昨日の記事
「安倍総理の悔やみごと、または現実が見えない保守」では
総理が今になって
「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。
上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」と、
半ば悔やむように語っているという話を取り上げました。
・・・なんか、今の今まで
誰もそのことについて進言してくれなかったかのごとくですね。
ただし、仮にそうだったとしても、
政治は結果がすべて(©安倍総理)である以上、
政府のトップとしての責任はまぬかれません。
総理自身、昨年の米議会演説「希望の同盟へ」ではこう語りましたからね。
History is harsh. What is done can not be undone.
(歴史は厳しい。起きてしまったことは取り消せない)
さよう、
(税率を)上げなければとおっしゃいますが
国の舵取りにタラレバはないのです。
が、それは脇に置きましょう。
ならば、これから総理は何をすべきか?
昨日の記事では
まずは消費税を5%に戻す
(税率を上げたせいで税収が落ちた以上、8%据え置きは不可!)
ことを提案したわけですが、
おなじみ平松禎史さんは、
ご自身のブログ「Tempo rubato」で
財政出動による緊縮路線解消を提案しつつ
こう述べています。
しかし…
・・・考えてみましょう。
安倍政権の全体の政策や憲法観など
(要するに国家観のなさ)を見るにつけ、
小手先の修正なんかしないで
このままグダグダになって選挙で負けて、
ネジレて、決められない政治になったほうが、
今の日本にとってはなんぼか良い状況だと言えませんか?
現状維持を望んでるのではありません。
いま以上に悪くなるのを阻止するのです。
ここで思い出されるのが
「2001年宇宙の旅」などで知られる巨匠
スタンリー・キューブリック監督について
作家・脚本家のフレデリック・ラファエルが語ったコメント。
キューブリック監督と言えば
映画を1本つくるのに恐ろしく時間をかけた人。
つまりは決定を下すのも遅かったのですが
遺作となった「アイズ・ワイド・シャット」のシナリオを担当したラファエルは
打ち合わせの席における監督の態度についてこう述べました。
キューブリックは優柔不断に振る舞っていたわけではない。
「今は決定を下すべき時ではない」と判断していたのだ。
この二つはまったく違うことだ。
いわゆる「決められない政治」についても
同じことが言えないでしょうか?
わが国では普通、
これは「優柔不断な政治」という意味で
否定的に用いられます。
しかしですな、
何でもかんでも、とにかくさっさと決めればいい
というのは本当か。
ろくでもない決断をどんどん下す政治よりは
「今は決定を下すべき時ではない」と見極めて
慎重に振る舞う政治のほうが、ずっと賢明でしょう。
というか、それこそが保守主義の本質。
エドマンド・バークが「新訳 フランス革命の省察」で喝破したとおり、
重大な決断を迫られたときほど、
臆病なぐらい慎重であるほうが良いのです。
それどころか、
たんに優柔不断なせいで決断が下せない政治すら
ろくでもない決断をどんどん下す政治よりはマシでしょう。
現在の政治が
ろくでもない決断をどんどん下す状態に陥っているとすれば、
ひとまず必要なのは
賢明さゆえか、優柔不断さゆえかはともかく
決断を容易に下さない(ないし下せない)状態にすること。
これは間違いなくステップアップなのです!
安倍総理の名言ではありませんが
History is harsh. What is done can not be undone なんですからね。
ちなみに「希望の同盟へ」演説については、
で詳しく論じました。
あの演説、
いわゆる保守派の間では概して好評でしたが
じつはかなりとんでもない内容なのですよ。
ではでは♬(^_^)♬
9 comments
妄想を崛起 says:
3月 1, 2016
ある社長さんは「批判はもういい!ではどうする!」というギャグが鉄板のようですが、この「どうする!」という思考、「なにかをやらなければならない!」という熱意に満ち満ちている訳でありますが、日本を保守する「保守派」として最善の選択が「何もしない」、「何もできないようにする」という選択であるという可能性についてですら議論できない人が討論番組の司会者とか本当に残念です。
草莽崛起 says:
3月 1, 2016
佐藤健志氏のブログや言論の威を借りて、こんなところでコメントしていないで、実際に渋谷の若草ビルに行って、何もしないことが最善策かもしれないということを教え諭してあげてはどうですか?
