消費税率の10%引き上げは、
当初の予定だった2015年10月から
2017年4月まで延期されそうな様子。
今回の引き上げはもともと
経済状況の好転を条件として行われるものであり
(増税をめぐる法律の第1条にその旨が書いてあります)
この条件が満たされない場合は施行を停止できるという
附則18条、
いわゆる「景気条項」まで盛り込まれています。
ならばGDP統計が二期連続でマイナスとなっている以上
引き上げ延期は当然なのですが、
「延期の代わりに景気条項を削除する」という話が出てきました。
つまり2017年4月には
何が何でも10%に引き上げるということに。
経済状況の好転を条件として引き上げるという
法律の趣旨からいって、これはおかしくないでしょうか?
リーマン・ショック並みの金融危機や、
東日本大震災のような巨大災害が起きたら考え直すとの話ですが
そんなことは当たり前だと思いますので脇に置きます。
ここで私が連想したのが
ラース・フォン・トリアー監督の映画「メランコリア」(2011年)。
巨大惑星が地球にぶつかって世界が滅びるという
一種のSF映画ですが、
いわゆるパニックものではありません。
なにせ、ぶつかってくる惑星の名がメランコリア。
憂鬱ですぞ、憂鬱。
誰がそんな名前をつけたんでしょうか?
しかもこの手の映画は、
社会のさまざまな人々の反応を描く群衆劇のような構成になるのが普通ながら、
トリアー監督、ドラマを一組の姉妹に絞り込む。
おまけにこの姉妹、どこか鬱っぽくて
メランコリアがぶつかってくるのを喜んでいる節があるのです!
変わった映画だなあ・・・と思っていたら、
トリアー監督本人に鬱の経験があるのだとか。
まあ「巨大な憂鬱の塊が地球にぶつかる」なんて、
そうでもなければ考えつきませんね。
ただし映像も音楽も非常に美しい作品です。
で、これのどこが消費増税をめぐる動向とつながるのか。
じつはメランコリア、
当初は「地球をかすめるだけで衝突はしない」と言われていたのです。
ところが引き返すような形で、やっぱりぶつかる。
ヒロインの姉妹は、これを妙に喜ぶんですね。
片や消費増税は
景気回復に間違いなくメランコリアをもたらす存在。
というか、すでにもたらしています。
そして政府は目下、
景気回復を最大の目標としているはず。
にもかかわらず、
2015年10月には10%にしないかわりに
2017年4月には絶対10%にする、というのは
「地球をかすめるだけで衝突はしないとされていた憂鬱の塊が
やっぱりぶつかってくるのを妙に喜ぶ」のと
どこか重なってきませんか?
ちなみに鬱を意味する英語「ディプレッション」には
「不景気」
「不況」
という語義もあります。
これも何かの因縁かと。
ではでは♬(^_^)♬
10 comments
たかゆき says:
11月 24, 2014
余命二年半♪
不治の病で余命を告げられた方は
それまでの景色と
見える景色が一変すると
聞きます。
真っ暗闇になるのか
燦然と輝きだすのか
人それぞれでしょうが、、、
「癌細胞」でも忽然と消えることが
ございますので
希望を捨てずに生を満喫しようと
かように思っております。
もっとも
パンドラの箱に最後まで残ったモノは
「希望」である とか。。。
さてさて
「10%」との衝突
妙にワクワクする僕は
不謹慎でございませうか??
