『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』、
8月末に無事、校了となりました。
発売は9月15日ですから、
関係者全員、最後の最後まで頑張ったのです。
さすがにバテましたが
素晴らしい仕上がりになったと思いますよ。
刊行まであと二週間弱、乞うご期待であります。
さらに10月19日(金)には
恒例のトークライブ
勝手にしやがれ! 天下国家の第4回が
いつもの赤坂CHANCE シアターで開催決定!!
4月20日に開催された前回は
入水か、日本沈没か?
というタイトルでしたが、
今回はこれです。
HEY! SAY NOTHING!!
〜平和主義と対米従属の爽快な末路!
チラシ画像こちら。
30年にわたって
良くて停滞、悪ければ衰退というお粗末を繰り返し
今や終わろうとしている平成を
しっかり総括しようという話。
平成元年(1989年)、
ジャニーズのアイドルグループ「光 GENJI」は
元号にちなんで
『HEY! SAY!』というタイトルのアルバムを出しましたが
この30年を振り返ってみれば
HEY! SAY NOTHING!!(おい、何も言うな)こそ
多くの人々の実感でありましょう。
おい、もう何も言うな。
平成はダメだったんだ。
司会はもちろん sayaさん。
前回のトークライブをきっかけに
「激論! サンデーCROSS」進出を果たした彼女ですが
今回も何か起きるかな?
たとえば「表現者クライテリオン」進出とか。
右傾化の度合いを強める sayaさん。
編集長、第1回トークライブのスペシャルゲストだったもんなあ。
ところで、アルバム「MIRACLE COMPLETE」はまだなのか?
当日は18:00開場、19:00開演。
チケットは3500円(ワンドリンク付き)となります。
みなさん、ぜひお越し下さい!!
さて。
新しい本のサブタイトルは
対米従属の爽快な末路。
なんで対米従属の末路が爽快なの?
・・・という点については
刊行されてのお楽しみとなりますが
先週、こんな記事が出ました。
トランプ大統領「真珠湾忘れぬ」と安倍首相に不満=7月に日朝高官が極秘接触
(時事通信、8月29日配信)
8月28日、アメリカの新聞「ワシントン・ポスト」が
6月の日米首脳会談でトランプ大統領が「私は真珠湾を忘れない」と述べ、
対日貿易赤字問題などをめぐり安倍晋三首相に強い不満を表明した
と報じたというのです。
いわく。
トランプ氏は安倍首相に対し、2国間通商協定の交渉を促したが、首相は断った。
トランプ氏は牛肉と自動車の市場開放も求めた。
貿易や対北朝鮮政策をめぐり日米の立場の違いが鮮明になる中、
トランプ氏の不満が詳細に伝えられたのは初めて。
共同の記事が出典としたワシントン・ポストの記事を見ると
さらにいろいろ面白いことが書いてあります。
たとえば・・・
・首脳会談のあと、安倍総理は不満を隠せなかった。
・安倍総理がトランプの機嫌を取ってきたこともあって、トランプは長らく総理に好意的だったが、
ここに来て意見対立が目立ち始めている。
・米朝会談をめぐり、総理は米韓合同軍事演習の継続や、
朝鮮戦争終結宣言より非核化を優先することを要望したものの、
トランプはこれをガン無視した。
・アメリカは貿易不均衡にたいして、相手が同盟国であろうと強硬な姿勢で臨む気でいる。
・ある日本の外交官は、真珠湾発言について説明不能とコメントした。
・日本政府関係者は、米軍の存在なしに日本の防衛が不可能なのは
「否応なしの厳然たる事実」と語っている。
・総理とトランプの仲は、今もそう悪いわけではない。
ただし今や総理は、拉致問題、関税問題、
あるいはイランからの石油輸入をめぐる制裁などについて
アメリカにいろいろ頼み事をしなければならない立場にある。
・そのためトランプは、
「頼み事をするなら、経済でもっと譲歩するのが筋だろう。
なのに安倍はオレの要求を受け入れずけしからん」と思っているようだ。
私なりに要約すれば以下の通り。
1)総理がヨイショに務めたこともあって、
ジャイアン性格のトランプは「心の友よ、兄弟よ」モードになっていた。
2)しかしそこには
「自分がボスで、安倍総理は子分なのだから
総理はオレの言うことを聞く」という暗黙の前提があった。
3)ところが北朝鮮への対応や貿易問題などで
総理がトランプの意見に同調しなかったため、
「なんだこいつ、力関係ってものが分かっているのか?」モードが入り出している。
となれば、真珠湾発言の真意なんて明快じゃないですか。
アメリカに楯突くと、痛い目にあうぞ!
