昨日の記事
「野党の緊縮財政志向」では
わが国の野党、
ないし左翼・リベラルのみなさんが、
じつは戦前からの「小さな政府」論者だったという話をお伝えしました。
ついでに戦後は、
反戦平和志向によって
この傾向が強まったことも。
で、その際、
坂野潤治さんと山口二郎さんの対談本
「歴史を繰り返すな」(岩波書店、2014年)を引用したわけですが。
じつは山口さん、
最近こんなツイートをしています。
昨日学部ゼミで、
NHK新映像の世紀第3集「時代は独裁者を求めた」を見た。
ヒトラーが独裁政権を作る一方で
公共投資で雇用を増やし、
工場を視察した時
労働者が総出でハイルヒトラーを叫ぶシーンを見た。
日本でこれから起こることを暗示しているのかもしれないと、
陰鬱な気分になった。
・・・こう言っては何ですが
山口さんのツイートの根底には
以下のような驚異の三段論法があるとしか思えません。
1)ヒトラーは独裁政権をつくった。
2)ヒトラーは公共投資で雇用を増やした。
3)ゆえに、独裁政権と公共投資は本質的に結びつきやすい。
でなければ、陰鬱な気分になる理由がない。
独裁政権なら公共投資に力を入れるとは限らないし
公共投資に力を入れるのは独裁政権に限らないと割り切っていれば
たまたま両者が結びついた様子を見たからといって
どうということはないはずです。
裏を返せば山口さん、こう信じているのでしょう。
1)今後、日本には独裁政権ができる。
2)今後、日本は積極財政で経済が良くなる。
3)上記二つは不可分である。
プライマリーバランスにこだわったあげく
緊縮財政路線を突き進んでいる現政権が
いきなり積極財政路線に転換するというのも
いささか信じがたいのですが
これは脇に置きます。
私が注目したいのは
独裁政権と公共投資は本質的に結びつきやすいという発想。
この発想はまさに
小さな政府論の極致ではないでしょうか?
これが正しければ
公共投資を積極的に行う大きな政府ほど
独裁政治に陥りやすい(!)ことになるのですぞ。
ならば民主主義を守るためにも
われわれは公共投資を削減したほうがいい
という結論が導き出されます。
いま、明かされる衝撃の真実!
公共投資は独裁への道だった!!
民主主義は貧弱なインフラの上にのみ成立する!!!
畏友・藤井聡さんも
いずれインフューラー(土木総統)などと呼ばれる日が来るかも知れませんが
野党、ないし左翼・リベラルに
支持が集まらないのも当然という気がしますね。
ではでは♬(^_^)♬
(↑)今日も国土強靭化の闘争を続ける藤井さんです。
5 comments
Guy_Fawkes says:
1月 16, 2016
そして、東海道・山陽新幹線が大事故を起こしたら掌をお返しになられるのでしょうか?
戦後日本の復興は新幹線から始まった…彼らの論理ではこれも新たなる独裁政権の誕生となる訳です!
「消費増税には反対です、でも公共事業は土建屋が儲かるだけなのでそれも反対です、
ただし事故が起こっても私達の所為ではありません、それでも自分達は『自己責任』とは言いません、
何故なら新自由主義者ではないから(ドヤ顔)」
正に非論理的であることの『大罪』!
SATOKENJI says:
1月 16, 2016
非論理的というか、すべての点でマイナスがないことにこだわっているわけです。
ただし、このような姿勢にプラスがあるかどうかは別の話となります。
Daniel says:
1月 16, 2016
前回の投稿では、佐藤先生の論旨をちゃんと理解しておらず、大変失礼致しました。
それにしても、
>3)上記二つは不可分である。
ってのは、凄いですね。
むしろブキャナン=ワーグナーの説では、民主主義と積極財政って相性が高いはずなんですがね。マネタリズムも、ちっとも民主的と思えません。
山口二郎先生と藤井聡先生がこの回に出てきたのもなかなかシュールと思いますが、
>公共投資を積極的に行う大きな政府ほど
>独裁政治に陥りやすい(!)
という命題は、両先生の「敵」である橋下徹氏を見ただけで反証になると思うんですが。
mash says:
1月 17, 2016
>野党、ないし左翼・リベラルに
支持が集まらないのも当然という気がしますね。
ですね,
山口氏の暴論というか明らかに嘘の論調で公共投資批判するとは呆れます緊縮財政擁護で小さな政府路線なら
左翼リベラルは格差にも肯定的だと言わざるおえません。それでいて格差反対とかネオコン批判するのは
筋が通らないと思います。
SATOKENJI says:
1月 17, 2016
たぶん山口さんには、自分の主張が緊縮財政の肯定につながるという自覚はなかったのでしょう。
「現政権=独裁」の見立てがあっただけではないかと思われます。
ちなみに「歴史を繰り返すな」では、
山口さんは左翼・リベラルの「小さな政府」志向を批判しているのですよ。