フルート says:
11月 24, 2014
「まっすぐ、景気回復。」という自民の新しいポスターを見たのですが、あれって少し変ですよね。。景気って国民が主体となって経済活動をしたその結果の総称なのですから、そうなら「まっすぐ、景気回復。」の為には先ず当然国民とまっすぐ向き合っている必要がありますよね。でも安倍総理やその経済ブレーン達は所謂黒板経済学(竹中さんはのらりくらりとその指摘を躱されていますが)とだけ向き合っていて、国民とは向き合えていない様に思うんですよね。。
やくみちゅるん says:
11月 24, 2014
日本人って延期や先延ばしというのが嫌いです。しかし確実や確定というのは好きです。安倍総理は「再増税は2年半後に確実にやります」といったので、そこは日本人の波長とマッチすると思います。
カインズ says:
11月 24, 2014
現在に不満を持っている人間は、将来皆に降りかかる災厄を歓迎するということでしょうか。
そういえば、つねづね「絶望が足りない」と口にされている方が、「消費税が上がったから、物価が上がったから、自殺するようなそんな安っぽい人間じゃありません。特に日本人はそうですよ。」と力強く語っておられました。https://www.youtube.com/watch?v=KCP_TrG0cRA&list=UU_39VhpzPZyOVrXUeWv04Zg
きっと、力強い日本人はメランコリアなんて破壊する素晴らしい新兵器を開発するのでしょう。それが、パラノイアでなければ良いのですが。(いわゆる「保守」の方がよくされる「日本人は優秀だから、○○にだって耐えられる。」という何の根拠も無い言い方は、そろそろ謹んで貰いたいものです。優生思想では無いのですから。)
akkatomo says:
11月 24, 2014
まぁ、鉄火場で笑う人間はキ●ガイか、さもなければ真正の自殺志願者、
或いは覚悟が座りきった連中と相場が決まっております
にっかり笑って向き合いませう。死地であっても多少は気が楽になりますよ
DANIEL says:
11月 24, 2014
既に、いずれ潰れる安倍内閣に興味を失っている私ですが、
一番興味を持っているのは、財務省の超エリート集団です。
ここまで増税イケイケ論が日本に行き渡っている(た)のは、間違いなく奴らの仕業で、
長年にわたるその硬直した「財政均衡主義」や、思考・生態については、色々な分析も
あります。
しかし、どうも腑に落ちないのです。彼らは、憂国の情溢れ、且つ、日本で最も優秀な
連中でありながら(これは遺憾ながら、私の経験上も疑う余地はありません)、基礎的
な経済学も解っていない大混迷ぶり。
これは一種の「精神鑑定」にでもかけなければ、病理を摘出することもままならないと
思うのです。
佐藤先生、我が国のために、どうか彼らの「診断」をお願いできませんでしょうか?
このまま悪政に呻き苦しむのも、もう疲れました。
マゼラン星人二代目 says:
11月 24, 2014
>巨大惑星が地球にぶつかって世界が滅びるという
>一種のSF映画ですが、
>いわゆるパニックものではありません。
>社会のさまざまな人々の反応を描く群衆劇のような構成になるのが普通ながら、
>トリアー監督、ドラマを一組の姉妹に絞り込む。
マクロな破局、ミクロな人間関係。(セカイ系?)
映画『虹の女神』の劇中劇(“The end of the world”)を連想させますが、いかがなものでしょうか。
>メランコリアがぶつかってくるのを喜んでいる節があるのです!
その点は、『虹の女神』とは少々異なる。(従容と淡々と→やっぱり死ぬのはやだ)
マゼラン星人二代目 says:
11月 24, 2014
あと、日本経済が縮小均衡スパイラルに嵌ろうと嵌るまいと、別に世界の終りはやってきません。
延々、割りをく食うものが続出する。残された者は何も学ばない。ただ、それだけのことです。(松尾匡『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』pp.30-31)
つまりは、
「終わったのは、私だけだった」
というわけです。
ヨトキチ says:
11月 24, 2014
滅びを回避するための過酷なストレスに耐えられなくて、
早くこの危機に瀕したストレスから解放されたい、
一刻も早く滅びて楽になってしまいたいという、
これもやはり自滅願望の表れでしょうか。
頓珍漢 says:
11月 25, 2014
買ってしまいそうな衝動が抑えられなくなる話でした。中古で買お。
一体、先生の脳髄にはどれだけの作品の内容が記憶されてるんですか?
容量は無限なんですか、羨ましい。
ホントに巨大惑星がぶつかってくれれば、憂鬱も何もかも無くなりそうなんですけど・・・。