これですよ、これ。
昨年11月に来日したときも、トランプは横田基地でそう言っているんですから。
その意味で、真珠湾発言を説明不能などと言った
某外交官のコメントには情けないものがある。
言っちゃ何ですがね、
意味が分からないはずなんかないんですよ。
しかし
「日米同盟は絶対であらねばならぬ」
つまり
「日本はアメリカに添い遂げねばならぬ」
という価値観が強すぎて
それを口にすることができないのに違いない。
毎度おなじみ、認知的不協和に基づく否認というやつであります。
けれども泣けるのは
否認に陥っているのが、どうやらこの外交官だけではないこと。
どうぞ。
政府「真珠湾」発言否定に躍起=揺らぐ日米蜜月
(時事ドットコム、8月29日配信)
米紙ワシントン・ポストの報道を受け、
日本政府は事実関係の否定に躍起になっている。
「指摘のような事実はない」。菅義偉官房長官は29日の記者会見で、
トランプ氏から批判を受けたのは事実か問われると、きっぱりと否定した。
トランプ氏との関係を売りの一つにしてきた首相は、
9月20日投開票の自民党総裁選に向けた地方行脚でも
「日米関係はかつてないほど強固」と繰り返している。
首相の訴えの信ぴょう性が揺らぐ中、
政府高官は「大統領が日本に不満なんてあるわけがない」と打ち消しに走っているが、
日米関係が総裁選の主要な論点になるのは確実だ。
ところが菅義偉官房長官の発言は
記事の中で実質的に否定されている。
というのも
日米首脳会談後の共同記者会見で
トランプは対日貿易赤字にあれこれ不満を表明したものの
総理はそれに一切触れず
「大統領とは北朝鮮問題について多く話した、日米は100%共にある」と説いた
なる旨が書かれているのですよ!
真珠湾発言はあったに決まっていると言わんばかりじゃないですか。
つづく政府高官の発言にいたっては、いよいよもって情けない。
いかなる国家関係においても
相手国にたいして不満が皆無なんてことがあるんですかね?
しかるに日本政府は
安全保障を依存しているせいで
アメリカに強く文句を言われたら逆らえない。
ただし、それでは面目丸つぶれだから
不満なんてあるわけがないという
お花畑的な言い訳を並べるしかなくなるのです。
「だから言っているだろうが、平和をカネで買おうとする国は滅びるって」(※)個人の感想です。
だいたい、トランプが真珠湾を忘れていなかったら何なんですかね?
ご存じのとおり、
あの攻撃ではこちらが向こうを痛い目にあわせたのですぞ。
真珠湾を忘れていない?
それは良かった。
私もあのことは忘れていない。
日本人は平和を愛する国民だし、
忍耐強くもあるが、
いざとなれば、あの程度のことはできるのだよ。
平和のためならいつでも戦う用意のあるのが、真の平和主義者だからね。
こんな返事を、
にこやかな微笑とともにしてみせてこそ
信頼に足る指導者というものではないでしょうか。
外交とは要するに、紳士的にタンカを切る技術なのですから。
しかしもちろん、そういう話にはならない。
そしてこれは、安倍総理の責任とは言えません。
敗戦以来、わが国がたどってきた経路をシビアに振り返るなら
そんなタンカを切ることなど、誰が総理でも不可能なのは明らかだからです。
が、だからといって
真珠湾発言が説明できないとか、
トランプが日本に不満を持っているわけがないとか、
認知的不協和丸出しの発言をしてしまうのはいかがなものか。
アメリカに逆らうなんて、
恐ろしくて想像するのもイヤ!
