小松春雄先生による

トマス・ペイン「コモン・センス」の訳が

いかにご立派なものかは

お分かりいただけたでしょう。

 

ついでに小松先生、

なんと原著の一部をカットしているのですよ。

 

本の最後の部分を構成する

「クエーカーのパンフレットにたいする反論」。

これが丸ごと抜け落ちているのです。

 

しかもカットしたという断り書きすら、

どこにもありません。

 

とはいえ、カットした理由は簡単に推測できます。

 

ここで批判されているクエーカーのパンフレットは

憲法九条的な非武装主義の立場より

独立戦争反対を説いたもの。

 

ペインはこれを徹底的に批判しているのですが

ずばり言ってしまえば

この点が小松先生には都合が悪いのですよ。

 

岩波文庫版「コモン・センス」の解説を読めば分かりますが

小松先生はアメリカ独立を

日本の戦後改革と同一視しています。

 

アメリカは独立戦争をくぐり抜けて、民主主義的な良い国になった。

だから太平洋戦争をくぐり抜けた日本も、民主主義的な良い国になるだろう。

とまあ、そういう次第。

 

なんか、「メルケルが褒めたから安倍は優秀」という

どこかの社長さんの主張と

論理構造(ないし、その欠如)がよく似ていますが

それは脇に置きましょう。

 

ポイントは、この主張を展開するうえで

アメリカの独立戦争は、憲法九条的な発想を否定する形で行われた

と認めるのは、じつに都合が悪いということ。

 

カットしたくなるのも分かる話です。

とはいえこの姿勢、学者として誠実なものと言えるでしょうか?

 

いい加減な思考と

いい加減な言葉づかい、

および不誠実な態度は

すべてつながっているのです。

 

最後に一言。

「太平洋戦争」ではなく「大東亜戦争」だろうというコメントは無用に願います。

岩波文庫から本を出し、

憲法九条批判につながる議論の存在を隠蔽する人が、

大東亜戦争という表現を使うと思いますか?

だからこの場合は、太平洋戦争で正しいのですよ。

 

ではでは♬(^_^)♬