『右の売国、左の亡国 2020年、日本は世界の中心で消滅する』
の刊行も、いよいよ間近。
だからというわけでもないものの、
わが国における左右の融合ぶりは
ますます際立ってきているようです。
たとえば2月10日の記事
「憲法は現実の上にあるらしい」で紹介した
稲田防相のWW答弁については、
ネットにこんなツイートが。
南スーダンPKO日報に「戦闘」と記してあるが、
稲田氏は「憲法9条があるので戦闘行為ではなく衝突だった」と呆れる答弁。
今朝の朝日はそれを擁護する記事が。
「苦しい答弁の背景には憲法9条下で自衛隊の海外活動を広げることのむつかしさがある」と。
いつから朝日は安倍政権弁護新聞になったのだ。
プロフィールによればツイート主は
大学を定年退職した生命倫理、ホロコースト研究者とのことです。
私は該当記事を直接見ていませんが
ツイートの内容が正確だとすれば
これは朝日が安倍政権弁護新聞になったのではなく
安倍内閣が朝日新聞弁護政権になったと解すべきでしょう。
なにせ防相のWW答弁は、
平和憲法が守られてさえいれば、現実認識はどんなにお花畑でもいい
と構える点において
護憲派の左翼・リベラルの発想と瓜二つなのです。
朝日が共鳴するのも当たり前ではありませんか。
考えてもみて下さい。
現憲法なんかどうだっていい!
と、本当に思っていたら、
あんなしょうもない答弁をするはずがないのです。
d(^_^)\(^O^)/稲田さん、あなた本当は護憲派でしょ\(^O^)/(^_^)b
さらに面白いのが
2月11日に東京新聞が配信した
「この国のかたち 3人の論者に聞く」という記事に出ていた
社会学者・上野千鶴子さんの発言。
上野さん、日本の人口は今後増えないと前提したうえで、
こう述べているのです。
日本はこの先どうするのか。
移民を入れて活力ある社会をつくる一方、
社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか、
難民を含めて外国人に門戸を閉ざし、
このままゆっくり衰退していくのか。
どちらかを選ぶ分岐点に立たされています。
移民政策について言うと、
私は客観的に無理、主観的にはやめた方がいいと思っています。
客観的には、日本は労働開国にかじを切ろうとしたさなかに
世界的な排外主義の波にぶつかってしまった。
大量の移民の受け入れなど不可能です。
主観的な観測としては、移民は日本にとってツケが大き過ぎる。
トランプ米大統領は「アメリカ・ファースト」と言いましたが、
日本は「ニッポン・オンリー」の国。
単一民族神話が信じられてきた。
日本人は多文化共生に耐えられないでしょう。
だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。
平和に衰退していく社会のモデルになればいい。
移民を入れないかぎり繁栄が維持できないことを
自明であるかのように見なしている点に関して言えば
上野さんの議論に説得力はありません。
生産年齢人口が減少しようが
その影響を上回る生産性向上が達成されるかぎり
経済は拡大しうるからです。
三橋貴明さんはブログでこの点を取り上げ、
上野さんについて
「『犯罪的』と断言したくなるほどに罪深い」と批判しました。
日本は「平和に衰退していく社会のモデル」になればいい
という上野さんの結論は
要するに緩やかな亡国の肯定ですから
三橋さんの批判はもっとも。
し・か・し。
移民受け入れに関する上野さんの主張はどうか。
論点を整理すれば、以下のようになるのですぞ。
1)移民を受け入れると、社会的不公正・抑圧・治安悪化がひどくなる。
2)世界的に移民受け入れを制限しようとする風潮が高まっているときに、
日本だけ移民をどんどん増やすなど現実的にも無理。
3)文化的な単一性の高い日本のような国は、移民の流入に耐えられない。
言い替えれば、移民受け入れは日本の伝統や社会的基盤を破壊する。
上野さんと言えば
左翼・リベラルのイメージが強いものの、
これはまさに、
真正なる保守主義の発想に基づいた
堂々たる正論ではありませんか。
裏を返せば、
移民政策をそうと正しく見抜かれないよう・・・
もとへ、誤解されないよう配慮しつつ推進している現政権は
グローバリズムの名のもと、
社会的不公正・抑圧・治安悪化をひどくしたうえ、
日本の伝統や社会的基盤を破壊しようとする
売国的政策に血道を上げていることになります。
まさに「右の売国」ですが、
厄介なのは
この点をみごとに誤解・・・
もとへ、正しく見抜いた上野さんの結論が
緩やかな亡国の肯定になってしまうこと。
さしずめ、売国と亡国のサンバ。
だから、『右の売国、左の亡国』だと言うのですよ!
ではでは♬(^_^)♬
7 comments
福岡ワマツ says:
2月 16, 2017
さらなるグローバル化や移民国家化を見通してか、最近では小学生への英語教育に注力する方向性のようですねぇ。さすが自民党政権のご時世ですねぇ。
ところで、「自民党」という党名の読みを少しアレンジするとぉ、
じぃみんとう。
ジ・いみん党?
The 移民党!
\(^o^*)/びば、ぐろ~ばる\(*^o^)/
これはいわゆる「名は体を表す」というヤツでしょうか?
