オリンピック大会は

都市が開催するというタテマエこそ残っているものの、

実際には国威発揚の場となって久しい。

強い選手を多数擁する国は強い、というわけです。

 

しかるに「国の強さ」と

もっとも直接的な形で結びついているのは軍事力。

よって強大な軍事力を誇示するのも

国威を発揚する有効な手段です。

 

だとしても、国威発揚のためだけに戦争をやるというのは

いささかコストがかかりすぎ。

けれども首都などで軍事パレードを行うくらいなら

(決して安くはないかも知れませんが)

まあ、政府債務がガンと増えることはないでしょう。

 

というわけで

世界には折に触れ、大々的な軍事パレードをやる国が存在します。

ロシアは毎年5月9日、

ナチス・ドイツへの勝利を記念するパレードを実施。

中国や北朝鮮もパレード好きですね。

 

とくに北朝鮮は

市民を動員したパレードやマスゲームでも有名。

なにせ1989年、

「金日成のパレード」というドキュメンタリー映画がポーランドでつくられ、

いくつかの映画祭で賞を取ったくらいです。

予告編こちら(「北朝鮮・素顔の人々」の予告とワンセットです)。

 

し・か・し!

人は対立する相手に似やすいというのは、

この世の基本的な真理の一つ。

金正恩を「チビのロケット野郎」と呼ぶあの人も

むろん、例外ではありません。

どうぞ。

 

トランプ大統領、軍事パレード開催へ 国防総省に要請

(AFP=時事、2月7日配信)

 

ホワイトハウスは6日、

ドナルド・トランプ大統領が

大規模な軍事パレードの開催を国防総省に要請したことを明らかにした。

米国の力を誇示し、最高司令官としての自身の役割を強調する狙いとみられるが、

米国でこうした軍事パレードは異例。

 

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は

「トランプ大統領は、日々命懸けでわが国の安全を維持してくれている

米国の偉大な軍人たちを大いに支えたいと考えている」と説明。

 

国防総省は「詳細を詰めているところだ」と確認した。

もとの記事はこちら。

 

トランプは大統領になる前から

ワシントンで軍事パレードをやりたいと思っていたようですが

CNNによれば

直接のきっかけとなったのは

昨年7月14日、訪問先のパリで

フランス革命を祝う軍事パレード(これも毎年恒例)を観覧して

いたく感心したこととか。

関連動画記事はこちら(ロシア・中国・北朝鮮のパレード映像もあります)。

 

(↓)あの革命は大惨事に終わったんだけどなあ。

フランス革命の省察

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「トランプのパレード」、

今年の11月11日が第一次大戦終結100年にあたるので

そのあたりで開催されるのではないかという話ですが

まだ計画は初期段階とのこと。

 

とはいえ、

これについては批判の声もあがっています。

どうぞ。

 

トランプ氏の軍事パレードに批判=「無駄遣い」「北朝鮮か」-

(時事、2月8日配信)

 

トランプ米大統領が今年、

首都ワシントンで大規模な軍事パレードを行うよう指示したことに、

政界やメディアから批判が相次いでいる。

北朝鮮やロシアといった全体主義国家を想起させる上、

国防予算の不足が叫ばれる中、多額の費用がかかる行進は無駄遣いではないかというのが理由だ。

 

民主党のダービン上院議員は、

7日のMSNBCテレビで「大統領を楽しませるための巨額の浪費」

と手厳しく批判。

米軍の戦力向上や米兵の安全に、予算を投じるべきだと訴えた。

スタブリディス元欧州連合軍最高司令官(退役海軍大将)は、

NBCニュースで「米軍は世界最強だが、

それを証明するために北朝鮮式のパレードを行う必要はない」と指摘した。

もとの記事はこちら。

 

ちなみにアメリカでは

軍事パレードが定期的に行われることはありません。

 

むろん同国で

軍事パレードが行われたことがない、というのではありませんよ。

ただしアメリカの政治サイト「ポリティコ」で

ジョシュア・ゼイツさんが指摘するところによれば

今回のパレード計画、

過去のアメリカにおける軍事パレードとはかなり違う。

記事原文こちら。

 

