今年5月に行われた

安倍総理とプーチン大統領の日ロ首脳会談について、

当時、産経新聞は次のように報じました。

 

安倍晋三首相、領土問題進展へ対露信頼醸成に注力

 

もっとも、この見出しをあまり真に受けてはいけない。

なにせ記事はこうなっているのです。

 

日露首脳会談で、北方領土返還に向けた実質的な成果はなかった。

とはいえ首相は平和条約締結のため

プーチン氏との信頼関係を深めることに注力した。 

元の記事はこちら。

 

どうして、そんなことをするのかって?

説明は以下の通り。

 

プーチン氏との信頼強化は

対北、対中政策につながり、

将来的な領土問題の進展に不可欠と判断した。

 

なるほど、なるほど、

長い目で物を見ているわけですな。

さすがは安倍総理と言いたいのですが、

記事はこう続く。

 

(平和条約締結への)一環として

両首脳は北方領土での共同経済活動の推進を確認したが、

領土問題そのものが進展したとは言い難い。

 

要約するとこうなります。

北方領土問題が進展するよう

北方領土におけるロシアとの共同経済活動の推進を確認したが

北方領土問題が進展したとは言えない。

 

これってつまり、

日ロ首脳会談はロシア側のやらずぶったくりに終わった

ということではないのか?

で、何が「領土問題進展へ」なの?

 

♬認知す〜る〜なあ〜ら、チョイと不協和音頭、ヨイヨイ♬

Exif_JPEG_PICTURE

 

北朝鮮問題でザッツ・蚊帳の外としか形容できない扱いを受けていることといい

どこが「外交の安倍」なの? という感じですが、

文句をつけるばかりが能ではありません。

 

最近の経緯を見ると、

産経新聞の見出しどおり

北方領土問題は着実に進展しています。

・・・ただし、ロシアの都合に合わせて。

 

(※)記事の内容と直接の関係はありません。

Exif_JPEG_PICTURE

 

まずはこの7月、択捉島にロシア空軍の戦闘機が配備されました。

ヤースヌィ空港にSu-35S戦闘機三機、

プレヴェストニク飛行場にSu-25攻撃機二機が駐機しているのが

衛星写真でも確認されました。

関連記事はこちら。

 

軍事アナリストの小泉悠さんいわく。

 

(今回、確認された戦闘機の数は少ないが)

最近の北方領土におけるロシアの動きを総合するならば、

択捉島への航空戦力配備を本格化させる方針であることはほぼ疑いないだろう。

特にSu-35Sについては

将来的に常駐配備を見据えた「試験戦闘配備」とされていることから、

今後は飛行場を拡張するなどして、より多数の航空機が配備される可能性が高い。

 

来月(注:9月)にはロシア軍の極東大演習「ヴォストーク2018」が控えている。

これまでも北方領土は極東大演習の範囲に含まれてきたが、

今回は航空戦力や2016年に配備された新型地対艦ミサイルなどを動員し、

かつてない規模の軍事活動が北方領土で実施されることになろう。

 

ちなみにロシアはヨーロッパでの演習で、

ポーランドに配備されたミサイル防衛システムへの核攻撃訓練を実施したことがある

らしいのですが、

目下、わが国の「イージス・アショア」導入にも

あれこれ文句をつけているようなので、

日本のミサイル防衛システムへの核攻撃訓練

「ヴォストーク2018」で行われても不思議ではないのだそうです。

 

いやあ、北方領土問題は着実に進展しているなあ!!

 

「これでは危機に対峙すると言っても・・・」(※)個人の感想です。

Exif_JPEG_PICTURE

 

だが、強兵と富国はつねにワンセット。

というわけで、6月にはこんなことが起きていたんですな。

 

露、光回線敷設を通告 北方領土で10日にも着工 日本政府抗議

(産経ニュース、6月10日配信)

 

ロシア政府は

サハリンのユジノサハリンスク(日本名:豊原)から

択捉島の紗那(しゃな。ロシア名クリリスク)、

および国後島の古釜布(ふるかまっぷ。同ユジノクリリスク)を経て

色丹島の穴澗(あなま。同クラボザボツク)にいたる

光ファイバー回線の海底敷設を計画していたのですが、

これを前倒しで実施すると通告してきたのです。

 