そう叫んでいるようなものですよ、ハッキリ言って。
戦後日本、とくに「保守」と呼ばれる勢力は
要するにアメリカを旦那と慕う現地妻である
というのが
『平和主義は貧困への道』の重要なポイントのひとつですが
真珠湾発言(報道)をめぐる政府関係者の反応は
期せずしてこの点を完全に裏付けたと言えるでしょう。
え?
そんな対米従属の何が爽快なのかって?
それは本が出てのお楽しみさっ!!
あと二週間、ウォーミングアップも忘れずに!
真珠湾発言については、下のコメント欄にもあるように
トランプは真珠湾発言をすることはしたが、
それは日本批判を意図したものではなく、
むしろ「日本も戦前のように強気で行け」と激励したのだ
という解釈が出ています。
しかし遺憾ながら、この解釈は説得力に欠ける。
理由は以下の通り。
1)根拠とされているのが、FNN PRIMEのニュース映像におけるトランプの発言。
つまりカメラが入っている場、ということですが・・・
首脳会談の現場にカメラが入っていたなんてことがありうるか?!
内容が筒抜けになるだろうに!
いつからホワイトハウスは、そんなにセキュリティが甘くなったんだ!!
しかも映像では、ホワイトハウスの暖炉をバックに、
総理とトランプが2人で映っている。
ところが外務省によれば、会談はペンス副大統領と河野外相が同席する形で45分間、
さらにワーキングランチ形式で55分間行われたのです。
つまり問題の映像は、会談に関連したものではあっても、
会談自体を映したものではない。
会談の前か後に、メディア向けに用意されたツーショットの場を映したものでしょう。
わが国のニュースでよく紹介される「閣議」の映像だって
実際の閣議の場を映したものではありませんからね。
したがって。
映像の中で、トランプが日本の顔を立てる形で真珠湾を持ち出したとしても、
それは会談の席において、批判の意味をこめて持ち出さなかったことの
証明にはならないのです。
否、
首脳会談の様子をすべてカメラがとらえていたはずだという
普通に考えたらありえない前提に基づいて解釈が組み立てられている時点で
勘違いであることは明らかだと思いませんか?
(※)ちなみに問題の発言、通商問題をめぐる協議の冒頭で飛び出したそうです。
しかも・・・
2)政府関係者は発言そのものがなかったと主張している。
批判でなく激励だったとすれば、なぜそんな反応を見せるのでしょう?
安倍総理ご本人も、そのようなやりとりはなかったと語っています。
しかし FNN PRIMEの映像でも、
トランプは「私は真珠湾をおぼえている」とハッキリ言っているのですぞ。
それをなかったことにしたがるとは
ザッツ・認知的不協和ではありませんか。
つまりトランプは真珠湾発言を2回している可能性が高い。
カメラの前では、総理の顔を立てて肯定的に。
実際の会談では、総理をおどかすべく否定的に。
向こうにとって日本は現地妻。
外面(そとづら)と内面(うちづら)を使い分けるぐらいやるでしょうよ。
こう考えれば、すべてに筋が通ります。
では、そういうことで。
10 comments
tanza says:
9月 3, 2018
>トランプ大統領が「私は真珠湾を忘れない」
↓こういう記事もありますね。
■正確に報じたFNN PRIMEのニュース
https://ameblo.jp/tamaichi2/entry-12401722020.html
SATOKENJI says:
9月 3, 2018
これについては、記事末尾に加筆しましたのでどうぞ。
tanza says:
9月 4, 2018
>カメラの前では、総理の顔を立てて肯定的に。
肯定的に?
