イヴァンカ・トランプにつづいて
11月5日に来日したドナルド・トランプ大統領は
安倍総理とのゴルフ、
天皇・皇后両陛下との会見、
日米首脳会談、
北朝鮮による拉致被害者家族との面会などを経て
11月7日に離日、韓国に向かいました。
ゴルフ中には
バンカーから抜け出そうとした安倍総理が
バランスを崩してすっ転ぶ
というハプニングもありましたが
これもおもてなし(※)のうちと、
好意的に解釈しましょう。
(※)「おもてなし」の真の意味は、本書237ページをどうぞ。
それはともかく。
今回の来日で話題になったのは
日本に来るときも
日本を離れるときも
トランプが在日米軍の横田基地を用いたこと。
北朝鮮情勢が緊迫しているのを思えば
羽田を使うよりそのほうが安全だ
ということにはなるのでしょうが、
それにしてもねえ。
ちなみに保守前衛の某氏は
レーガン来日のときもそうだった
と主張していたものの
調べてみると、これは事実に反します。
大統領在職中、
レーガンは1983年11月と
1986年5月に来日していますが
アメリカン・センターの記録によれば
どちらも羽田空港を使っていました。
だいたい、前例があろうがなかろうが
他国を訪問するときに
その国にある自国軍の基地を使うというのは
上から目線と受け取られても仕方ないところ。
「レーガンのときもそうだった」
という錯覚が生まれてしまうのも
見下されるのは今度が初めてじゃない! と信じるくらいしか
自分たちのプライドを守る方法がない
保守前衛の苦しい現実のなせるわざかも知れません。
トランプは韓国入りのときも
ソウル南方にある烏山(オサン)米軍基地を使ったので
日本だけが見下されているわけではない
とは言えますが、
ならば日本と韓国は、アメリカの視点からすれば同レベルなのですな。
だいたい。
1955年11月15日、
自民党の誕生にあたって発表された
「党の政綱」という基本文書の第六項には
こう書いてあるのですぞ。
世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、
集団安全保障体制の下、
国力と国情に相応した自衛軍備を整え、
駐留外国軍隊の撤退に備える。
ここでのポイントは
2行目の語句「集団安全保障体制(つまり日米安保)の下」が
3行目の「自衛軍備を整え」という箇所までしか
かかっていないこと。
なにせ4行目に出てくる「駐留外国軍隊」とは
どう考えたって在日米軍。
日米安保が存続していながら、在日米軍が撤退するという事態は
ちょっと考えられないでしょう。
言い替えればこの箇所は
とりあえずは日米安保の下でアメリカに従属するが
その間に十分な軍事力を整備し、
安保体制がなくなっても大丈夫なようにする
と謳っているのです。
それどころか。
1960年の安保改定にあたっては
(1970年以後)日本側が一方的に条約を終わらせることができるようにする
ことが大きなポイントになりました。
旧安保条約では
日米双方が条約終了について合意するまで、安保条約は続く
(=日本側が終わらせたいと言っても、アメリカが拒否したらそれっきり)
とされていたのです。
ならば「駐留外国軍隊の撤退に備える」とは
いつかアメリカが在日米軍を引き揚げても困らないようにする
ではなく
いずれ在日米軍には出ていってもらう
という意味だと受け取るのが筋でしょう。
62年前、自民党にはこれだけの主体性があったのです!!
しかるに現在はどうか。
自民党ホームページは、「党の政綱」について
立党時から今も変わらず自民党の基礎として受け継がれる宣言や綱領などの基本文書
に含めていますが、
だったらなぜ、今なお在日米軍などというものが存在するのか。
日米同盟の絆なるものが、ひたすら強調されるのか。
だ・か・ら、
戦後史はしょせん堂々めぐりというのですよ!
で、本当には堂々めぐりを繰り返しているだけなのに
正しい道を力強く前に進んでいるようなつもりでいるから
あとになればなるほどストレスがたまり
炎上するしかなくなるわけです。
まさにエドマンド・バークが言ったとおり
バカげた理念を、行き当たりばったりの実践でどうにか埋め合わせようとする過程
であります。
(↓)バーク先生、「事態は日を追って収拾がつかなくなっている」とも言っています(8ページ)。
し・か・も。
RT(ロシア・トゥディ)ニュースによれば
横田基地に着く前、大統領専用機の中で
トランプは北朝鮮の人々について、こう語ったとか。
“They’re warm, much warmer than the world really knows or understands.
