シンガポールへの道などいうと、
何やら太平洋戦争開戦直後のニュース映画みたいですが
その話ではありません。
じつは私、
適菜収さんの知遇を最近得ています。
今日もこのあと都内某所でお会いする予定。
なんと中野剛志さんも一緒でっせ。
v(^_^)v\(^O^)/豪華メンバーだろ、おい\(^O^)/v(^_^)v
これについては
本ブログでも追ってお伝えするとして
適菜さんから近著の
「安倍でもわかる政治思想入門」(KKベストセラーズ)
および
「安倍でもわかる保守思想入門」(同)
をお送りいただきました。
適菜さんの文章、
タッチはあくまで軽快ですが
芯はしっかり堅牢なもの。
その軽快かつ堅牢なノリで
総理の発言をバシバシ批判しています。
ただし適菜さん、
どちらの本の冒頭でも
安倍総理をバカにしたり、揶揄することが目的ではない
と明記しています。
現在のわが国が抱える問題をあぶり出す(「政治思想入門」)
または
われわれがどのような時代に生きているのかを示していく(「保守思想入門」)
ために、
総理の言動を取り上げるのだ、と。
たしかに現在のわが国の状況は
戦後70年の論理的帰結という性格を強く持っている。
安倍内閣の存在が
この性格を強化している点はあるとしても
安倍内閣でなければこうなっていない
とは言いがたいのです。
神が存在しないのなら、われわれは神を発明しなければならない
と喝破したのはヴォルテールですが
かりに安倍内閣が存在しなかったら
日本人は安倍内閣(と同じ役割を果たすもの)を発明したかも知れません(※)。
(※)ただしこれは、安倍内閣が神であることを意味するものではないので、念のため。
この点を裏付ける事例をひとつ。
2013年7月26日、総理はシンガポールで講演しました。
規制の大胆な改革の必要性を謳ってTPPを持ち上げ、
国境を越え、経済圏をまたいだ、
ダイナミックな、「競争」と「協調」による、
新しい付加価値の創造
なるものを説いた模様(「政治思想入門」165ページ)。
国境どころか経済圏まで
そんなに易々とまたげるのであれば
そもそもTPPで巨大な経済圏をつくりあげる必要もないのですが
まあ、それは脇に置きましょう。
ポイントは総理が、こう続けたこと。
シンガポールに追いつき、
できれば追い越したい。
真剣に、そう思っています。
なるほど、なるほど。
とはいえ、総理が真剣に追いつき、追い越そうとしている
シンガポールとはどんな国か?
少し古いのですが、以下の記事をどうぞ。
シンガポール「幸福度」世界最下位
アジアで最も豊かなはずが 建国50年、「能力主義」行き詰まる
赤道直下の都市国家シンガポールが
(2015年8月)9日、建国50周年を迎える。
1965年のマレーシアからの分離独立以降、
一党支配の長期政権で経済発展を実現し、アジアで最も豊かな国となった。
一方、格差拡大などで「能力至上主義」の成長モデルは行き詰まっている。
シンガポールの国民1人当たりの国内総生産(GDP)は、
2007年に日本、11年に米国をそれぞれ追い抜き、
13年には独立時に比べ100倍以上の約5万5千ドルに膨らんだ。
一方、米調査会社ギャラップが12年に発表した
日常生活の「幸福度」調査で、
シンガポールは、148カ国中、最下位だった。
激しい競争社会や、政治的な息苦しさが指摘される。
なるほど、わが日本にしたって
自民党の長期政権で経済発展を実現し、一度はアジアで最も豊かになった国。
「日本を、取り戻す。」と謳った総理が
シンガポールに追いつき、追い越せと思うのは分かります。
し・か・し。
ヾ(℃゜)々\(◎o◎)/幸福度世界最低の国が目標か、おい!\(◎o◎)/(゜ロ)ギョェ
かりにシンガポールを追い越したら、
今度は日本が幸福度世界最低の座につくんじゃないですかね?!
これが「日本を、取り戻す。」の内実か?
・・・じつはそうなのです。
経済的繁栄の達成のために、アイデンティティの確立を捨てたのが戦後日本。
けれどもアイデンティティが確立されていなければ
「何が自分にとって幸福なのか」
という基準も存在しようがない。
言い替えれば
経済的繁栄が達成できれば、アイデンティティの確立は捨てても良い
と構えることは
経済的繁栄が達成できれば、不幸でも良い
と構えることに等しいのです!!
そりゃあ、総理ならずとも
シンガポールに追いつき、追い越せという話になりますわな。
戦後日本の論理的帰結なんですから。
だ・か・ら、
『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!
ではでは♬(^_^)♬
6 comments
GUY FAWKES says:
4月 11, 2017
シンガポールの実情については三橋さんも「移民政策のトリレンマ」という題でブログに解説されておりましたね。
そしてシンガポールの自殺率は急速に上昇している様です、それも若年層の間で…
https://irorio.jp/eika_k/20130721/69919/
20代の自殺者80%増!シンガポールで最悪の記録更新 「国民気質が原因」という声も
更に付け加えますとなんとシンガポールでは自殺は犯罪として法律で禁止されております。
(シンガポールの法治を侮蔑するものではありません)
それにしても…
>シンガポールに追いつき、できれば追い越したい。真剣に、そう思っています。
まるで安倍総理は日本はシンガポールの様に経済的繁栄がそれ自体への良し悪しは別にして
過去に存在しなかったとでも仰っているとしか思えませんね、
こんな事実認識では高度経済成長時代の暗部や端的な例としての自殺・過労死の実態すら理解できないでしょう。
ましてやアイデンティティなんて…「真剣に」とある様に当人が間違っていないと確信されている以上はほとほと救えないとしか。
ソウルメイト says:
4月 11, 2017
いつものことながら、深い示唆に富むご論考だと思います。
佐藤さんと適菜さんと中野さんによる豪華版の対談を本にしていただきたいです。
福岡ワマツ says:
4月 13, 2017
「降服度世界最低」を目指したほうがよろしいですね。
西欧近代に対して。
玉田泰 says:
4月 23, 2017
残念ながら適菜さんを存じ上げません。
この機会に読みたいと思うのですが、
「政治思想入門」と「保守思想入門」
どちらがよろしいでしょうか?
上記以外の本でもいいのですが、お勧めを教えて頂ければ…。
SATOKENJI says:
4月 23, 2017
これはどちらでも大丈夫ですが、
強いて言えば「保守思想入門」でしょうか。
話題が最も新鮮なので。
玉田泰 says:
5月 9, 2017
「安倍でもわかる保守思想入門」読了しました。
福田恆存氏を知るきっかけを得られたこと、昔から好きだったニーチェが保守だと知ったこと、保守とは何かを掘り下げられたことなど、有益な読書でした。
ですが、ただ一か所、理解できない所がありました。「先入観を『保守』すべき」というバーグからの引用文です。これは先入観に捕らわれず事物を見ようとする僕の姿勢とは相容れない考え方でしょうか?
先生、適菜さんの言わんとする意味合いを、僕にも分かるように説明して頂けないでしょうか。
お手数だとは思いますが、宜しくお願い致します。