このところ、
巨大なゆで卵みたいなものを
ずっと身につけています。
巨大といっても、
全長30センチぐらいではありますが
この卵からチューブが伸びて
足首の傷口につながっている。
ゆで卵の正体は
バック(VAC)と呼ばれる機械。
VACとは、
VACUUM ASSISTED CLOSURE
(真空状態によって傷口を塞ぐ)
という治療法の頭文字です。
ついでにVACUUM の冒頭三文字にもなっているのが洒落たところ。
前にも書きましたが
今回の骨折、
相当に大変なものでした。
足首の骨があちこち折れただけでなく
開放性骨折といって、
折れた骨が皮膚を破って飛び出してしまったのです。
手術で骨は無事、つながったものの
先生方が気にされたのは
傷口周辺の皮膚がちゃんと再生するかどうか。
うまく再生しないと
古い皮膚が壊死するにしたがって
傷口にぱっくり穴が開くことに。
これが起きたら、皮膚移植手術が必要になるのだそうです。
というわけで、VACの出番。
傷口にガーゼを当てたあと、
まわりを特殊なラップで密封します。
そこにチューブをつなぎ、
ゆで卵本体を作動させるとどうなるか?
なんとラップ内部の圧力を下げ、真空状態を作り出すのです。
すると何が起きるか。
足の中でつくられた肉芽(「にくげ」と言って、新しい肉のことです)が
どんどん引っ張られて、表面に上がってくる。
電気掃除機がゴミやホコリを吸い上げるのと、原理的には同じこと。
これで傷口が塞がるという次第。
おかげさまで、うまく行っているようです。
デヴィッド・クローネンバーグ監督の映画「ビデオドローム」には
LONG LIVE THE NEW FLESH!
(直訳すれば「新しい肉よ永遠なれ」。ただし字幕では「新生命よ永遠なれ」と訳されていました)
というスローガンが出てきましたが
まさにその心境で、ゆで卵くんの活躍を眺めています。
ではでは♬(^_^)♬
4 comments
Guy Fawkes says:
10月 3, 2015
デヴィッド・クローネンバーグ…
私は父に観せられた(今では「魅せられた」?)『スキャナーズ』と『ザ・フライ』が忘れられません。
ジェームズ・グレアム・バラードの小説『クラッシュ』の実写化を監督したのも彼でしたね。
最近ですと、一番記憶に新しいのは『イースタン・プロミス』や『奇妙なメソッド』でしょうか。
SATOKENJI says:
10月 3, 2015
最後の作品は「危険なメソッド」(A DANGEROUS METHOD)だったと思います。
「クラッシュ」もそうですが、クローネンバーグの映画にはよく交通事故が出てくるんですよね。
初期作品「ラビッド」など、交通事故+皮膚移植という組み合わせ。おいおい。
Guy Fawkes says:
10月 3, 2015
ああ、そうでした!
あの作品は河合隼雄先生のご著書を読む過程で鑑賞したのですが、
今一度、観返さないと理解できない部分も…
…それにしても、佐藤先生が不慮の事故に遭われたにもかかわらず
『クラッシュ』を挙げたのは些か不謹慎でありました。
申し訳ありませんm(_ _)m
ヨトキチ says:
10月 3, 2015
どんな状況においても失われない佐藤さんの前向きな姿勢と好奇心には感服いたします。
ユーモアに富んだ佐藤さんのブログは、深刻な話題でも読んで楽しくなるから不思議です。
早く回復されることを祈ると共に、これからも佐藤さんのご活躍に期待しています。