そうではなく、バカにしているのでは。
昔の日本人は、もっと戦っていただろうと。
しろくま says:
9月 3, 2018
佐藤さんの言うとうりだと思いますが。アメリカの言いなりで現地妻になりたがってるのは
戦後保守だけじゃないように思います。リベラルや左翼側の勢力も一緒だと思います。
例えばこの記事を報じた共同通信はアメリカ様が怒ってるぞ~というニュアンスが感じられるし
この記事にSNSで反応してアメリカは怒ってるぞ、安倍はアメリカを怒らせた、何て酷いんだとかアメリカは安倍を嫌ってる安倍政権はやっぱり駄目だと反応してるのはどっちかというとリベラル側や新自由主義者です。対米従属を願ってるのは戦後保守だけじゃなくて戦後左翼もリベラルも同根だと思ってます。
SATOKENJI says:
9月 3, 2018
>対米従属を願ってるのは戦後保守だけじゃなくて戦後左翼もリベラルも同根
これはまったく、ご指摘の通りです。
しかし私は左翼・リベラルを「現地妻」には含めません。
なぜか。
彼らについては、もっと的確な比喩が存在するからです!!
その比喩が何かについては、『平和主義は貧困への道』をどうぞ。
ただしヒントを出しておけば、やはり女性のイメージです。
ジョン・ダワーが大著『EMBRACING DEFEAT』(敗北を抱きしめて)で指摘したように、
戦後の日米関係は「男女関係」ですからね。
拓三 says:
9月 3, 2018
もし、現日本が女性だとしたら演歌同様、男が都合良く妄想で作り上げた女性像じゃネ ? まっ、左翼は違う男をちらつかして興味を惹き付け様としているかもしれませんがw 所詮女を知らんヘタレ男の妄想女。
しかしながら、日本が真の女性像に気づけば未来は明るいんやけどネ !
女は強いで ! 男は所詮、女に生かされてる生物や ! 男は女の奴隷 !
あれ ? もしや米国が女で日本が男 ? w
SATOKENJI says:
9月 3, 2018
>所詮女を知らんヘタレ男の妄想女。
いいところに気づかれました。
その通りです!
ただし問題は、この「ヘタレ男」こそ、
ほかならぬ戦後日本人だということ。
いかなる国民も、みずからの理想、ないし妄想に基づいて
国のイメージをつくりあげるのです。
「だから、戦後のジャップってのは!」(Ⓒ西部邁)
GUY FAWKES says:
9月 3, 2018
>あれ ? もしや米国が女で日本が男 ? w
拓三さんのこちらの指摘を聴くと沼正三の『家畜人ヤプー』を思い出しますね。
新著刊行にトークイベント開催とコメント欄も盛り上がっておりますので、私も個人的な意見を一つ。
思うに日本から見た戦後の日米関係が「粗野でマッチョな男(米国)とその妾(日本)」
ないしは「ブロンドヘアーの性悪美女と見せかけ武士のヘタレ○ンポ男」だとしたら
米国から見た日本とは「最後はキレた夫に謀殺される、大人しい妾の皮を被った横暴な悪妻」なのではないでしょうか?
だって、事実として日本は米国(夫)の庇護の下に着々と経済成長を成し遂げ、
自分らの国にある超高層ビルを買収したこともあった訳ですからね(現状日本の悲惨はさておき)
2年前、トランプ氏の「日本は安保にタダ乗りしている!」という発言への注目や支持も無関係ではない筈。
それに前述のヤプーと比べて向こう(欧米)には『猿の惑星』という露骨な作品があるんですよね(著者のブールはフランス人ですが)
なんだか単なる敗戦国と戦勝国のメンタリティ差異とは別な理由がある様に感じます。
やはり、明治維新からの近代化過程における神仏分離・廃仏毀釈や鹿鳴館で馬鹿踊り(©︎中野剛志)してきた中で
不都合なものを圧殺して好都合な物語に耽美する構図は130年間脈々と継承されているのでは?
その虚妄性に気づきもしない輩が保守を名乗ってるのですから、そりゃあお嗤い種ですよね…
SATOKENJI says:
9月 3, 2018
戦後日本とは、ヘタレ男(戦後日本人)が夢見た「強いオンナ」である
という解釈もできるでしょう。
しかしヘタレの夢なので、強そうに見えてもいざとなると弱い、というわけです。
玉田泰 says:
9月 24, 2018
思えば「平成」が発表されたとき、
「皆で(地べたに)平らかに成ろうね」と言われた気がしてゾッとしたものです。
「アメリカに逆らうなんて
恐ろしくて想像するのもイヤ!」
今や、「逆らう」と言う概念すら頭から抹消しようとしているのではないかと思います。