参院選の投票日も
いよいよ明日となりました。
情勢は(例によって)自民優勢とのことで、
改憲勢力が議席の2/3を取るかも知れない
と取りざたされています。
改憲を主張する勢力が
衆議院と参議院の両方で2/3を取り
改憲発議が可能になるという
戦後、かつてなかった事態がついに成立するか?
ただし改憲勢力と言っても、
どんな改憲を良しとするかについては
必ずしも一枚岩ではありません。
だいたいわが国では
とにかく憲法改正はダメ!
という硬直した反対論が根強く存続したせいもあって
憲法改正論議が
具体的な内容を云々する以前のレベルで止まりがちだった、
という現実があります。
どんな改正をするのか、
は脇に追いやったまま
改正するのか、しないのか
ばかりにこだわる傾向が強かったわけですね。
その意味で護憲派
つまり左翼・リベラルは
改憲派、ないし保守に塩を送ってきたと言っても過言ではない。
彼らが憲法改正絶対反対!! を叫べば叫ぶほど
保守の間では
左翼・リベラルがあれだけ反対するからには、
憲法改正は(内容を問わず)良いものに違いない
という固定観念が出来上がっていった感があるのです。
ついでにわが国の左翼・リベラルは
ナショナリズム大嫌いという特徴がありますから
先の固定観念は
左翼・リベラルがあれだけ反対するからには、
憲法改正は(内容を問わず)ナショナリズムを強化するものに違いない
とも言い換えられる。
だからこそ、
日本を取り戻す!
と主張する人々は、
長らく「改憲こそ祖国再生の切り札」と見なしてきました。
しかし、それは本当か。
近年の日本の保守では
対米従属型のグローバリズムをきわめることが望ましい
というスタンスが主流になっています。
となると、
かりに今後、憲法改正が実現するとしても
それが日本を取り戻すような性格のもの、
つまりナショナリズムを強化するものになるかどうかは分かりません。
「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」(©安倍総理)
という発想にふさわしく、
日本という枠をこれまで以上に否定する
グローバリズム改憲
とでも呼ぶべきものが行われたらどうしますか?
『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』でも書きましたが
大統領制の導入
英語の公用語化
道州制の導入
皇室廃止
といった内容の改憲だって、少なくとも論理的にはありうるんですからね。
実際、自民党の高村正彦副総裁は
7月5日の段階でこう述べたとか。
改憲勢力が(発議に必要な参院の3分の2以上の議席を)取ったとしても、
10年先、何年か先は別だが、
憲法9条が改正される可能性はゼロだ
この発言、別の報道では
将来は知らないが、(ただちに9条を改正する)可能性はゼロだ
となっていますが
改憲=ナショナリズムの復権
という図式は、今や必ずしも成り立たないことの例と言えるでしょう。
・・・その意味では左翼・リベラルも
本当に護憲に徹したいのであれば、
憲法を守れ!
とか
九条を守れ!
といった、マンネリ化して久しいスローガンを繰り返すのではなく、
自衛隊の廃止
他国との安全保障条約締結の禁止
外国人参政権の容認
外国からの移住の完全自由化
を盛り込んだ憲法改正を叫ばれてはいかがでしょう。
憲法改正は危険だ!!!
という認識が国民に浸透すること確実と思うのですが。
ではでは♬(^_^)♬
5 comments
Guy Fawkes says:
7月 9, 2016
今回は日付変更と同時の投稿ではないのですね、なんでしょうか…嵐の前の静けさを感じます…(苦笑)
>外国からの移住の完全自由化
最後のこの一節で「右か左かの時代は終わった」と改めて認識します。
保守・リベラル、右派・左派の非自発的野合…ああ、恐ろしきパラドックス。
明日の投開票に戦々恐々です。
Guy Fawkes says:
7月 10, 2016
すいません、追加と言ってはなんですが憲法改正について調べを進める過程で少し興味深い資料を発見しました。
先生は「自衛隊の廃止、他国との安全保障条約締結の禁止、外国人参政権の容認外国からの移住の完全自由化
を盛り込んだ憲法改正を叫ばれてはいかがでしょう。
憲法改正は危険だ!!! という認識が国民に浸透すること確実と思うのですが。」
と本記事で仰っていますが、どうやら民進党は今から12年前当時民主党時代にこの様な事実上の改憲草案を纏めていた様です。
https://www.dpj.or.jp/news/files/BOX_SG0058.pdf
「創憲に向けて、憲法提言中間報告 「法の支配」を確立し、国民の手に憲法を取り戻すために」
2004年6月22日 民主党憲法調査会
注目して頂きたいのが序盤の第1小委員会総論の「未来を展望し、前に向かって進む」とある第2項です。
「21世紀の新しいタイプの憲法は、この主権の縮減、主権の抑制と共有化という、
「主権の相対化」の歴史の流れをさらに確実なものとし、これに向けて邁進する国家の基本法として構想されるべきである。
国家のあり方が求められているのであって、それは例えば、ヨーロッパ連合の壮大な実験のように、
「国家主権の移譲」あるいは「主権の共有」という新しい姿を提起している。」
これは一言に当該記事の題名に相応しい「グローバリズム改憲」そのものではないでしょうか?