あるいは「馬脚を露す」というヤツかもしれませんね。その意はもちろん「隠していた正体が露わになる」。
SATOKENJI says:
2月 16, 2017
このところ、絶好調のワマツさんです(^_^)v
せい says:
2月 17, 2017
施光恒先生によれば、ラテン語を土着語に翻訳して専門用語を一般人に広げた結果、社会は進歩していったとの事。
政治でいえば都合の悪い事を英語にして誤魔化したり、経営者は横文字を使えばさも頭の良い事を言ってるかのような風潮ですので、佐藤さんの政治用語ではありませんが、誰でもわかるような日本語に翻訳してみると、それだけで裸の王様ぶりが暴かれて嫌がられそう。本来はマスコミがやって批判したり、野党が追及するべき仕事のはずですが、、
フルート says:
2月 17, 2017
リンク先にあります上野千鶴子さんの文章の
中盤から最後までを引用します。
「トランプ米大統領は「アメリカ・ファースト」と言いましたが、日本は「ニッポン・オンリー」の国。単一民族神話が信じられてきた。日本人は多文化共生に耐えられないでしょう。
だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい。一億人維持とか、国内総生産(GDP)六百兆円とかの妄想は捨てて、現実に向き合う。ただ、上り坂より下り坂は難しい。どう犠牲者を出さずに軟着陸するか。日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。国民負担率を増やし、再分配機能を強化する。つまり社会民主主義的な方向です。ところが、日本には本当の社会民主政党がない。
日本の希望はNPOなどの「協」セクターにあると思っています。NPOはさまざまな分野で問題解決の事業モデルをつくってきました。私は「制度を動かすのは人」が持論ですが、人材が育ってきています。
「国のかたち」を問う憲法改正論議についても、私はあまり心配していない。国会前のデモを通じて立憲主義の理解が広がりました。日本の市民社会はそれだけの厚みを持ってきています。」(終)
↑途中、「モデル」という言葉が2回出てくるんですけど、2回目だけじゃなくて、1回目の「モデル」も、“「市民社会」の「モデル」”としての観点から出てきた「モデル」な感じを私は強く受けました。そもそも「(日本は)平和に衰退していく社会のモデルになればいい。」とか、そんな「モデル」をどこの国がモデルにするんだろう・・という疑問もあります。。もしも上野さんにとっての一番守るべきもの(人から守られてしかるべきとご自身が考えているもの)が、社会学者としてのご自身の名誉だった場合、実はこれを確証するために、日本の“「下り坂」”と、その“「下り坂」に自分が「軟着陸」するための「日本の市民社会はそれだけの厚みを持ってきています。」が”、あとから、「現実」にだけじゃなくて、あたかも過去の事実に遡及したかのようなかたちでも確証された可能性だってあるんじゃないかなって思いました。繁栄への方向転換の失敗だけじゃなくて、<繁栄しない方がいい理由の経緯>の創作も一緒に起こっていた可能性です。“「日本は「ニッポン・オンリー」の国。単一民族神話が信じられてきた。日本人は多文化共生に耐えられないでしょう。」”と上野さんは書いていますが、上野さんの中でこの“「日本」”・“「ニッポン」”・“「日本人」”が、今までよりも更に少し否定的なものとして捉えられた上で、“これに優るものとしての「日本の市民社会の厚み」”が、上野さんの中で確証された可能性もあるかもしれないと思いました。長くなってしまいすみません。。
ソウルメイト says:
2月 17, 2017
上野さんの論考の大半は、実にもっともで、まともなもので、保守主義とはまさしくそういうものだと言ってもいいくらいのものだと思います。ところが、結論となると、なんでそうなるの?とアクロバティックな倒錯を見せて、まあ、そこのところが、三橋さんには許し難かったんじゃないかと思います。これは、単純に上野さんが経済や産業について幼稚な知識と思考しか持ち合わせていないからそういう結論を帰結してしまったのであって、上野さんがご専門とされるのは経済学じゃありませんから、経済学者のくせに日本衰退論を主張するような輩とは異なって愚かではあっても罪はないでしょうね。むしろ、経済の専門家と自称し他称される者の中でまことしやかに日本衰退論を説くような者こそ厳しい指弾にあたいすると思います。知識がないゆえに愚かである者の改善の余地はいくらでもありますが、理解していてしかるべきことを理解しようとせず、あるいは、理解しているくせにおのれの学問的知識と相反する主張をなす者は、倫理観が欠如していて、こういう者に改善の余地はほとんどないと思います。
GUY FAWKES says:
2月 17, 2017
>だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい。一億人維持とか、国内総生産(GDP)六百兆円とかの妄想は捨てて、現実に向き合う。ただ、上り坂より下り坂は難しい。どう犠牲者を出さずに軟着陸するか。日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。国民負担率を増やし、再分配機能を強化する。つまり社会民主主義的な方向です。ところが、日本には本当の社会民主政党がない。
今回、私的に大変興味深かったのは今回話題になっている上野千鶴子女史のご論考の内、上記の部分が
かの「アメリカニズム」の提唱者として西部先生も一目置く、表現者グループ最強の論客であらせられる
佐伯啓思先生と共通点が見出せることでした。
佐伯先生は表現者や昨年月刊日本の別冊特集誌「貧困・格差 TPP」でも資本主義社会の行き詰まり・限界点に
常々言及されていました。
>日本の希望はNPOなどの「協」セクターにあると思っています。NPOはさまざまな分野で問題解決の事業モデルをつくってきました。私は「制度を動かすのは人」が持論ですが、人材が育ってきています。
しかしながら、やはりそこは相容れない存在。
この様に上野女史は非政府・非営利組織や市民社会の重厚さを創出する必要性を謳いながらも
「日本」という国家を主語として用いている、ここにナショナリズム的なニュアンスを否定しようとしても
そこに回帰せざるを得ないジレンマを感じさせます。
一方で佐伯先生のご主張は明確です、独立国家の方向性を示すべく対米従属を脱して真の意味での国家主権を擁護する。
こうして比較すると、やはり私としては佐伯先生を支持するより他ありません。
仮に市民社会の重要性が高まるとして、それは骨子や根っこにある国家がなくては成立し得ないのですから。
玉田泰 says:
2月 23, 2017
1)現政権は左がかっていると感じます。そして民進党は何か右に傾いているという気も?