2月16日発売予定の

「表現者」65号に載せる原稿を書いているところです。

以前、このブログでも触れたスタジオジブリのアニメ

「思い出のマーニー」(米林宏昌監督、2014年)

について論じるのですが・・・

 

途中で面白いことに気づきました。

 

この映画の主題歌は英語曲で

タイトルは「FINE ON THE OUTSIDE」。

日本語に訳せば「うわべだけは元気そうに」です。

 

プリシラ・アーンという

韓国系アメリカ人のシンガーソングライターの曲。

ところが。

 

上映パンフレットでは

FINE ON THE OUTSIDE が違ったふうに訳されているんですね。

「外側にいたっていいの」になっている。

 

解釈の違い?

そうではありません。

パンフレットの訳は純然たる誤訳です。

 

このタイトルは、歌詞に出てくる

I’LL BE FINE ON THE OUTSIDE

(うわべだけは元気そうに振る舞うから)

というフレーズを縮めたもの。

 

「外側にいたっていいの」だったら、

元のフレーズは少なくとも

I’LL BE FINE BEING ON THE OUTSIDE

でなければなりません。

 

だいたい歌詞には

I SOUND FINE ON THE OUTSIDE

(うわべだけは元気そうに話せるの)

というフレーズも出てくる。

 

I’LL BE FINE ON THE OUTSIDE が

外側にいたっていいのだったら

I SOUND FINE ON THE OUTSIDE

外側で話してもいいの

になるところですが

ここの訳は「外側にいても大丈夫な気がする」になっています。

 

大丈夫な気がする??

元の歌詞には、そんな意味のことはまったく書かれておりませんよ。

訳のツジツマが合わなくなって、適当にごまかしたんじゃないでしょうな。

 

しかも致命的なのは

パンフレットの同じページ

プリシラ・アーン本人のコメントが掲載されていること。

そこには、映画のヒロインに深く共感したとして、

理由がこう書いてあるのです。

 

私は表向き活発な子だったけど、

内面ではいつも孤独だったからです。

(中略)

表向きは自信満々に見えるように取りつくろっていたんですけれど、

ほかの子たちはみんな何の問題もなくて、

幸せで”ふつう”に見えて、

どうして私はそうなれないんだろうって、いつも思っていました。

(表記を一部変更)

 

そんな少女時代を思い出して書いたのが

「FINE ON THE OUTSIDE」だというのですが

本人がここまで明快に語っているときに

どうやって「外側にいたっていいの」なんて訳が思いつけるんでしょうか?!

 

・・・この先は

きたる「表現者」65号をご覧いただくとして、

日本社会の英語化なるものが

表面的にいくら推進されたところで

英語にたいする本質的な理解はいっこうに深まらないであろうことを

実感させられる一件でありました。

 

まさに FINE ON THE OUTSIDE ですね。

ではでは♬(^_^)♬