改憲草案にあっては自民党はアメリカ、民主党は東アジア近隣を主体として差異が見られるだけで
この両者は根本的に本質を同じくしているとしか考えられませんが如何でしょうか。
Daniel says:
7月 21, 2016
遂に改憲が政治日程に上る日が来ましたね。
私は、何度か申したように、安倍総理のことは好きでもないし、そもそも信頼していないのですが、ここまで政治情勢を持ってきた安倍総理の「虚仮の一念」は凄いものだと思います。彼にとって、本当の「岩盤規制」は、日本国憲法だったのでしょう。
私は元々、現行憲法の成立経緯から、また内容(特に前文と九条)の余りの非現実性から、改憲派でした。
しかし、その昔に読売新聞が、改憲試案を発表した時、その中身が余りに酷く(要は佐藤先生の言われるところの「グローバリズム改憲」に嫌気が差して)、読んでて正直、読むに堪えなかったことから、戦後の我が国には、まだ憲法をちゃんと作る能力が身に付いていないと落胆し、消極的にではありますが、護憲派に宗旨替えした経緯があります。
またその後、岡崎久彦氏の指摘した、島国が大陸に永く権益を保つことの無理筋性を学んでから、九条が日本国益に資する「ウラの利益」に気付いて、便宜的というか、戦略的な護憲派への決心を余計に固めたという経緯もあります。
更に、一応、現行憲法が明治憲法の改正という形を取ったことで、外面的とはいいながら、憲法の構成上、明治憲法との接続が明白なこと、象徴天皇制が意外に古来からの皇室の在り方とマッチしていたことから、少なくとも、日本の国力がアメリカの国力を上回るまでは、これで特に問題ないのではないかという得心にまで至っています。
だから、安倍総理の改憲姿勢も、「戦争法」とやらも、踏込み過ぎ。勇み足にならないかと思って、とても心配です。
何というか結局、日本国の憲法改正問題とはいいながらも、結局アメリカとの付合いをどうするかなんですよね。
私は、”Independence Day from America”を夢想する一庶民にすぎないのですが、、正直、アメリカに行って、ちょっとだけだけど暮してみて、やっぱアメリカは凄い国だな、ホントに欠点だらけだけど、世界に覇を唱えるだけはある、と率直に思います。
日本国民は、改憲とか、その他TPPとか移民国家化とか構造改革とかという、特効薬!起死回生の策!とかに惑わされず、待ちの姿勢(Wait and See)で全然構わないと思うんです。そしてその間に、短所を矯め、長所を伸ばし、異次元の財政出動をし、消費税は2%にし、リニアと新幹線・高速道路網を全国中に張り巡らせ、英語化もやめ、国語教育・古典教育(映画『ちはやふる』は良かったです!)を充実させ、例えばですが、全国の高校で連歌会(もしあればですが沖縄では琉歌会?)でも開催されるような土壌を育成し、もし英語教育をするなら、そういう文化を英語で説明できるような教育を成し、色んなことが幸わう国にしていったらいいと思います。
本来の憲法って、そういう状態に持ってくための「国のかたち」を示したものであるべきではないでしょうか。
私には何だか、改憲(或いはその他の構造改革)で熱くなってる人(安倍総理含む)は、福島原発事故に際してパニックを起し、ヒステリックになって不適切な指示を怒鳴り散らした菅元総理と変らないように思います。
玉田泰 says:
7月 10, 2016
現憲法を前提とする…先ずはそこから変えるべきだと思うのですが。日本には古来からの独自の民主主義があり、そこから考え始めないといつまでも堂々巡りのような気がします。
右も左もなく、もっと民主主義に対して本質的な問い直しをしなければならないと思います。その方が国民をも巻き込んだ活発な議論が行われるのではないでしょうか。
いつまでも憲法学者の些末な解釈論に付き合わされるのはうんざりです。
福岡ワマツ says:
7月 10, 2016
今回の記事には、護憲派による「憲法改正の危険性」広報戦略の例として「自衛隊の廃止」改憲を挙げておられますが、確かに効果的であると思います。
それに付加して、「自衛隊を廃止し、(防衛部門を)民間軍事会社(外資も可)に民間委託する」というのはいかがでしょうか。
「『民間の活力』を活用した革新的な構造改革」あるいは「防衛部門の効率化・経費削減」として。
「アメリカという手本があるじゃないか、アメリカに学ぼう」という感じで。
これで、さらに効果的ではないかと思います。
ただ、これはあくまで「憲法改正の危険性」を訴えるための改憲例なのですが、本気で「いいね!」と言う現代日本人がいないか、多少不安です。もしそんな人がいたら「ふざけるのは顔だけにしろ!」と言いたくなると思います。