本当に日本のことを思っているのならば。
本当に残念だと思っているならば。
言志vol.5を実際読んでおかしいと思う言説があるならば、是非ともアンケートハガキでも出して指摘してやってください。
少数派のいわゆる保守派、一般にコンサバティブと思われている人々や組織や団体の中でさらに少数派であるチャンネル桜や水島氏へのご教授もご立派ですが、もっと安倍政権に強い影響力を持ち、今も支持していて近い存在である保守派に対するご指摘ご教授こそ重要では?
もうすでに行動済みであるのならば、聞き流してください。
妄想を崛起 says:
3月 1, 2016
以前、その旨チャンネル桜のYouTubeの動画にコメントしたら削除されてしまいました。これまた残念な事に聞く耳をもっていないようです。だから佐藤さんのブログにコメントしているというわけではありませんが。
ノック says:
3月 1, 2016
ブログの更新毎回楽しみにしています。
今回の佐藤先生の記事を読んでいて思い出したのが以下。
東田剛先生の言論の中で、自分が特に気に入っている一説を引用させていただきます。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2012/07/25/korekiyo/
まだ、法案が国会で審議されていない段階から、
「ぶれない」「決める」ということは、
国会での審議という議会制民主政治において
最も重要な政治行為を否定しているに等しいのです。
もし、国会での審議の過程で、野党からの批判によって、
消費税を増税することが間違いだとわかったら、
法案を撤回すべきでしょう。
つまり、消費税増税を決めてはダメだし、
増税の方針からぶれるべきなのです。
国会での審議がどうであれ、
消費税増税を決めているなら、
国会など要りません。
単に、消費税増税という決めたことをぶれずに執行する
官僚組織さえあればいい。
それこそ、官主導ではありませんか。
政治は、決めることが大事なのではありません。
正しいことを決めるのが大事なのです。
そして、何が正しいのかを見つけるために、
議論をするのです。
ほぉ、東田先生は2012年の段階でことの本質を見抜いていた模様。
感服せざるを得ません。
しかしここに一つ付け加えるならば、たとえ今ネジレ国会になったところで
東田先生がおっしゃるような建設的な議論がなされるとは思えません。
その理由はほら、政策よりも政局。
https://kenjisato1966.com/政策と政局/
ネジレになったとしても政局争いだけが延々と続くのでしょう。。。
Guy Fawkes says:
3月 1, 2016
佐藤先生の新著、昨日購入させて頂きました。
読了後、必ず感想を送らせて頂きます。
それにしても、文春新書から刊行されている脳科学者の中野信子さんと評論家の適菜収さん、
そして東田…ではなかった(苦笑)中野剛志さんの共著『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』で
適菜さんが手厳しく安倍総理を批判しておられる中で中野剛志さんの
「自民党を牛耳っていた経世会的リベラルが主流だった中にあって、
四面楚歌で戦ってきた安倍さんの事もわからなくはない」とやんわりと擁護されているのを読むと
「西部先生も佐藤先生も表現者グループの方々はお優しいなぁ…」と思う今日此の頃。
ただ、ねじれになったところで野党は民維合併…戦後レジーム脱却をストレートに主張した
次世代の党は消滅寸前…嗚呼!憂国のパラドックス。
ベッラ says:
3月 6, 2016
昨日夕方にアマゾンより本が届き、さっそく拝読しております。この本を読むことはスぺランツァ(希望)です。自民党でとんでもない移民政策をすすめるようで、これでは何もかもが「詐欺」です。
左派より怖い。
このエントリ全部転載させてください。コメント欄にリンクを貼りますので。
SATOKENJI says:
3月 6, 2016
承諾します。
ただし『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する」発売記念キャンペーンに関する箇所は、すでに終了していますのでカットして下さい。
ちなみに「この本を読むことはスぺランツァ(希望)です。」の箇所、どこかで紹介させていただくかも知れません。
よろしくお願いします。
ベッラ says:
3月 6, 2016
ありがとうございます。リンクを貼ります。
http://blog.goo.ne.jp/bellavoce3594/e/3d1e5cb1df9bb068aa545ac552513542
ご指摘のところ確認して仰るようにいたします。
ベッラ says:
3月 6, 2016
スぺランツァはイタリア語です。スペイン語と似ていますが・・・
ありがとうございます。とても嬉しい、感激しました♪