予算の約8割は連邦政府予算からの補助との話で、

11月15日には工事が完了する模様。

 

ついでに工事を請け負うのは、

中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」。

 

記事いわく。

 

日本政府は北方領土での第三国の企業活動について

「ロシアの管轄権を認めることにつながる」として警戒してきた。

今回の工事でロシアの実効支配が一層強化されるとともに、

北方領土開発への外国企業参加の呼び水になる恐れがある。

もとの記事はこちら。

 

日本政府は抗議したようですが

ロシア政府がこれにどう応じたかは

択捉島への戦闘機配備が示すとおり。

ある意味、分かりやすい態度です。

 

押井守監督のアニメ映画『イノセンス』(2004年)では

2032年、

無国籍的な経済特区となった択捉島が

ヤクザ者や流れ者の溜まり場と化しているという描写がありました。

 

ウィキペディアの解説によると、

映画の原作にあたる漫画『攻殻機動隊』では

とりあえず日本に返還されたものの、

実効支配がイマイチ確立されないまま、

ズルズルと無国籍的になっていった

という設定になっているとか。

 

しかし、事実はフィクションより奇なり。

このままだと択捉島は

日本に返還もされないまま

中国企業が幅を利かす経済特区になるのではないか。

 

いやあ、北方領土問題は着実に進展しているなあ!!

 

「だから言ってるだろうが、平和をカネで買おうとする国は没落するって」(※)マキャベリの見解です。

Exif_JPEG_PICTURE

 

というわけで、予約あるのみ!

415lK+5zN-L._SX348_BO1,204,203,200_

ご予約はこちらをクリック!

 

そして・・・

「これが最悪と言えるうちは、まだ最悪ではない」(『リア王』、第四幕第一場)

どうぞ。

 

日本調査団55人の択捉島入り、ロシア政府拒否

(読売新聞、8月17日配信)

 

 北方領土での日露両国による

共同経済活動の実施に向けた日本側の現地調査について、

ロシア政府が択捉島入りを拒否していることがわかった。

 

調査団には政府関係者や民間事業者、専門家ら55人が参加。

日本側は当初、16~20日に択捉、国後、色丹3島で調査をする計画だった。

 

おいおいおい。

 

国後島の関係者はこれについて

択捉島でロシア軍の軍事演習が準備されているため

と語っているとか。

 

先に出た「ヴォストーク2018」を指すものと思われますが

首脳会談で推進が確認されたはずの

共同経済活動をめぐる現地調査さえ拒否するとなると

要するにロシアは

北方領土を返す気がないのはもちろん、

少なくとも択捉島については、日本の経済活動を容認する気もないのではないか?!

 

なにせ日本がイージス・アショアを導入したら

日本への核攻撃演習をやりかねないような国なのですぞ。

 

いやあ、北方領土問題は着実に進展しているなあ!!

で、プーチンとの信頼関係強化が何だって??

 

♬夢(いめ)は消(け)ぬ、怨恨(うら)みて散る♬(※)『イノセンス』の劇中歌です。

Exif_JPEG_PICTURE

 

ちなみにわが国の保守派が尻尾を振ってやまない

アメリカのドナルド・トランプ大統領も

相手がプーチンとなると

かなりの迎合モードになってしまうのは

先日の米ロ首脳会談が示したとおり。

 

朝鮮半島情勢に続いて

北方領土に関しても

わが国は打つ手なしというか、

ザッツ・蚊帳の外という

なんともクール、いやお寒いお話でした。

 

生ける世に

我(あ)が身悲しも

夢は消ぬ

怨恨みて散る

 

しかしアニメは未来を予言するんだなあ。

となると、2020年東京オリンピックはどうなるんだろう。

『アキラ』(1988年)では、その前に東京が崩壊するんだが・・・

 

読まれよ、読まれよ、時は短し!

61Ti7IO9EOL

 ご注文はこちらをクリック。

 

『対論 「炎上」日本のメカニズム』帯付き書影

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文はこちら!

 

51kPYzkfkfL._SX338_BO1,204,203,200_

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文ははこちら

 

フランス革命の省察

紙版のご注文はこちら!

電子版のご注文はこちら!

ではでは♬(^_^)♬