They’re great people.
And I hope it all works out for everybody”
世界は北朝鮮の連中について、本当には分かっていない。
彼らは一般的なイメージより、ずっと温かい人々だよ。
偉大な国民だね。
みんなが満足する結果になることを願っている。
ン?
11月6日に行ったトランプ大統領との共同記者会見で
安倍総理は
対話のための対話では全く意味がない。
北朝鮮の政策を変えさせるため日米が主導し、
国際社会と緊密に連携して、
あらゆる手段を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていくことで完全に一致した
と述べたはず。
どうも温度差があります。
完全に一致したってホントなの?
ではでは♬(^_^)♬
5 comments
豆腐メンタル says:
11月 8, 2017
ツイッターは勿論のこと、トランプ氏の言葉は多くの政治家に比べて平易でシンプルです。何が言いたいのか分からない、なんてことが無い。
覇権国大統領の立場からの言葉より、職人的場当たり発言が多いですね。論理のコミュニケーションというより、直情の、または経験のコミュニケーションという感じです。これは悪口ではありません。
好みの問題なのでしょうか。普遍的でターゲットの定まらない言葉は、多数にとってカドが立たず耳障りが良い代わりに、他人事のようにも響く。一方、直情的でターゲットの定まった言葉は、深く刺さる代わりに、目の粗い笊のようなもの。
もしグローバリズム的言葉使いというものがあるとしたら、オバマ氏が当たると思います。方や、トランプ氏の言葉は圧倒的に身近です。何でしたら、学者やオピニオンリーダーよりも身近に感じられる。そして彼の行動も同じく直情的なのでしょう。行動が何を意味するのか分からない、なんてことが無い。
多くの分析がなされていますが敢えて言えば、事後チェック型の人物だと思います。彼自身は比較的、プロセスを軽視することになるでしょう。航空で例えるなら、目的地に着いたという事実が確認できることが何よりも重要で、途中ハイジャックに会おうが、墜落して他の飛行機に乗り換えたとしようが、先ずはOKという。。
問題は、前衛保守はこの様な人物に振り回されるだけで、何も得るものは無いだろうということ。
また、「最新版富国弱兵たる貧国弱兵」を推進する政府は、キッチュに陥ったおもてなしで時間をつぶし、形骸化した綱領に安寧祈願するぐらいか打つ手が無いということです。
何となく、卑弥呼の時代レベルの寄る辺なさ。アメリカが羨ましい。
GUY FAWKES says:
11月 8, 2017
>ゴルフ中にはバンカーから抜け出そうとした安倍総理がバランスを崩してすっ転ぶというハプニングもありましたがこれもおもてなし(※)のうちと、好意的に解釈しましょう。
プログレッシブ英和中辞典(第4版)によると「バンカー(bunker)」とは船の石炭等の燃料庫という意味でもあるらしいですよ。
縁起でもないこと申し上げますが、そこから抜け出そうとして「バランスを崩し」「すっ転ぶ」とか
ハプニングというよりもハルマゲドン(Harmagedōn)なんじゃないですかね…
剰え、「おもてなし」とか裏だけの砂塵(バンカー)の楼閣とか安倍総理体張りスギィ!
momo says:
11月 9, 2017
安倍首相「日米の揺るぎない絆を世界に示した!」
日本の空港を使ってもらえない程度の信頼感だったんですね。
SATOKENJI says:
11月 9, 2017
【きずな】(絆) 上下関係を意味する婉曲表現。主従関係の場合、頭に「揺るぎない」がつく。
(「2018政治経済用語辞典」より)
レギーム作 says:
11月 9, 2017
>ちなみに保守前衛の某氏は
レーガン来日のときもそうだった
今回のは、レーガンとも中曽根さんとも違います。
中曽根さんは上等な方で、別荘に招いて自ら茶道の腕を披露しました
(砂ドーン!とはチョイと趣ってやつが)。
佐藤先生には「平家以下」という名言がありますが、まさにその通りで。
・・・?
驕る平家以下→おごるへいけいか→おゴルフ池以下
(バンカーでコケる<池にダイブする)!!
まさか、ここで予言が成就するとは・・・!なーんて。