昨日の続きです。
民主党大会で自分を厳しく批判したキズル・カーンさんにたいし
ドナルド・トランプは真っ向から噛みつきました。
それも
私と直接会ったこともないカーン氏に
私をあれこれ批判する権利はない
とくる。
まるで
アメリカの民意を体現しているオレ様に、
富裕層とも思えないイスラム教徒のオッサンが
文句をつけるとは何事だ!!
と言わんばかりではありませんか。
しかるにこれが、各方面で大ヒンシュクを買ってしまう。
8月1日、戦死者の遺族23組は合同で、トランプに謝罪を要求する手紙を発表。
手紙の作成に関わったセレステ・ザパーラさん
(この人も2004年に息子をイラクで亡くしています)は、
トランプを「インチキ香具師(やし)の見本」と評したあと、
こう語りました。
(イラク戦争を行った)ブッシュ大統領も腹立たしい存在だった。
それでもブッシュは、私たちを侮辱したりはしなかった。
私たちをこきおろしたり、見下したりもしなかった。
トランプよりもブッシュ一族のほうが、ずっと尊敬できる。
トランプを大統領候補に指名した共和党の内部からも、非難の声が続出します。
たとえば2008年の大統領候補だった
ジョン・マケイン上院議員。
わが党はトランプを候補に指名した。
だからといって、アメリカ人の中で最も立派な人々
(注:つまり戦死者とその遺族)を好き放題に貶めていいという
許可まで与えたわけではない。
あるいはリンゼイ・グラハム上院議員。
戦死者の遺族を批判するなど、
前代未聞のとんでもないことである。
アメリカの政治には、侵してはならない神聖なルールがあったはずだ。
祖国のためにわが子を犠牲にした親に文句をつけてはいけない、
というのもその一つ。
たとえその親が、こちらに文句をつけたとしてもだ。
味方陣営でこの騒ぎです。
民主党の反応は推して知るべし。
8月2日には、オバマ大統領まで
「トランプに大統領の職責は果たせない。論外なほど不適格だ」
と宣言しました。
記者団の前で、5分以上にわたって批判を続けたというのですから強烈。
各種世論調査を見ても、ヒラリー・クリントン優位の傾向が明らかに強まる。
ジョージア、テキサス、アイオワ、カンザスなど
トランプがリードしている州もあるにはありますが
クリントンがリードしている州のほうがずっと多い。
選挙人名簿の登録を済ませた共和党員のうち、
なんと2割近くが、
トランプに大統領選から降りてほしいと思っているという調査も。
有権者全体では、44%がそう望んでいるそうです。
共和党系の政治コンサルタント、
マット・マコーウィアックにいたっては
8月11日にこうツイートしました。
トランプは共和党そのものを脅かすにいたっている。
彼がもたらしたダメージを消し去るには十年かかるかも知れない。
われわれは党の存亡に関わる事態に直面しているのだ。
まさに大脱線と言わねばなりません。
だとしても、戦死者の遺族への批判が
なぜこんな大トラブルに発展したのか?
いやそもそも、
なぜ「戦死者の遺族を批判してはいけない」が、
侵してはならない神聖なルールと見なされるのか。
明日はこの点を考えましょう。
ではでは♬(^_^)♬
3 comments
玉田泰 says:
8月 18, 2016
成る程、前回の記事のコメント欄に「共に絶賛自爆中」と書きましたが、トランプの踏んだ地雷の方が遥かに大きかったんですね。
でも、「党の存亡に関わる事態」とは何事でしょうか。
追記、このコメントはこの記事がアップされた直ぐ後にメモしたモノ、そのままです。次の先生の記事が出たので答えがわかってしまいましたが(笑)
SATOKENJI says:
8月 18, 2016
アメリカでは今年、大統領選のほかに上院選も行われます。
しかるにトランプが共和党のイメージを悪くしたせいで、こちらでも大敗するのではないかと危惧されているのです。
たらこ says:
8月 21, 2016
感覚的な話でまことに恐縮ですが・・・
各種ポールの推移を見ると今の急落は定期的な下落で、また選挙までには回復する波に見えます。
カーン氏に対する半数のアメリカ人の本音は「でもシャリーア法の方が憲法より上だって思ってるんでしょ?」という事だと感じます。
今のアメリカ人、特に若い層は軍遺族問題とトランプがケンタッキーをフォークとナイフで食べる写真に対して、そこまで違いを感じているようにも見えません。