6月20日に文春新書より刊行される
藤井聡さんとの共著
『対論 「炎上」日本のメカニズム」が
アマゾンで予約受付開始となりました!
じつはまだ
最後の仕上げ作業を行っているのですが
相互の論考(各3章ずつ)+60ページ以上のロング対談
という構成の妙もあって、
素晴らしく充実した仕上がりになったと思います。
2014年に中野剛志さんと
『国家のツジツマ』を出したときもそうでしたが
同世代の最も優秀な知性と
こうやって一緒に本をつくれるのは
じつに幸せなことですね。
ちなみに文藝春秋と言えば1992年7月、
私の出世作となった評論集
『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』
を出してくれたところ。
早いもので、もう25年前になります。
若さゆえというべきか
最近の著作に比べると文章がまだ硬いものの、
わが国における本格的ポップカルチャー分析の古典としての地位は
今も揺らいでいないと思います。
いずれ、文庫か電子書籍で復刊させたいですね。
さて。
『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』が刊行されたころ
わが国で話題となっていたのが
アメリカのテレビドラマ『ツイン・ピークス』。
『イレイザーヘッド』や『ブルーベルベット』など
カルト系の作品で知られていたデヴィッド・リンチ監督が
プロデューサー・脚本家のマーク・フロストと組んで
テレビに進出した作品ですが、
殺人ミステリー+昼メロ+オカルト
というぶっ飛んだ趣向の物語を
リンチ特有の不条理なシュールレアリズムで演出した結果、
深遠なのか「何でもあり」なのか判然としない世界ができあがりました。
アメリカの田舎町ツイン・ピークスで、
ローラ・パーマーという美少女が殺害される。
別の州で起きた殺人事件と関連があるのではないかということで
FBI捜査官デイル・クーパーがやってくるものの、
なんとツイン・ピークスの人々は
そろいもそろって、怪しい秘密を抱えていた。
しかもクーパーはクーパーで
愛用のテープレコーダー(1990年前後なのでICではありません)に
捜査報告と称して
あらゆる些事をいちいち吹き込んだり、
さらにはオカルト的手法なるものを捜査に使いたがる人物。
だがついに、驚くべき秘密が明かされる。
ツイン・ピークスには「ブラック・ロッジ」という
異次元に通じる空間があったのだ!
そしてそこから出没する悪霊「キラー・ボブ」が
さまざまな人々に取り憑いては
殺人を繰り返していたのである!!
・・・いや、本当にそういう話なんですよ。
本国アメリカでは
1990年にスタートした第一シーズンこそ社会現象的なヒットになったものの
あまりに「何でもあり」だと思われたのか、
第二シーズンに入るなり視聴率が急落。
1991年に番組は打ち切りとなりました。
1992年に製作された映画版
『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の七日間』も大コケしています。
ところが日本では
第二シーズンになっても人気が持続、
『ローラ・パーマー最期の七日間』もヒットしました。
当時、『ツイン・ピークス』の全エピソードがビデオ化されていたのは
なんとわが国だけだったそうです。
ところが!
『対論 「炎上」日本のメカニズム』刊行と歩調を合わせるかのごとく
『ツイン・ピークス』も今年、
25年(映画版公開より)の歳月を経て復活!!
アメリカでは5月21日、
新シーズンの第一話と第二話が連続放送されました。
日本では7月からWOWOWがやるそうです。
・・・というわけで私も
『ツイン・ピークス』の世界を振り返っているのですが
四半世紀が過ぎてみると、
この作品、非常に明快に思えます。
リンチとフロストが描こうとしたのは
アメリカの魂は果たして善か悪か
という点をめぐるドラマなのですよ。
ツイン・ピークスは、古き良きアメリカの象徴のような町。
なにせ保安官の名前が、ハリー・S・トルーマンというくらいです。
つまり第二次大戦終結時の大統領と同じ。
ところがその町で、みんなが秘密を抱えている。
古き良きアメリカにも、ダークサイドがあったわけです。
そしてそのダークサイドの最たるものが
殺人を繰り返す悪霊キラー・ボブ。
第二シーズンの最終話、
クーパーはブラック・ロッジでボブに取り憑かれたあげく、
善のクーパーと悪のクーパーに分裂してしまいますが
これは上記の解釈に基づけば
アメリカが本格的に悪への堕落を始めた
ということになるでしょう。
そして新シーズンでは
善のクーパーはブラック・ロッジに閉じ込められたままで
悪のクーパーのほうが現実世界を跳梁している。
じつに分かりやすいではありませんか。
・・・してみると
1990年代はじめの日本で
『ツイン・ピークス』が本国以上のブームとなったのも、
自国が徹底したアメリカ化という「ボブ」に取り憑かれつつある
と、人々が無意識的に感じていたためかも知れません。
そして今やわが国も
善たる健全なナショナリズムは隠蔽されたままで
日本否定のグローバリズムという悪が現実世界を跳梁している。
まさに『ツイン・ピークス』新シーズン的状況ではありませんか。
だ・か・ら、
『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!
そして。
映画版『ツイン・ピークス』のサブタイトルは
日本では『ローラ・パーマー最期の七日間』となっていますが
オリジナルの英語題は
FIRE WALK WITH ME (炎よ、われとともに歩め)。
そうです。
『ツイン・ピークス』は炎上をめぐるドラマでもあるのです!!
ポップカルチャー分析を通じて戦後日本の魂を探求した
『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』から25年後、
炎上をテーマとした本の刊行を目前にして
『ツイン・ピークス』が復活したのは
まさに偶然を超えた符合と言えるでしょう。
新シーズンは18エピソードで完結するそうですが
デイヴィッド・リンチがどんな結末を提示するのか
今から楽しみです。
ではでは♬(^_^)♬
3 comments
GUY FAWKES says:
5月 26, 2017
藤井先生との新著、心待ちにしておりました!
5年前の中野剛志さんとの『日本破滅論』に並ぶ共著になると思っています。
『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』や『さらば愛しきゴジラよ』『幻滅の時代の夜明け』も
佐藤先生の評論活動の原点、是非とも電子版での復刻を望んでおります。
当時の先生と同じ二十代後半の私ですが、若くして独自の評論を展開した知性には如何あっても敵わないと日々反省するものです。
デヴィッド・リンチ監督というと「まとまりのないSF」という印象しか持たなかった『デューン/砂の惑星』が
なぜか最初に思い浮かびます、フランク・ハーバードによる原作の〈デューン〉シリーズは
あのハインラインも絶賛するほどの傑作でしたが…
他には父と共に観たヒューマンドラマの『ストレイト・ストーリー』が心に残っています、
当時は『エレファント・マン』と同じ監督だなんて想像もしませんでした…
主人公の妹を演じたシシー・スペイセクがブライアン・デ・パルマの『キャリー』だったなんてことも同じく(苦笑)
玉田泰 says:
6月 18, 2017
「ツイン・ピークス」は訳が分からず、途中で観るのをやめました。
何かおフザケで作っている気がして。
従ってキラー・ボブ?
なる存在もこの記事で初めて知りました。
やっぱりおフザケだったんですね!w
「偶然を超えた符合」
確かに時代に答える表現というものは
互いに響き合うものですね。
赤木颱輔 says:
3月 6, 2018
来る2018年03月12日、21時からBSプレミアムで「ゴースト ニューヨークの幻」が上映されます。その事実を拡め、公衆が同映画を視聴・録画出来る機会を提供すると共に、願わくば『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』による解説を、叶精二の様にでは無いですが手隙に出来る範囲で