昨日の記事

「表現者シンポジウム、大盛況でした!」でご紹介した評論

「少女と戦後の精神構造」に関連して。

 

掲載号はこちら(↓)。

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スタジオジブリ作品には

女性の原作を好んで取り上げながら

監督はつねに男性

という特徴が見られるわけですが、

原作のある作品13本について

これをもっと具体的に見ていきましょう。

 

当の13作品について

発表年、タイトル、原作者を列挙します。

 

1988年 火垂るの墓  野坂昭如

1989年 魔女の宅急便  角野栄子・林明子

1991年 おもひでぽろぽろ 岡本螢・刀根夕子

1993年 海がきこえる(テレビ作品) 氷室冴子

1995年 耳をすませば  柊あおい

1999年 ホーホケキョ となりの山田くん  いしいひさいち

2002年 猫の恩返し  柊あおい

2004年 ハウルの動く城  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

2006年 ゲド戦記  アーシュラ・K・ル=グィン

2010年 借りぐらしのアリエッティ  メアリー・ノートン

2011年 コクリコ坂から  佐山哲郎高橋千鶴

2013年 かぐや姫の物語  原作者不詳

2014年 思い出のマーニー  ジョーン・G・ロビンソン

 

・・・色分けの基準はお分かりですね。

青が男性、

ピンクが日本人女性、

赤が外国人女性です。

 

このリストから浮かび上がることは3つ。

 

1)1990年以前、ジブリ作品の原作に女性優位の傾向はなかった。

まあ、「火垂るの墓」以前は原作もの自体がないのですが、

「風の谷のナウシカ」にしても

「天空の城ラピュタ」にしても

内容が女性的とは言いがたい。

現に「魔女の宅急便」は

宮崎駿、初の「女性映画」です。

というスローガンで宣伝されたほどでした。

 

(※)スタジオジブリが設立されたのは「天空の城ラピュタ」製作の際ですから

それに先立つ「風の谷のナウシカ」は厳密にはジブリ作品ではありません。

ただし「ナウシカ」が実質的なジブリ作品として位置づけられているのも確かなので

この点は脇に置くことにします。

 

2)2004年以前、ジブリ作品に外国人の原作に基づくものはなかった。

1991年〜2002年のジブリ原作は

「ホーホケキョ となりの山田くん」以外すべて女性の手によっていますが

この女性たちは全員、日本人です。

 

3)2004年以後、ジブリ作品の原作は外国人女性によるものが主流となる。

日本人が原作を手がけた作品は

「コクリコ坂から」と

「かぐや姫の物語」の2本。

 

後者の原作たる「竹取物語」は作者不詳ですが

まあ、日本人が書いたことは間違いないでしょう。

 

ただし、残り4本はすべて外国人原作。

ちなみにル=グィン以外の3人はそろってイギリス人なのが面白いところです。

 

となると、

原作者の性別および国籍から判断するかぎり

スタジオジブリ作品には1990年代に「女性化」が生じ、

それが2000年代半ばから「外国人女性化」(=非日本化)に発展した

と言えるでしょう。

 

にもかかわらず、監督はつねに日本人男性。

ただし9月に公開される

「レッドタートル ある島の物語」の監督は

オランダ出身のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットですから

ここでも非日本化が起きています。

 

ついでに「レッドタートル」は

ジブリが製作に加わっているものの

プリマ・リネア・プロダクションズという海外スタジオの制作ですので

今までの自社制作作品とは大きく異なります。

 

ジブリ自体の制作部門は2014年に解体されていますし、

その後、復活したという話も聞きません。

 

1988年から2016年までの

日本社会の変化に照らして考えるとき、

これは非常に意味深長ではないでしょうか?

 

ではでは♬(^_^)♬