つまりですな、

アメリカでの軍事パレードは長らく

戦争に勝利し、

多くの将兵がもうすぐ除隊して軍を去るというときに

記念としてやるもの

だったのです。

 

軍の規模が縮小される前に

戦勝祝いもかねて盛り上がろう、ということですね。

 

1865年5月、

二日間にわたってワシントンDCで行われたパレード、

通称「グランド・レビュー」(※)は

南北戦争の勝利を記念したもの。

(※)宝塚歌劇みたいな名前ですが、この点は脇に置きます。

 

1919年、

全国約450箇所で行われたパレードは、

第一次大戦勝利記念。

ちなみに戦争中、

米軍には450万人もの将兵が

志願・徴兵により加わったものの

1920年になると

軍の規模は13万人にまで減るのですから

つまりは大々的な除隊記念行事だったのです。

 

1946年1月12日、

ニューヨークで行われた1万3千人規模のパレードは

もちろん第二次大戦勝利記念。

同年春になると

陸軍兵士の数は4分の1にまで減ったとのことなので

ふたたび軍務お疲れさま、除隊おめでとう大会ですね。

 

アメリカが最後に軍事パレードを行ったのは1991年。

湾岸戦争勝利を祝ってワシントンDCでやりました。

このときは軍の規模が大きく縮小されることはなかったので

除隊おめでとう大会という意味合いはありませんでしたが

戦勝記念である以上、

(危険な)軍務お疲れさま大会には違いない。

 

ところが2018年のパレードには

勝利を収めたばかりの戦争を記念する

という意味合いがない!

 

いちおう

「第一次大戦終結100年記念」という大義名分がついていますが

米朝衝突の危険性が高まっているのを思えば

きたるべき戦争に向けて、金正恩を威圧する

という意味合いのほうが強いのは明らかでしょう。

でなければ、トランプの自己陶酔のためにやるか、です。

 

なるほど、今までとは全然違うのですよ。

 

のみならず。

軍事パレードが国威発揚の手段たりうるのは事実ながら

強い犬は吠えない

というのも厳然たる事実。

 

じつはこれが、

第二次大戦における戦勝国の筆頭格であるにもかかわらず

アメリカがあまり軍事パレードをやらない理由でもあるのです。

ヨーロッパ戦線の英雄として知られるドワイト・アイゼンハワー大統領など、

軍事パレードをやってはどうかという提案に

こう答えたとされるのですぞ。

 

そんなものは絶対にやらん。

アメリカは文句なしに地上最強だ。

にもかかわらず、

ソ連(当時)が赤の広場でやるようなパレードの

真似事なんぞをやってみろ、

かえって弱そうに見えるだろうが!

 

m(_ _)m さすがです、大統領閣下 m(_ _)m

 

ルイジアナ州選出の現役上院議員、

ジョン・ニーリー・ケネディさんも

共和党に属しているものの

「トランプのパレード」計画をこう批判しました。

 

自信のある者は悠然と構える、

キャンキャン騒ぐのは不安の表れだ。

アメリカは人類史上最強の国なのだから、

いちいち見せびらかす必要などない。

 

・・・ただしアイゼンハワーが政権を担った1950年代と違い、

2010年代、アメリカがかなり衰退しているのも事実。

 

となると「トランプのパレード」、

もはや軍事力を露骨に見せびらかさないことには

アメリカは強いと思ってもらえない

という不安の産物なのか?

 

それとも

首都で軍隊の大行進でもやらないことには

誰もオレを強いリーダーと思わないだろう

というトランプ自身の不安の産物か?

 

どちらにしても

1月28日の記事

「トランプ! 金正恩! そして黄金のトイレ爆破作戦!!」

で書いたとおり

アメリカと北朝鮮が妙に似通ってきているのは

否定しがたいようです。

 

(↓)米米、ないし朝朝のはざまでわが国はどうすべきか? 以下の3冊をどうぞ。

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ではでは♬(^_^)♬