じつは私、

往年のSF映画ホラー映画

結構好きだったりします。

 

たいがい低予算なので

チープなことはチープですが

昨今の大作映画より

想像力や夢があったりするんですよ。

 

ちなみにこれらの作品について

よくB級映画という形容がなされるものの

厳密には正しくありません。

 

「B級映画」は1930年代、

アメリカの大手映画会社が

二本立て興行を展開することで

世界恐慌に苦しむ人々を映画館に集めようとしたときに生まれた言葉。

 

二本立てのうち

本命作品がA級映画、

添え物がB級映画と規定されたのです。

 

英語ではA(B)ピクチャー、

ないしA(B)プロダクションと呼ばれました。

 

同時にB級映画は

新人の役者やスタッフを育成する場、

あるいは

人気のなくなった役者の雇用保障の場

という役割も担います。

 

言い替えればB級映画とは

二本立て興行において、大作の添え物として同時上映される低予算映画

のことであり、

低予算映画全般を指すものではないのです。

 

かつては日本でも

二本立て興行がよく行われていましたが

その際、業界では

「Aプロ(ダクション)」

「Bプロ」という形で

この言葉が正しく用いられていた模様。

 

・・・それはともかく。

 

最近、その手の映画でスゴいものを見つけました。

1968年の松竹映画「昆虫大戦争」

 

何というか、B級っぽさ全開のタイトルですが

「吸血髑髏船」とかいう

さらにB級っぽい映画と同時上映されたようなので

じつはA級映画だった可能性大。

 

実際、社団法人日本映画輸出協会から

輸出映画産業振興金融措置として

制作費の助成まで受けています。

 

クールジャパンの先駆けだったわけでして、

今でもユーチューブでは

「ジェノサイド(大殺戮)」と改題された英語版が

アップされていたりするのですが・・・

 

いや、これはスゴいぞ!!

 

アメリカから日本に返還されたばかりの

亜南群島(ロケ地は八丈島とか)の沖合を

B52とされる爆撃機が飛んでいる。

 

いや、どう見てもB52とは思えないのですが

B52という設定になっているのです。

 

このB52、水爆を積んでベトナムに向かう途中だったものの

水爆を管理していた黒人兵士チャーリーが

機内に虫が入り込んでいたことをきっかけに錯乱する。

 

虫の羽音が戦場の砲火を思い出させたから・・・

らしいのですが

そんな連想、ありか?!

 

おまけにチャーリー、

どうも麻薬(英語版の台詞によればモルヒネ)をやっており

そのことは機内の他のクルーも承知していた様子。

で、水爆の管理担当ねえ・・・

 

それはともかく。

 

チャーリーを押さえつけようと機内が大騒ぎになっていると、

目の前に昆虫の大群が出現!

これによりB52はエンジンが火を噴いて爆発し、亜南群島沖合に墜落!!

ついでに錯乱したチャーリーが水爆の弾倉を開けたせいで

核兵器が行方不明!!!

 

・・・これが最初の3〜4分ぐらいですが

このすべては序の口。

 

亜南群島では

世にも毒性の強い昆虫が多々生息するとかで

東京の研究所から秋山譲治という青年が採集に派遣されている。

 

ところが譲治氏、

採集そっちのけで

アナベルという白人美女と情事にふけっていたりするんですな。

ジョージがジョージって、何かのシャレか?

 

しかしアナベル、

なんと正体は怪しい昆虫学者。

東側(つまりソ連)の手先となって

猛毒昆虫兵器を開発すべく、

亜南群島に来ていたのです!!

 

おまけにアナベルはユダヤ系で、

少女時代、ナチスの収容所で性的虐待を受けた過去がある。

そのせいで人間全体を憎んでいた彼女は

とりあえず東側の手先となってはいるものの

じつは東西両陣営がともに大嫌いで、

昆虫兵器で人類を滅ぼすのが本当の夢!!!

 

頭がクラクラしそうな展開ですが

真打ちが登場するのはこれから。

 

亜南群島の昆虫たちは

なぜか知りませんが集合意識を持っているのです。

そして核兵器をつくりつづけ、

地球環境を破壊する人間を滅ぼすべく

昆虫崛起体制に入っていたのです!!!!

 

劇中には東京から来た昆虫学者が

亜南群島の昆虫の毒液を自分に注射する場面がありますが

この学者、トリップ状態で

人間を非難・糾弾する昆虫たちの声を聞くのですぞ。

 

W(^_^)W\(^O^)/これが世界市場をめざす作品なんだって\(^O^)/W(^_^)W

 

・・・察しがつくとは思いますが

当時、SF・ホラー路線に手をつけていた松竹は

「昆虫大戦争」を最後に同路線から撤退。

 

監督の二本松嘉瑞(にほんまつ・かずい)さんも松竹を退社、

これが最後の作品となりました。

 

海外の紹介記事でも、こんな記述がなされています。

 

はじめに告白しておきたい。

私は「昆虫大戦争」の最後の十分間、狂ったように笑いまくった。

(中略)

とはいえ、ここまで明白に狂った映画にたいしては

笑うしかないと言えるだろう。

全然違った内容の映画、約8本分の筋立てが

脈絡もなくまざりあい、

からみあったあげく、

輝ける壊滅状態としか形容できないラストへとなだれ込んでゆくのだ。

原文こちら。

 

この紹介記事、

昨年の6月に出ているところがスゴいのですが

それによれば「昆虫大戦争」、

ごく最近まで

日本国外では見るのが非常に難しい

幻の作品だったとか。

輸出振興はどうしたんだ、輸出振興は!!

 

とはいえ、

「昆虫大戦争」に見られる収拾のつかなさ加減には

はからずも現代的なものを感じます。

 

破局をもたらす要因が多すぎて

何が何やら分からぬうちに

輝ける壊滅状態になだれこむ、

これぞ2010年代のいつわらざる現実ではないでしょうか?

 

だ・か・ら、

『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!

 

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ちなみに「昆虫大戦争」、

松竹からDVDが出ているうえ、

CINEMA-KAN レーベルから

「松竹カルト・サウンドトラック・シリーズ」としてCDが出ています。

関連ツイートはこちら。

 

聴いてみましたが

虫の羽音らしきサウンドも盛り込まれた

なかなかイケる音楽ですよ・・・

ではでは♬(^_^)♬