ミもフタもなければ

救いもない世界が展開された

「ストリート・ハスル」の第一部と第二部ですが。

 

第三部へのセグエ(移行箇所)になると、雰囲気が変わってきます。

どこか暖かみが感じられるようになる。

そして、リードとは違う男の声が聞こえてきます。

 

この男は誰か?

なんと、ブルース・スプリングスティーンなのです!

隣のスタジオか何かでレコーディングしていたので、

ゲストに来てもらったとのこと。

 

リードの醒めた声とは対照的に、

スプリングスティーンは穏やかに語ります。

 

信じておくれ、それは嘘なんだ

彼女はまわりの人間に、そう言ってみせるだけなのさ

彼女の中には、自分でも認められないが

本当の歌がひそんでいる

 

本当の歌とは何なのか、

ふたたび明確な説明はありません。

しかし私は、

人生に深く傷ついた後でも、なお愛を信じたい気持ちだと思っています。

 

素敵なキスを経験したとか

素敵な美貌に恵まれたからといって

物事がうまく行くわけじゃない

俺たちみたいな根無し草は

苦しみながら生きるしかないのさ

 

最後の一行は、英語だと「Born to pay」。

スプリングスティーンの大ヒット曲、「明日なき暴走」(Born to Run)とかけてあるのです。

 

そしてリードが戻ってきて

第三部「さよならも言わずに」が始まる。

 

恋人が去ってしまった

俺の手から指輪を抜きとって

言うべきことなんか

何も残っていない

だけど恋しい

あの男が恋しいんだ

さよならも言わずに行かないでくれ

 

あれっ? と思った方。

このころリードはゲイだったのです。

もっとも1980年代には、シルヴィア・モラレスという女性と結婚。

さらには異才の女流ロック・ミュージシャン、ローリー・アンダーソンと再婚していますが。

 

とまれ、

彼のもとから去っていったのは

レイチェルと呼ばれるニューハーフ。

 

1992年にリードが発表した名盤「マジック・アンド・ロス」は、

彼(女)の死を悼んだものという説もあります。

 

相手の性別なんて二次的なこと。

ここでのリードの声には真情がこもっている。

 

求め合えば、求め合うほど孤独になり、

孤独であればあるほど求め合う。

そんな人間のあり方が浮かび上がる名曲です。

 

・・・断っておけば、

「ストリート・ハスル」が大好きだからといって、

行きずりの殺人とか、

ドラッグがらみの死とか、

ゲイの別れを描いた詞を、

Sayaさんに歌ってもらいたいと思っているわけじゃありませんよ。

 

たぶん歌ってくれないだろうし。

 

簡素な言葉で

劇的な状況をリアルに描き出し

人間の真実を感じさせる、

そんな詞を書きたいということです。

 

これなら彼女も異存ないでしょうからね。

 

ちなみに「ストリート・ハスル」、

スタジオ録音のものなら、リードのベスト盤「NYCマン」に収録されているデジタル・リマスター版が、

ライブ録音のものなら「アニマル・セレナーデ」に収録されているバージョンがお勧めです。

 

ではでは♬(^_^)♬