オペラを観に行ったミラノで、

牛肉のロベスピエール風という料理に出くわし、

ついつい注文した私。

 

ちょうどそのころ、非常に気に入っていた映画に、

ピーター・グリーナウェイ監督の

「コックと泥棒、その妻と愛人」

というのがありまして。

 

「食」を通じて文明の虚飾と欺瞞を描くという

過激にしてエレガントな傑作なのですが、

重要な場面の一つで、「フランス革命」という言葉が出てくるんですね。

 

どう出てくるかは、ネタバレになるので言いません。

「コックと泥棒、その妻と愛人」を観て下さい。

ただし相当に刺激の強い映画ですから、あらかじめ腹をくくっておくことをお勧めします。

 

とまあ、そんな経緯もあって、

フランス革命のギロチン野郎、

ロベスピエールを食べるという発想に

文字通り、食指が動いたわけです。

 

さて、料理が運ばれてきました。

皿を見た私は、

 

これは!!! 

 

と感嘆させられます。

 

真っ白な皿のうえに、

ソテーされた牛肉が並べられているんですが、

その形がドーナツ状。

 

つまり真ん中に白い穴を残す形で、円形に盛られているのです。

 

そして牛肉のうえには、

牛の血がポツポツ浮いている。

 

早い話、

白い大きな円の中に、

赤いドーナツ状の肉の輪があり、

中心がまた白い

わけです。

 

ピンと来ました。

 

これはギロチンで頭を切り落としたあとの

首の断面に見立ててあるに違いない、と!

 

中央の白い円は脊椎です。

 

ロベスピエール風とはよく言ったもの。

 

古代ローマの人々は、

キリスト教徒をライオンに食わせ、

その様子を見世物にしたと言われますが、

さすがはその末裔(まつえい)です。

 

ついでにカソリックではミサの際、

「聖餅」と呼ばれるウェハースを口にしますが、

あれはキリストの肉ということになっているんですよ。

 

当然、飲み物は赤ワインしかありませんね。

 

 「食物への愛ほど純粋な愛はない」とは

バーナード・ショーの芝居「人と超人」の台詞ですが、

この料理には文明論的な感動をおぼえました。

 

とはいえそれ以後、

私はどこのイタリア料理店でも、

「牛肉のロベスピエール風」にお目にかかったことがありません。

 

ミラノでしか食べられない一品なのでしょうか?

いつかまた、口にしてみたいものです。

 

ではでは♬(^_^)♬