎上」日本のメカニズム』の内容と

不思議にマッチしているのですよ。

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われわれの現実認識が

実相(=現実の真の姿か、それに近いもの)から

仮相(=現実の真の姿から乖離した虚構)へと変化することこそ

炎上が蔓延する条件だ

というのが

本のポイントの一つなのです。

 

裏を返せば

炎上が蔓延する社会においては

人は実相と仮相という二つの世界の狭間にいることになる。

 

ついでに「日本を取り戻す」という

本当のところ何を意味するのかよく分からないフレーズが

未来への突破口を開くかのごとく謳われている現状は

「未来となった過去の闇」

そのものではないか?

 

となると問題のフレーズは

たとえば、こう読み替えることもできます。

 

進歩主義と化した復古志向の闇を

魔術師は見通さんと欲す。

仮相と実相の狭間で唱えるのだ、

炎よ、われと共に歩め!

 

あるいは、こう読み替えてもいいでしょう。

 

左翼と化した保守の闇を

魔術師は見通さんと欲す。

グローバリズムとナショナリズムの狭間で唱えるのだ、

炎よ、われと共に歩め!

 

「炎よ、われと共に歩め」

などというと、

まるで炎上を煽っているかのようですが

必ずしもそうではありません。

 

より正確には

炎上にはじつのところ肯定的・建設的なものもあるものの

今の日本では否定的・破壊的なものが目立っている

というのが

本書の出発点なのです。

 

つまりは発展や繁栄のために活用されるべきエネルギーが

売国や亡国のために使われている。

 

だ・か・ら、

『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!

 

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ちなみに「ツイン・ピークス」が

アメリカの魂は善か悪か

という点をめぐる寓話と解釈できるのは

前回の記事でも述べたとおり。

 

しかるに「エンターテインメント・ウィークリー」は5月26日、

デヴィッド・リンチへのインタビューを配信しましたが、

FBI捜査官デイル・クーパーが善と悪に分裂し、

悪の分身のほうが現実世界を跳梁している点について

ずばり、こう聞いているんですね。

 

これはアメリカの精神状態についての言及なのですか?

今のアメリカは残酷で冷たい世界になっているとも取れますが?

 

リンチいわく。

 

「ツイン・ピークス」をつくるとき、

「今の世の中はこんなふうだから、内容に反映させよう」

といったふうに考えたことはないよ。

たんにそういうアイディアを思いついたんだ。

ただし、今の発言をひっくり返すようだが

世界の現状を見て、アイディアがひらめくことも多い。

時代のあり方とまるで無関係に出てくるアイディアもあるし、

時代のあり方に触発されたアイディアもあるということだ。

だから、時代の影響は受けているんだよ。

原文こちら。

 

禅問答のようですが

これは「ツイン・ピークス」という作品そのものが

時代の影響を受けつつ

それを超えようとする形で

二つの世界の狭間に位置することを

意味しているように思います。

 

というわけで、ご一緒にどうぞ!

FIRE WALK WITH ME!

炎よ、われと共に歩め!!

 

ではでは♬(^_^)♬